大阪市内の主要百貨店売上高増減率の推移【拡大】
家電各社が苦境に陥るなか、百貨店業界では今年、大阪・キタ(梅田地区)の百貨店戦争の主役が出そろった。いまのところ梅田の百貨店への来店客が増え、売り上げ増にもつながっているが、相次ぐセールの開催などで消耗戦の様相が早くも見え始めている。
売り場面積を8万平方メートルに拡大させ、11月下旬に全面開業した阪急百貨店梅田本店は、他百貨店にとって脅威の存在だ。このため、JR大阪駅の南北に位置する大丸梅田店とJR大阪三越伊勢丹は、全面開業前の5月に共同で紳士服のセールを実施。期間中、JR大阪駅の「時空(とき)の広場」で両店の店長と男性社員によるファッションショーを開く気合いの入れようだった。
セールでは、夏の電力不足懸念から、クールビス関連商品の売れ行きが好調。両店は10月下旬から11月にかけても紳士服に加え、地下食品売り場でも合同セールを実施した。
共同販促はキタだけでなく、ミナミ(難波・心斎橋地区)でもみられた。同市中央区の高島屋大阪店と大丸心斎橋店は11月21日、両店とその周辺の商店街などで使える商品券を発売。千円券11枚が1万円で買えるとあって、両店には開店前から多くの買い物客が集まった。
共同販促は売り上げ増というかたちで実を結んだ。各店の11月の売上高はJR大阪三越伊勢丹が前年同月比2・4%増、大丸梅田店が0・6%増。高島屋大阪店(和歌山、堺両店含む)も1・0%増といずれもプラスを確保。大丸心斎橋店は1・4%減だったが、「今年は前年より土休日が1日少ない。実質的にはプラスを確保した」という。
だが、11月21日に全面開業した阪急梅田本店は同25日までの5日間の売上高が前年同期の1・8倍、来店客数も2倍と絶好調。その勢いは今も衰えず、週末は大勢の家族連れで賑わう。
JR大阪三越伊勢丹は「(阪急の全面開業で)地域全体の集客効果が高まり、客足への影響はない」と平静を装うが、阪急梅田本店に出店した米宝飾ブランド「ティファニー」は大丸梅田店を直撃。同店のティファニーショップは客足が遠のいているという。
このため、大丸梅田店をはじめとする各店は今後も、カード顧客への優待やセールを開く予定だ。来夏には増床工事中のあべのハルカス近鉄本店(現近鉄百貨店阿倍野本店)が開業するが、その前に消耗戦に突入する可能性もある。(松村信仁)