東京電力福島第１原発事故で一部が避難区域になり除染が進む福島県川俣町が、除染の作業員に対し、個人情報の警察への提供に同意させる誓約書を書かせていることが分かった。避難区域内での空き巣などを抑止する狙いだが、専門家は「プライバシー保護上問題だ」と行き過ぎを指摘している。

　誓約書は、氏名や血液型などを書く欄があり、証明写真の添付も求めた上で「（作業員を雇った）会社が必要と判断した場合に、記載した個人情報を警察に提供することについて同意します」と明記されている。

　町原子力災害対策課によると、誓約書は町が文案を作り昨年１０月下旬、除染作業の元請けの５共同企業体（ＪＶ）に対し、作業員に書かせることを要請した。同課は「町民の不安の声があり、犯罪の危険性を少しでも抑えるためだった」としている。県警によると、事故に伴い住人が避難した留守宅に盗みに入った疑いなどで、複数の作業員が逮捕されている。

　山口大の柳澤旭（のぼる）名誉教授（労働法）は「誓約書の内容は、労働者のプライバシー保護上問題がある。しかも、個人情報を警察に差し出すのに同意させるのは論外だ」と話した。【三村泰揮】