西地区の着工が決まった朝日新聞旧社屋(左)と中之島フェスティバルタワー=1日、大阪市北区、朝日新聞社ヘリから、飯塚晋一撮影 |
朝日新聞社が大阪で計画する超高層ツインタワー構想「中之島プロジェクト」で、2本目となる西地区のタワービルの完成が約1年早まることになった。完成は2017年の見込み。中之島フェスティバルタワーと合わせ、新たなにぎわいをつくり出そうという狙いだ。
12年11月に完成したフェスティバルタワーには、化学メーカーのカネカや印刷大手の凸版印刷など約80のテナントが入り、オフィスの契約率は9割を超える。
不動産仲介の担当者は、好調なテナント誘致の要因として、関西でも採用が少ない免震機能や全館LED照明、柱を窓の外側に配したフロア設計などを挙げる。
一帯の中之島西部地区は水都としての大阪の中心で、国の都市再生緊急整備地域に指定されている。国立国際美術館のオープン(04年)、京阪電気鉄道中之島線の開業(08年)などが相次ぎ、観光地としても注目が高まっている。朝日新聞社もツインタワーを完成させ、新しい人の流れを生み出す一翼を担う考えだ。
ただ、大阪市中心部のオフィスビル市況は厳しい。三鬼商事によると、12年11月末時点の平均空室率は9.51%。好不況の目安とされる5%を超え、平均賃料も2年近く下がり続けている。
背景には長引く景気低迷と企業の東京移転などがある。一方、大阪・キタを中心にしたエリアでは、オフィスビルの完成が相次いでいる。阪急百貨店うめだ本店に加えてオフィスも入る「梅田阪急ビル」(12年完成)▽JR大阪駅北側のうめきた(梅田・北ヤード)開発で整備が進む「グランフロント大阪」(13年4月街開き)▽市中心部のビジネス街に近い大阪・堂島の「新・新ダイビル(仮称)」(15年3月完成予定)――などだ。阪急阪神ホールディングスも阪神百貨店梅田本店(大阪市北区)を高層複合ビルに建て替えてオフィスも誘致しようと、14年度にも再開発を始める。
しかし、ニッセイ基礎研究所によると、この日発表した朝日新聞社のタワービルを除き、16〜18年に大阪で大規模なオフィスビルの完成予定はないという。市中心部のオフィス事情についても「空室率は13〜16年に上昇するが、17年ごろから下落が始まる。賃料も15〜17年を底に回復する」と分析している。
こうした中、古くから保有する中之島の土地を有効活用するには、大阪のオフィスビル建設計画の「空白期」に当たる17年が一つの好機になるとの理由から、新たなタワービルの建設を予定より早めることにした。