“チャイニーズモンスター”加藤嘉一の中国語を320円でマスターする超裏テク

[2011年07月04日]


もしぼくが何かひとつ持って牢屋に入れられるとしたら、迷わずこの辞書を持って入ります!

語学習得に必要なのは“気合い”と“節約”!

語学に興味のある方は多いと思います。確かに語学というのは、自分の世界を広げるパスポートであり、活躍のチャンスを増やしてくれる武器になります。

かくいうぼくも、まだまだ勉強中ではあるものの、中国語を学んだことで現在の立場があると思っています。中国のことを中国人に向け中国語で書いたり、あるいは中国各地において中国語で講演をし、外国人にもかかわらず中国の若者の間ではオピニオンリーダー的な役割も果たしています。つまりぼくにとって中国語は、銃よりも重い武器になっているわけです。

8年前に北京大学に留学したとき、ぼくはまったく中国語の読み書きができませんでした。英語は得意だったものの、やはり人々の日常や文化、その国の本質を知るために現地の言葉は絶対に必要です。そこでぼくは気合いを入れて勉強し、半年でネイティブスピーカーといわれるまでに至りました。

どのように勉強をしたのかといえば、主に3つのことが挙げられます。しかもかかった経費はたったの320円。ぼくは留学生ということもあって、まったくお金がありませんでしたからね。

まずひとつ目は、そのへんの人を捕まえてとにかく話す―当時中国はSARS騒動があって学校では授業が行なわれていませんでした。時間はたっぷりあるけど、お金はない。ぼくは大学の裏にあるアイス売りのオバちゃんの所に行って、毎日8時間話すことにしました。初めは筆談程度だったのが、徐々に語彙が増え会話になっていきます。

言葉が通じるうれしさや、聞きとれた喜びは語学をやるうえの醍醐味というか、やみつきになる面白さがあります。まあ途中、中国語が出てこないというよりも話すネタがなくて苦しみましたが(笑)。

そしてふたつ目は、新聞をもらって読む―大学には守衛さんがたくさんいますが、その人たちと仲良くなって、彼らが読み終わった『人民日報』をもらって読むんです。もちろん無料。『人民日報』は共産党の機関紙なので性格上、ほかの変な文法を使う新聞とは違って正当な中国語で書かれていますし、党の方針もよく理解できるため勉強になりました。

最後の3つ目ですが、ラジオを聴く―これを買うために320円かかりました。なぜテレビではなくラジオかというと、中国は方言が多いのでテレビには字幕が入っていることが多いんです。日本人は漢字を理解できるので、それを読んでしまうとリスニング力が上がらない。そこでラジオです。

もちろんコンセント付き。電池だとお金がかかりますからね(笑)。

こうしてぼくは中国語を学んだわけですが、傍らにはいつも日本から持っていった辞書がありました。今はもうボロボロになってしまいましたが暇な時間は辞書を読んでいましたし、まさにぼくの8年間が詰まった血と涙の結晶す。ぼくのことを常に理解してくれて、ぼくのそばにいつもいてくれた唯一の親友、それが辞書なんです。

語学を学ぶのにお金はなければないほどベター! 想像力とハングリー精神。自分なりにアイデアを駆使し、かつ継続的にやることが大切で、これを実践するにはお金は使わないほうがいい。英会話教室に行ったり、教材を買うなど大金を払うことで外国語をマスターできると安心したり勘違いしている人はいませんか?

お金をかけなければかけないほど語学力は伸びます。これには絶対的な確信があるので、もし違う意見があるなら逆に教えて!!

 

今週のひと言
語学習得はお金のない人ほど有利だと断言します!

■加藤嘉一(かとう・よしかず)
1984年4月28日生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。中国国内では年間300本以上の取材を受け、著書も多数持つコラムニスト。
詳しくは公式HP【http://katoyoshikazu.com/】まで

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