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【サッカー】吉田麻也インタビュー 「まだ1ミリも成長していない」2013年1月5日 紙面から
世界最高峰のイングランド・プレミアリーグで今、サウサンプトンの日本代表DF吉田麻也(24)が16試合連続でフル出場を続けている。かつて幾人もの日本人選手がイングランドサッカーに挑み、今季も吉田を含め4選手がプレー。だがその多くは行く手を阻まれ、苦しんできた。日本人にとって「難関」のイングランドで、なぜ吉田は順調に試合に出場し、成長し続けているのか。「1ミリも成功したとは思っていません」と否定する吉田だが、その言葉の中に秘密を見つけた。 (聞き手・原田公樹) 試合が終わるころ、全身はいつもアザだらけだという。 「体中が痛いです。FKやCKのときは格闘技か、というくらい(笑)。殴り合いみたいになってます。オランダも激しいと思ってましたが比じゃない」 冷静でクリーンなプレーが吉田の魅力である。これまで名古屋、VVVフェンロ、そして日本代表の試合で慌てたり、ビビッたり、また感情を高ぶらせたりする姿をほとんど見たことがない。「おっさん」を自称する老け顔も手伝って、いつも淡々と落ち着いて見える。 「センターバックは安定感が求められるんですが、存在感も出したいんです。突出したいいプレーもしたい。自分の中にチグハグ感がある」 そのためだろうか。最近、プレミアリーグの試合でとても荒々しく、感情をプレーに出す試合が続いた。例えば昨年12月、1−1で引き分けた敵地でのフラム戦。ブルガリア代表のFWベルバトフをマークしたときだ。特に後半は、空中戦に強いといわれる欧州トップ級のセンターFW相手に荒々しく手も体も使って激しく当たった。その結果、ほとんど仕事をさせず封じ込めたのだ。 「演技っていうのか…(笑)。相手のタイプを見ながら、わざと荒々しく感情をむき出しにするときがあります。激しいプレーは好きじゃないけど、相手がガツガツきたら、やり返さないと、やり込められてしまう。弱点を見せたら、どんどんつけ入られるから」 相手のタイプや出方によって、臨機応変にプレーを変化させられるのは吉田の強みだろう。 「10代のころ、冷静さを装っていても、冷静じゃなかった。でもいつまでも、そういうプレーをしているわけにはいかない。センターバックは年を取れば取るほど、ミスは許されないですから」 吉田は主将として4強入りに貢献したロンドン五輪後、昨年8月30日にサウサンプトンへ移籍した。シーズン途中での加入となったが、デビュー戦は突然やってきた。日本代表のイラク戦から戻った2日後の9月15日。アーセナル戦で味方のセンターバックが負傷し、前半28分から途中出場の機会を得た。1−6で大敗する最悪のデビュー戦だったが、以来16戦連続でフル出場している。 「2012年は僕にとって、いい年でした。フェンロでは目標にしていた残留を果たせた。日本代表ではW杯出場権獲得の直前まで来た。ロンドン五輪ではメダルは取れなかったけど、僕が成長するための大きな大会だった。その結果、サウサンプトンに来られた」 ずっとプレミアでプレーすることを目標にしていた吉田。実はこんなに早く実現するとは思っていなかったと明かす。 「今季オランダの上位のチームに行ければいいな、と思っていた。それをワンステップ飛び越えたのかどうか分からないけど…。とにかく考えていたよりも早く、イングランドに来られた。下位のチームですけど…。いま試合に出ていますけど、1ミリも成功したとは思っていません」 今季プレミアへ復帰したばかりのチームは下位に低迷。一時は最下位だったが、11月のスウォンジー戦から失点が減り、復調してきた。現在は降格圏のひとつ上の17位。昨季同様に、「1部残留」を目指して熾烈(しれつ)な後半戦を戦う。 その中でも最も心がけたいことは「とにかくケガをしないこと」だという。昨季終盤、VVVではプレーオフを勝ち抜いて1部残留に貢献。直後に日本代表に合流し、6月のW杯最終予選のヨルダン戦で右膝靱帯(じんたい)を負傷してしまった。懸命のリハビリで復帰し、ロンドン五輪出場。再び日本代表、フェンロへ戻ってリーグ戦に出場し、その後移籍したサウサンプトンでは冬季中断なしで5月までリーグ戦は続く。 「休みなしでぶっ続け。いまケガをしたらノーチャンス。すぐにポジションを失うから、そこだけは本当に気をつけたいです。奥さんがこっちにいるんで、食事の面とか、コンディショニングをしっかり整えられるのは大きい」 休日は、8月に結婚したばかりの夫人と一緒に電車で片道約1時間15分のロンドンへ出かけ、食事やショッピングをすることが楽しいという。また人気の自身のブログでは「ピッチ外での異国での生活ぶりを伝えたい。適当に面白いことを書いています」と話す。 流ちょうに英語を話し、イングランドのサッカーになじみ、異文化に溶け込もうとする。必死にそうしているのではなく、ごく当たり前に変化できる吉田麻也。その柔軟さこそが、この男の最大の武器である。 PR情報
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