東日本大震災:福島第1原発事故 作業員、手足被ばく測定せず 事故後2〜3カ月、東電「胸部で線量管理」
毎日新聞 2013年01月04日 東京朝刊
別の放射線管理員の会社員男性も「高線量のがれきを手で処理しても、指先や目の水晶体の被ばく測定などはしていなかった。手と胸の数十センチの差で何倍も線量が違うこともある」と指摘。「(細胞破壊力が強い)ベータ線を圧倒的に出す核種もあるのに、ガンマ線用の胸部のAPDだけでは評価できないケースもある」と明かす。
事故から2〜3カ月後にはリングバッジが行き渡ったが、元東電社員の男性は「そんなに(手足の被ばくが多い)危ない作業をしていたのか」と同僚と心配しあったという。
東電広報部は「当初はベータ線よりガンマ線が高く、胸部のAPDで全身の線量管理はできていた。汚染水処理装置の稼働などでガンマ線が落ち着きベータ線が目立つようになったのでリングバッジを着けるようにした」と説明。「作業後には全身を汚染検査しており、11年3月に高汚染水で3人が被ばくしたこともこの検査で判明した。追加調査の必要はないと考えている」と回答した。
だが、安斎育郎・立命館大名誉教授(放射線防護学)は「当初からベータ線も相当量浴びたはず。汚染検査は体表面の付着物は測定できるが、作業時の末端部、不均等被ばくは測れない」と指摘。「いつどこでどんな作業をしたか調べ、末端部などの線量を推計しないと、がん発症時に作業との因果関係が証明できず労働者を救済できない。国や東電は一刻も早く調査に乗り出すべきだ」と話している。【袴田貴行】