◆14年打ち上げ
小惑星イトカワの微粒子を地球に抱えて帰還した探査機「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」が、二〇一四年に宇宙へ向かう。準備を進めている宇宙航空研究開発機構(JAXA)の最大の狙いは、生命誕生の解明につながる鉱物の観測。浜松ホトニクス(本社・浜松市中区)やNECなど日本メーカーがもつ技術を結集した開発が進められている。
後継機の調査対象は、イトカワとは種類が異なり、水分を含む「含水鉱物」が存在する小惑星「1999JU3」。直径はイトカワより大きい約九百二十メートルで、球体に近い形状。地球に近い軌道にあり、約七時間半の周期で自転している。
観測機器の開発を担当するJAXAの安部正真准教授は、「含水鉱物を持ち帰ることができれば、地球の海や生命の起源に関する情報が得られる」と期待を込める。
浜ホト製のセンサーが搭載される探査機の部品は、小惑星が照り返す太陽光を解析し、地表にある鉱物の特徴や分布を観測する「近赤外分光器」。惑星から約十キロ離れた宇宙空間から着陸する場所を定めるための重要な観測作業を受け持つ。
NECは初代はやぶさに続き、探査機の推進力になるイオンエンジンを手掛けている。前回は地球への帰還を支えた立役者だったが、エンジンの動作トラブルや燃料漏れなどが相次いだ。このため、はやぶさ2では、耐久性を高め、推進力を二割向上させるといった安定飛行ができるように改良した。帰還カプセルをIHI、軌道を計算するシステムを富士通が手掛けている。
二〇〇三年に打ち上げられた初代はやぶさは、多くのトラブルを乗り越えて帰還、月以外の天体往復という世界初の快挙を達成した。初代に関わった国内企業は九十九社。今回も大手から中小まで多くの企業が参加している。JAXAは昨年十二月、相模原キャンパス(相模原市)で本体と太陽電池パネルがつけられた探査機を初公開。帰還したカプセルは一〇年十二月に浜松市で特別展示された。
<はやぶさ2の探査プロジェクト> 2014年に打ち上げられ、18年に小惑星に着陸、1年半の調査を経て20年に帰還する長期計画。JAXAの国中均教授がチームを率いる。小惑星「1999JU3」は有機物や水分を含んだ鉱物があると推定される「C型小惑星」に分類される。地球のような大きな惑星では内部が高温で溶けているが、小惑星は星が誕生した時の材料物質が残っている特徴がある。地球に近い軌道の小惑星を調べることで、地球の起源や進化の過程を調べることができると考えられている。
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