「手抜き除染」横行の情報を得て、取材班は現地に向かった。
「袋に詰めなければならない草木をここに捨てました」。20代男性が取材班を案内したのは、県道から20メートルほど斜面を下りた雑木林だった。枯れ葉や枝が幅1メートル、長さ50メートルにわたり散乱し、高い所は1.5メートルほどの山になっている。
福島第一原発から南に15キロの福島県楢葉町。昨年8月に警戒区域が解除された後も大半が避難指示解除準備区域に指定され、町民は住んではいけない。
楢葉町の除染を受注したのは、前田建設工業や大日本土木などの共同企業体(JV)。作業ルールでは道路の両側20メートルの幅で草木や土を取り除き、袋に詰めて仮置き場に保管しなければならない。空間線量を毎時0.23マイクロシーベルト以下に下げていく長期的目標の第一歩だ。
男性は昨年10月、都内のハローワークで3次下請け会社の求人を見つけ、働き始めた。道路の両側20メートルにはったピンクのテープの内側で、のこぎりで木を切り、草刈り機で刈り取った草や落ち葉を熊手でかき集めて袋に詰め、運び出す作業のはずだった。
ところが、大日本土木の現場監督は当初から、作業班約30人に「袋に詰め切れない分は捨てていい」「テープの外の崖に投げていい」と指示し、作業員らは従った。監督が不在の日には別の監督役から同じ指示があったという。