邪魔なやつらを消せるスイッチを手に入れた
「これで、僕が邪魔だと思うやつらを消せるんですか?」
「あぁ。1人残らず」
高校からの帰路だったはずです…僕は1人のおじさんに呼び止められました。ボケた説教でもされるのかと思っていたんですが、僕がそのおじさんに振り向くなり、丸くて真ん中の赤いスイッチを見せてきました。それを押すと、そのおじさんいわく、押した人物が思い浮かべた人々を消せるらしかったのです。
「それは、人が死ぬということですか?」
「死ぬというか、そうじゃな…消えるんじゃ」
「消える?」
「人は『死ぬ』と、遺体が『もの』として残る。じゃが、人が『消える』と、遺体などの『もの』は愚か、周りのやつらも、それを気にしなくなる。つまり、完全なる消滅じゃ」
「完全なる、消滅…」
まさか、そんなはず…
「わしを疑っておるか、そうか。じゃ、見せてやろう」
「え?」
するとおじさんは僕たちの横を通っていく歩行者に目を向けました。そして、その歩行者の背中に向けてスイッチをかざしたのです。
「まさか…」
「わしがあいつを消してやろう」
そう言って赤いスイッチを押しました。
その瞬間、歩行者の姿が消えたんです。音を立てることもなく、空気に溶けたように…
何したんだ、あのおじさん…
「『消した』のじゃ。あの男を」
確かに、消えてた…
「じゃ、本当に…」
「そうじゃ。やっと分かったか。これは自分の思い浮かべた人間を消せる」
驚いてあの時は声も出せませんでした。でも確かにあの時です、僕があのスイッチを使ってみたいと思ったのは…
消したい人間なんかあの頃はたくさんいました。身近には、自分のことをキモいとさげすんだ奴ら。他にはそう、高校受験でたったの1点差で僕のことを落とした教師など。毎日のようにテレビで見る政治家どももウザかったんです。
だが、消さないでいい人間もいました。家族、親友…そういった人たちは皆、僕のことを分かってくれます。そう、皆僕と同じなんだと。
じゃ、僕と考えが違う奴らを消せばいい…そうだ…
僕と考えが違う奴らは、皆…!
僕はおじさんからスイッチを受け取りました。そして、覚悟を決めたんです。たくさんの人を消すことになると…
よし…
「僕と考えの違う奴らを全員…」
そうつぶやいて僕は、スイッチを押してしまいました…
その時です、人類が滅亡したのは…
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