V字回復を達成して伸張し続ける「義理がたさ」と「人情味」
V字回復しつつあるのは「治安」と「国民の才能」でしたが、いったん深く落ち込んだものの、完全にV次回復し、それまでの最高値を21世紀になってから更新した2つの項目があります。それが「国民の義理がたさ」と「国民の人情味」。2つの概念がともにV字回復を達成し、現在も一緒に伸び続けているというのが、興味深いと思います。
「義理がたさ」は1998年に31.0%とそれまでの最高値を記録、その後2002年に22.2%まで下降。そこから上昇し続け、2010年にそれまでの最高値を超え、2012年39.0%と上昇し続けています。「人情」も同様の動き方で、1996年に40.1%とそれまでの最高値を記録した後、2000年の28.7%と下降し続け、その後回復。こちらも2010年にそれまでの最高値を超え、2012年は48.9%と最低値から実に20ポイント以上も回復しています。
どうも私たち日本人は21世紀に入るか入らないかの頃から「日本人の義理・人情のよさ」を、再評価し始めているようです。『ALWAYS 三丁目の夕日』が大ヒットしたのも2005年でした。経済が本格的に成熟する時代、人口減少の時代を迎え、日本人が本来持っていた性質(DNA的なもの)で、何とかこの厳しい時代を乗り切ろうとしているのが、今の日本人なのかもしれませんね。
●これからの日本の誇りの期待の星は「質の高いサービス」
それでは最後に、この失われた20年という厳しい時代の中でも、日本の誇りとして急上昇した項目をご紹介しましょう。それは「質の高いサービス」です。1992年には21.2%あったものの、2000年には10.8%までダウン。その後伸張を続け、2012年には35.2%まで上昇しています。
前述の「国民の義理がたさ」「国民の人情味」同様のV字回復タイプなのですが、ここまで大きく回復しその後も大きく伸張した項目はありません。サービスの質の高さとは、どれだけデジタルなコミュニケーションやソーシャルメディアといったインフラが浸透しても、求められるものであり、世界のフラット化がいかに進もうが、他国に対して日本が唯一無比の価値を発揮しうる領域であると、日本の生活者が感じ始めているのでしょう。
「おもてなし」や「ホスピタリティ」という言葉がよく聞かれますが、それは日本人だから提供できる価値という意味で、同じことをさしているのだと思います。今後、日本が21世紀を生き抜くためには、V字回復を達成した「義理人情」を内包し、回復しつつある「治安のよさ」と「勤勉さ・才能」も生かした、独自の質の高いサービスを実現することが、求められると考えられます。
そして最後にひとつ付け加えるなら、16項目の中で「日本の誇り」として、最も数値が高い3つはトップが「治安のよさ」であり、2番目が「すぐれた文化・芸術」、3番目が「美しい自然」なのです。この3つこそ日本が世界に誇りうるすばらしい“資産”であり、この3つ抜きには、これからの日本の誇りづくりは考えられないというのも、また事実であると思います。日本ならではの新しい高品質なサービスを提供していく際には、こうした要素も当然活用していくべきと考えます。