セブン-イレブンの雑誌コーナーに並ぶ小学館グループ発行の専用月刊漫画誌「ヒーローズ」=東京都千代田区【拡大】
プライベート・ブランド(自主企画=PB)商品の取り扱いを強化するコンビニエンスストアが音楽や漫画といった「コンテンツ系」の専用商品にも手を広げ始めた。「ここにしかない商品」の幅を広げ、集客につなげる狙いだ。作り手側にとっては「こだわりの作品」をターゲット層に届けやすくなり、次の展開に結びつけたい思惑がある。
◆通好みの内容
「通好みの内容なので、CD店での大きな展開は期待できない。ならば聴きたい人が『ここなら必ず入手できる』という環境を作りたかった。PBのイメージも前より良くなっている」
こう話すのはシンガー・ソングライター、佐藤竹善さん。新作「コーナーストーンズ5」はビートルズなどの洋楽カバー集だ。ローソン傘下の音楽事業会社の自主レーベルから、店頭端末ロッピーとグループのCD店HMVで扱う「音楽のPB」(幹部)として昨年11月に発売された。
在籍するバンド、シング・ライク・トーキングは今年でデビュー25周年となり、大手レコード会社に所属している。だがCD店が全国的に減少するなか、音楽業界の販売促進活動は大きな売り上げが見込める大物やアイドルに集中しがち。2011年に出したCDが「入手できない」との声が多く寄せられたことから、今回の限定発売を決めた。
作品は6000枚以上を売り、インディーズ(自主製作盤)系では異例のヒットとなった。ローソンは音楽関連の事業を拡大しており、新たな顧客層の情報をポイントカード「Ponta」を通じて得ることで、「新商品開発に生かしたい」(新浪剛史社長)狙いがある。
一方、セブン-イレブンは小学館グループ編集の専用月刊漫画誌「ヒーローズ」を11年11月から販売。作家陣はドラマ化された「GTO」の作者、藤沢とおる氏など大物から新進の若手までそろえた。多くの読者を開拓するため、定価は200円に抑えている。
漫画誌は一部を除きほとんどが赤字で、全国的に書店が減少する中、購入先の7割以上はコンビニが占める。「同じ赤字なら多くの人に読んでもらう方がいい。そこで展開を業界トップのコンビニに絞った方が得策と考えた。将来は作品の中から世界に通用するコンテンツを育てたい」と小学館クリエイティブの三宅克社長は意気込む。
雑誌販売だけでは赤字だが、収益は作品の単行本化やアニメ化、グッズ化など2次利用から得る。創刊1年を経て発行部数が上向き始め現在は12万部。一部作品のアニメ化も決定した。
◆「ついで買い」も期待
セブン-イレブンは「コンテンツ業界の育成に寄与できる。200円の雑誌なので他商品の『ついで買い』も期待できる」(幹部)とそろばんをはじく。
コンビニ各社は、差別化のため「セブンプレミアム」など社名を冠したPBを含め企画開発から手がける専用商品を増やしている。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、専用商品の構成比率を「将来は7割以上にしたい」と話す。全国店舗数が5万店を超え飽和状態も指摘されるが、コンテンツ系PBは今後の競争を優位に進める材料ともなりそうだ。(藤澤志穂子)