10月12日、アメリカの政策分析機関のランド社は、カリフォルニアの大麻合法化に関する新しい研究報告書を発表しました。今回のテーマは、カリフォルニアの大麻合法化は、メキシコの麻薬カルテルの活動に影響を及ぼすか?というもの。 メキシコの麻薬カルテルの資金源となっているのは、アメリカで消費される不法薬物の巨大な需要です。メキシコからアメリカへの薬物密輸をめぐって、カルテル間の抗争が激しさを増すにつれて、アメリカ国境に近いメキシコの諸都市では、いま暴力事件が頻発しています。 大麻を合法化すれば、メキシコから不法に密輸される大麻がなくなり、カルテルは資金源を失うことになり、暴力沙汰も減少するのではないか・・・、カリフォルニアの大麻合法かをめぐる論争では、このような主張もされています。でも、そんなに簡単に言い切れる問題でしょうか。本文73ページ、付録資料62ページに及ぶこの報告書は、仮にカリフォルニア州が大麻を合法化した場合、それが、メキシコの麻薬カルテルの薬物取引にどのような影響を及ぼすかについて、徹底的に検証するものです。 ■報告書「メキシコの薬物取引と暴力の削減:カリフォルニアの大麻合法化は役立つか?」 Reducing Drug Trafficking Revenues and Violence in Mexico:Would Legalizing Marijuana in California Help? http://www.rand.org/pubs/occasional_papers/2010/RAND_OP325.pdf ●メキシコの麻薬カルテルへの影響は限定的 研究から導かれた結論は、次のようなものです。 ・ メキシコの麻薬カルテルがアメリカ合衆国向けの大麻卸売りから得る収益は、20億ドル弱程度とおもわれる。 ・ 麻薬カルテルが薬物密輸で得る収益の60%は大麻によるものだという説があるが、その根拠はない。 ・ アメリカ全土で消費される大麻の約7分の1が、カリフォルニア州で消費される。 ・ カリフォルニア州が大麻を合法化した場合、その影響は、カリフォルニア州向けの大麻密輸の収益が減少するだけで、カルテルの薬物密輸全体に占める比重は少なく、2―4%にとどまる。 ・ もし、カリフォルニア産の大麻が、メキシコ産より低価格で他の州へ密輸されるとしたら、カルテルの収益に多大な影響を及ぼすことになるが、こうした事態が起きるかどうかは、他の要因による。 ・ 仮にカリフォルニア産の大麻が他州に密輸されるとすれば、カルテルは合衆国のほとんどの地域で大麻密輸による収益の65から85%を失うことになる。 ・ これは、カルテルが扱う薬物密輸全体の約20%にあたる。 この報告書には、カリフォルニア州での大麻使用の実態や、メキシコからの大麻密輸に関して、とても興味深い指摘をしている箇所があるので、次回で、内容をもう少し読んでみたいと思います。 [参照] ■ファクト・シート 「メキシコの薬物取引と暴力に対してカリフォルニアの大麻合法化がどんな影響を及ぼすか?How Might Marijuana Legalization in California Affect Drug Trafficking Revenues and Violence in Mexico?」 http://www.rand.org/pubs/research_briefs/2010/RAND_RB9559.pdf ■報道発表2010年10月12日 http://www.rand.org/news/press/2010/10/12/ ●大麻合法化はメキシコの麻薬カルテルの暴力問題を解消するという説 さて、上記の報告書が取り上げている、「大麻合法化がメキシコの麻薬取引関連の暴力を減らす」という説について、少し補足しておきましょう。これは、合法化をめぐる議論のなかで頻繁に登場するもので、 ・ メキシコの麻薬カルテルが薬物密輸によって得る収益の60%は大麻によるものであり、大麻の密輸が削減されれば、麻薬カルテルは資金源を失う ・ アメリカで大麻栽培が合法化されれば、メキシコから大麻を密輸する必要はなくなる ・ カリフォルニア州での合法化は、カルテルによるメキシコからの大麻密輸をなくし、カルテルの非合法活動を縮小させ、ひいてはカルテルによる暴力問題も解消する といった主張です。 たとえば、CNNが伝える次の記事を参照してください。 [参照] ■CNN>メキシコの前閣僚が大麻合法化を支持(2010年2月3日) http://edition.cnn.com/2010/WORLD/americas/02/02/us.mexico.marijuana/index.html?iref=allsearch |
<< 前記事(2010/10/13) | ブログのトップへ | 後記事(2010/10/16) >> |
タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
---|
内 容 | ニックネーム/日時 |
---|---|
メキシコの麻薬カルテルとカリフォルニア州の大麻合法化の関係は確かに根拠がなく、個人的にも賛同し得るが、日本における大麻と暴力団の資金源との関係は明確だろう。そしてこれらは売人が同一という理由で、踏み石論は成立する。が、正しい知識と見識のある大麻使用者にはこれは適用されないだろう。無知の使用者は大麻と覚せい剤の耐性と依存性の違いを同一に考え、結果、大麻と同じ供給源から手に入れるというのは不自然ではない。当然これは、大麻そのものの作用によるものではない。 |
BANP 2010/10/18 09:00 |
<< 前記事(2010/10/13) | ブログのトップへ | 後記事(2010/10/16) >> |