“年少選手”と言えば森田あゆみの名前が挙がっていたここ数年の全日本だが、今回は15歳の奈良くるみ、16歳の土居美咲と、年下の選手が二人もいる。15歳8カ月の初タイトルから2年。全日本は今回で4年連続の出場となる。今シーズンはウィンブルドン本戦の大舞台も経験した。コートではある種の風格さえ漂わせる森田が、初戦の2回戦で一段と成長した姿を見せた。
対戦相手の伊勢ミツ子はバックハンドがスライス中心で、フォアもしばしばスライスをまぜる。森田が強打を打ち込んでも、滞空時間の長いボールで逃げ、決定打を打たせない。速いテンポで攻撃を繰り出す森田とは、正反対のプレースタイルであり、以前の森田が苦手としていたタイプと言っていい。
しかし、この日の森田は終始、辛抱強かった。相手にしぶとく拾われても、自分のミスが続いても、気持ちを切らさず自分のプレーに徹した。序盤は強打のミスが多かったが、途中で修正し、少しペースを落としてショットの確率を上げた。終盤の山場、第2セット4−1からの第6ゲーム、デュースが9度続いた場面でも、最後はウイナー3連発でゲームをもぎ取った。本人が言うように「もうちょっとネットを取れたらよかった」が、及第点の出来と言っていい。
「今日は気持ち的に、いい状態を保って試合ができた。初戦にしてはいい試合ができたと思う」と森田は満足そうな表情を見せた。すべては精神面の成長のたまものだ。去年の後半、森田は苦しんでいた。「いろいろなプレッシャーで、イライラしたり、気持ちがぐちゃぐちゃになって負けることがあった」。その反省から、今は「マイナスの気持ちを持たないようにしている」という。成長のあとを見せ、17歳になった森田が2年ぶりの優勝に向けて第一歩を踏み出した。
広報委員・フリーライター 秋山 英宏