社説:2013年を展望する 強い経済は構造改革で

毎日新聞 2013年01月04日 02時30分

 年頭の経済社説は、過度の悲観論を排することから始めたい。

 まず、米国きっての知日派、ジェラルド・カーティス・コロンビア大教授の話を聞こう。「日本衰退論の不毛」という興味深い論文をフォーリン・アフェアーズ・リポート12年12月号に寄せている。

 教授によれば、日本経済に対する衰退論は誇張されている。日本の過去20年間の経済のできばえは、他の先進諸国に比べて見劣りしない。日本衰退論は日本の人口減少を考慮しない見方であり不毛である。

 ◇「幸せな不況」に安住

 1人当たり実質国内総生産(GDP)成長率の平均値でみれば、日本は他の先進国にまったくひけをとらない実績をあげている。「停滞」といわれた時期にも生活レベルは改善し、失業率は低く抑えられてきた。格差は広がったかもしれないが、米国よりはるかに小さい。

 中国と日本のどちらで暮らしたいか。生活レベル、社会サービスのレベル、平均余命などからみて答えは明らか。台頭する中国より「衰退途上の」日本で暮らすほうがはるかにいい。そう教授は言うのである。

 こういう日本の状況を、幾ばくかの皮肉を込めて「幸せな不況」と呼ぶ人もいる。金融市場でカリスマ的な影響力を誇るゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのジム・オニール氏である。

 日本はすでに十分豊かになり失業率も低い。社会は調和がとれ落ち着いている。しかも、1人当たりGDPは伸びている。不況に見えるが幸せなのだ。このため、現状に安住することを選び、きつい改革を望まなくなっている、と。

 今年私たちが問われているのは、この「幸せな不況」にどう向き合っていくか、である。これでずっとやっていけるなら「幸せな不況」も悪くない選択なのかもしれない。

 しかし、日本はGDPの2倍にも達する公的債務残高を抱えていることを忘れてはならない。デフレのままでは税収も上がらず、年金・医療など社会保障制度の維持が難しくなるばかりか、財政破綻の危機が現実のものとなる。

 安倍晋三首相の答えは「強い経済を取り戻す」だ。そのためにはまずデフレからの脱却であり、公共事業の集中投資と日本銀行の金融緩和でそれは実現できると主張する。

 経済学者の多くは懐疑的である。むしろ国債市場の波乱をよびかねないと警戒している。私たちもそう思う。とりわけ、2%の物価上昇に達するまで、無制限に日本銀行に国債などを買い入れさせるという主張は危うい。

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