車での県境越えに使える唯一の道路。すれ違いが難しく、冬季は氷雪の心配も=浜松市天竜区水窪町で(赤川肇撮影)
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三遠南信自動車道の一部として浜松市天竜区水窪町と長野県飯田市(旧南信濃村)を結ぶ青崩(あおくずれ)峠道路計画で、国土交通省中部地方整備局は、早ければ二〇一三年度にも県境のトンネル掘削に着手する。事業化から三十年を経て“本丸”の工事にこぎ着けようとしている形だが、開通のめどは依然立っていない。
飯田国道事務所によると、長野県側では一一年度に工事用進入路の開設に着手。静岡県側では来年一月から「本線工事」に入り、国道152号からトンネル出入り口までの七百四十メートル間で既存道路を拡幅したり、橋の基礎部分を造ったりする。
さらにトンネル本体の着工に向けて地質などを確かめるため、調査坑の工事費用を一三年度予算案に盛り込みたい考えだ。
青崩峠道路は、県境の青崩峠(一、〇八二メートル)の152号不通区間解消を目的に一九八三(昭和五十八)年に事業化、八七年に三遠南信道の一部に位置づけられた。公共事業費の縮減を求められる中、国交省は計画延長一三・一キロのうち、トンネル部分四・九キロを含む五・九キロを「当面整備区間」として、四百八十億円を投じて片側一車線の自動車専用道路を優先的に整備する方針を打ち出した。
現状でも152号と平行する市道に迂回(うかい)すれば県境を越えられるが、この市道は狭く曲がりくねっている上、冬季は積雪や凍結もある。浜松市道路課の担当者は「トンネルは計画の肝の部分。完成すれば長野県側との行き来が大幅に改善される」と早期完成の必要性を強調している。
青崩峠道路をめぐっては、国が九四年に水窪町の青崩峠東側に草木トンネル(千三百十一メートル)を開通させた後、ルートを見直して草木トンネルの活用を撤回。結局、自動車専用道路として百八十億円を投じた草木トンネルを一般道路に格下げした経緯がある。
峠付近は中央構造線が南北に走り、断層活動による破砕帯などで東側は地盤が弱く、西側は相対的に強いとされる。国交省はこうした問題を草木トンネル開通後に明らかにし、地元住民らを交えた「懇談会」などでルートを協議。〇五年に西側を通る現行計画をまとめた。
国交省によると、青崩峠道路ができれば浜松市と旧南信濃村の間の所要時間は約四十分短縮されるといい、災害対策や地域活性化の面でも「効果が高く合理的な計画」と強調。ただ、水窪町で二十年前より四割以上減るなど県境部の中山間地人口がしぼむ中、一日二千七百台という計画交通量の適否など、具現化に向けて動き始めた計画の妥当性が問われそうだ。
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