「歴史学者達は、1930年から40年代にかけて朝鮮半島と中国出身者が大部分の約20万人の女性がアジア全域の日本軍の売春宿において奉仕させられたと指摘している。多くの女性達は、自分たちが日本の部隊に誘拐されて性的奴隷になることを強制されたと証言している」(ワシントン・ポスト)
「証人や犠牲者達や元日本兵の一部は、女性達の多くが誘拐ないし強制的に売春宿に送り込まれ、多数の兵士達に毎日強姦されたと証言している」(ニューヨーク・タイムズ)
などである。
まとめると、世界のメディアの論調を見る限り、「第二次世界大戦中、大部分が朝鮮半島と中国出身の少なくとも20万人の女性が日本軍の慰安所で強制的に奉仕をさせられた。これは信頼できる元従軍慰安婦らの多数の証言に基づくものであり、『歴史学者』の間でも、既に結論が出たことだ」が、従軍慰安婦問題の世界の常識になってしまっていると考えざるを得ない。
これは、日本の保守派が国内で声高に主張する「従軍慰安婦の徴用に官警による誘拐といった強制性はなかった」「従軍慰安婦のほとんどは日本人の売春婦で植民地出身者は少数でなかった」「従軍慰安婦が性奴隷であると主張しているのは中国・韓国の学者だけで、強制性がなかったのは世界の学者の常識」と、事実が真逆だということである。
私自身は、保守派の主張を支持している。問題は、主張そのものではなく、保守派が日本国内で「声高な主張」を繰り広げる一方で、外国の雑誌や新聞に論文を掲載することや、外国の政治家、学者やマスコミを説得するなど、海外で日本の理解者を増やす努力を怠ってきたことだ。換言すれば、保守派は海外の批判から、むしろ目を背けて逃げ回ってきたといえる。
この問題は、「チーム安倍」にも当てはまる。米議会に従軍慰安婦問題に対する謝罪決議が出された際、「チーム安倍」は提案者のマイケル・ホンダ議員に対して接触を試みなかった。ホンダ議員本人はともかくとして、せめて決議案を出している民主党に接触すればいいのだが、「チーム安倍」幹部が会見したのは元々仲のいい共和党議員だった。帰国後、幹部は「米高官と話をしたので、もう大丈夫だ」と成果をアピールした。大丈夫ではなかったのは言うまでもない。結局、ここでも「チーム安倍」は国内向けに「格好をつける」ことに終始して、問題解決に真剣に取り組まなかったのだ。