それはキャリア組の警察官はそれ以外の警察官と比べて非常に数が少ない為である。
全国に約26万人いる警察官の中で、キャリアは500人程度である。
つまり、99.99%以上の警察官は地方公務員採用である。
この為、関係悪化以前にそもそもキャリアとノンキャリアが接触する機会が非常に少ないので両者は関係すらしないのが全国的に一般的なことなのである。
特に所轄レベルに勤務する警察官がキャリアと接することは全くといっていいほど無い。
所轄署の署長としてキャリアが赴任してくることはあるが、全国的に見ると殆どの警察署長はノンキャリアが就任しており、キャリアが全国のうちの1〜2所轄署の署長になったからといって、それ以外の大半の警察署の署員にとってはあまり関係ない話である。
キャリアの出向例が最も多い警視庁(東京)でも、所轄レベルの管理職としてキャリアが赴任する例は少ない。
嘗ては20代半ばのキャリアが所轄署の署長として赴任する人事も多かったが、最近では所轄署よりも警視庁・警察本部の管理職としての赴任のほうが圧倒的に多いので現場最前線に勤務する所轄署員とはさらに縁遠い存在となっている。
警視庁本庁を例に取ると、警視庁の主要課長(警視正)、理事官(警視)、管理官(警視)として若手キャリアが着任する例が多い。
部長や参事官は殆どが30〜40代のキャリアによって占められている。
しかしこれら幹部職に一介の警察官が接する機会はというと、殆ど無い。
所轄勤務ならば捜査や会議で所轄に出向いてくるキャリアに一瞬会う機会くらいはあるが、「一緒に仕事をする」という関係にはならない。
所轄署員でも比較的多くキャリアと接することが出来るのは、現場研修で派遣されて来たキャリアの場合か、警察署長として派遣されて来たキャリアの場合くらいである。
しかし全ての警察署に必ずキャリアが派遣されてくるわけではないので、やはり出会う確率は極めて低い。
警視庁の管理職キャリアとノンキャリアの接触度合
《理事官・管理官》
捜査本部設置、重大事件の捜査で所轄署へも頻繁に派遣される捜査一課や捜査二課の理事官・管理官だが、あくまで指揮官として大多数の捜査員を指揮しにやってくるという立場なので、所轄署員ひとりひとりと密接な関係を保ちながら一緒に仕事をするようなことは出来ない。
さらに二課はともかく、一課の理事官・管理官は殆どノンキャリアが着任する。
キャリアの捜査一課理事官は1人もいない。キャリアの捜査一課管理官は、いることはいるが1人か多くても2人であって、後はノンキャリアである。
この為、所轄に管理官が出向いてきてもそれがキャリアである確率は非常に低い。
そして、捜査現場においてキャリアが占める割合も非常に低い。凶悪事件が発生し捜査一課が派遣されてきて、捜査本部が設置されると当該所轄署・隣接所轄署・警視庁合わせて150名〜200名以上の捜査員が投入されるが、その中でキャリアの管理官が派遣されたとしても、200名の捜査員の中でたった一人のキャリアという状態である。この為、ノンキャリアにとってはたとえ接触したとしても「遠い世界の人」という感じとなる。
キャリアの管理官と多く共同業務を行えるノンキャリア警察官は、その管理官の直属部下(同じ課に属している係長クラスとその一部の部下)と、直属上司(同じ課に属している課長、理事官)くらいであり、それ以外の警察官とは例え同じ警視庁に勤務している者でも滅多に共同業務を行う機会がなく接触の機会も無い。
《警視庁部長クラス》
地方警察の部長はノンキャリアからの登用も比較的多いが、警視庁の場合は殆ど全員キャリアである。
このキャリアの部長とノンキャリアが接する機会となると、前述の場合よりもさらにずっと少なく皆無に等しい。
まず、警視庁の部長というのは「部長」という役職名ではあるものの、一般企業の部長などとは同列に並べられない。
一般企業の部長クラスが2000人も3000人も部下を持つ例は稀であることや、そもそも警視庁の部長は行政的位置付けでは「東京都内局の局長」と同格となっている。
警視庁は部制を採るので部の長は部長ということになるが、その地位は国家公務員であり身分的にも階級的にも警察庁の課長と同じとされている。
つまり官僚としては警視庁の部長は中央省庁の課長と同格なのである。
この事情から、東京都側は警視庁の「部」を東京都の総務局や港湾局と同じ「局」として扱っており、英訳も都の組織全体で待遇上の観点から整合性をとったものになっており、部の英訳は通常の「Department」ではなく局と同様の「Bureau」が用いられており、部長の英訳も局長と同じく「Director General of 〜 Bureau」である。
要するに地方公務員業界全体で上層部とされている警視庁の部長クラス幹部に一介の警察官が接触することはまず殆ど無い。
同じ警視庁に勤務していても、部長周辺(参事官や主要課長)となると殆どキャリアで固められているので、キャリアの部長と接する機会があるのはノンキャリアで警視正まで登りつめた一部のエリート警察官くらいである。
《警視総監》
キャリア組のトップ官僚指定席となっている警視総監に接する機会のある警察官となるともはやキャリアの場合でも少なくなる。
ノンキャリアでは警視総監の専属秘書を担当する者くらいしか多くお目にかかることは出来ない。
所轄署員レベルが警視総監に直接お目にかかれるのは「視閲式」や「慰霊祭」などの極極一部のイベントに参加した場合のみである。
警視総監によっては"現場派(市街地・所轄署など現場によく出てくるタイプのキャリア)"の人は割合、所轄署員と直接接する機会もあるが、全ての警視総監がそうであるわけではないので、所轄署員、同じ警視庁勤務でも中下層に勤務する警察官にはやはり縁遠い人で、警視庁に採用され東京で勤務にあたる警察官でも警視総監の顔はテレビやネットでしか見たことない、名前くらいしか知らないという者が大半である。
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