2013-01-02
■Kindle Paperwhite 3Gが容量いっぱいになったときに考えたこと
Kindle Paperwhite 3Gは凄い。
まず買い切り。
常にネットにつながる(3G)なのに接続料は全てAmazonが負担!!
こんなビジネスモデルが構築できるのは世界広しといえどAmazonだけだ。
調子に乗って漫画をガンガンダウンロードしていたら一杯になってしまった。
ちなみにダウンロードした漫画は
- 大東京トイボックス全巻
- ADAMS 1〜4巻
- エヴァンゲリオン全巻
- 湾岸ミッドナイト1〜7巻
と、自分で書いてて恥ずかしくなるほど厨二丸出しのものだが、湾岸ミッドナイトの8巻をダウンロードしようとしたところで満杯になってしまいどれか消せ、と言われてしまった。
いや、消してもいいんだけどさー。どうせクラウドに残ってるし。
ただ、消すとまたダウンロードするわけで、ダウンロードするとまたAmazonはダウンロード料金をドコモに払うわけじゃないですか。これ、漫画とか4,5回ダウンロードしたらすぐ赤字になりそうなんだけど大丈夫なんですかね、と余計なことが心配になってしまう。
アメリカでは日本ほどマンガそのものがメジャーじゃないからこういうケースはあまりないのかもしれないけど、日本だと普通の大人も普通にマンガを読むので回線使用量爆発してどうかなってしまうんじゃないか、と余計な心配とわかりつつも心配してしまう。
それと、いちいち消すとなるとなんかイマイチ嬉しさが減る。
最初ダウンロードしまくってたときは、積ん読ならぬ積み落としみたいな感じでガンガンAmazonに金払うぜーとむしろ僕の銀行口座がそっくりAmazon様に寄付されるくらいの恐怖感というのがあったのだけど、容量がいっぱいになってしまうと急激にここでブレーキ感がでてくる。
クラウドがあるからいいだろっていう人は根本的に何も解ってない。
おれは読みたい時はノータイムで読みたい。できれば付箋挟んどいて、名台詞・名場面はなんども引用したい。
著作権的に微妙だが私的複製の範囲ってことでいえばiPhoneのKindleで読んだ名場面はスクリーンキャプチャとってる。でもここからKindleのページに戻れないからすごく嫌だ。
それがいちいちクラウドからとってくるとか待ってられるか。いまどき3Gだぞ。
ついでにいうと、まあ百歩譲ってくラウドからとってくりゃいいだろを受け入れたとしても、クラウドからとってくるためにはローカルでなにか消さなきゃ行けない。「手動で」僕は今後数週間読まないであろう本を選んでわざわざ消さなきゃなんない。こんなモタモタした電子ペーパーのUIで。これが最高に馬鹿げている。本を読むという目的でいえば電子ペーパーはかなりいい。けど、UIという意味では遅い。できるだけUIを使いたくない。なのにこのもっさりモタモタUIを使って消さないとなんない。なぜだ
僕はあらゆるマンガを持ち歩きたい。できれば1000冊くらいのマンガをまるごとKindleで持ち歩きたいんだけど、少なくともPaperwhiteさんではそれは無理みたいだ。
Paperwhiteの大容量版とかないし。実際のところ、いったい何ギガのメモリーが載ってるのかよくわからない。
iPod以前にもシリコン音楽プレイヤーというのはあったんだけど、あっちはスマートメディアというダサダサの記録媒体で32MB〜64MBという信じられないような低容量しか持ち歩けなくて、CDアルバムが1枚入るのがやっとで、これじゃあなんだかな、どれだけヘビーローテーションで聞くんだよ、という感じだった。
iPodが凄いのはやっぱ「やばい、自分の持ってるCD全部入るんじゃないの?」感であり、大多数のユーザーは実際のところお気に入りのCD数十枚くらいはiPodにスポッと入った。
僕がKindleに期待していたのは「やばい。僕の本棚全部入るんじゃないの?」感であり、それが買ってからわずか二週間でギブアップとはなかなか悲しいのである。
iPadにひたすら自炊した本を突っ込んでた時代もあった。
特に分厚くて持ち歩けない系の本をiPadやiPhoneに突っ込んでおくと非常に良かった。
でもKindleはそういう分厚い系の本よりはまずはコミックが充実しているのでコミックを読むことになる。が、コミックはわずか四シリーズの途中でギブアップだ。僕はゴルゴ13とこち亀も全巻持ち歩きたい。そうするともうずっとマンガ読んで過ごせる。究極のダメ人間端末だ。
自分の部屋からありとあらゆるマンガを抹殺して、すっきりすっからかんにしたい。
DVDを棄てたい、と思って大量にDVDを棄てた。それができたのはAppleTVとHuluがあるからだ。よほどみたいお気に入りのDVDだけをとっておいて、たまに見ればいいや程度のやつはiTunesで買えばいい。
iPod,iPhoneはそうした欲望を叶えてくれる。Kindleもいずれ大容量版が出て、僕はそれを待ってましたとばかりに買うだろう。4シリーズが40シリーズ、容量はたった10倍でいい。そもそも白黒なんだから。もとの情報が少なくとも1/3くらいなんだから(というほど単純ではないが)
Kindle Paperwhiteの8時間というバッテリー寿命は少ないかと思ったけど意外といけた・・・とおもったら8週間か。しかしとてもそんなに電池が持っているとは思えん。少なくとも買って二週間しか経ってないけど二回は充電してる。3Gのせい?
それよりも問題は容量だ。
しかも容量を増やせば増やすほどAmazonは得をする筈である。通信費が減るんだから。サーバーの負担も減るし、ドコモへの回線使用料も減る。
容量が10倍のKindle Paperwhite 3Gなら、5万円払ってもいい。
Kindleはやっぱり快適だ。
それは買い物体験が恐ろしく洗練されているからだ。
Kindleを買うなら、断然Paperwhite3Gがオススメだ。
3Gとそうでないやつの価格差は5000円くらいだが、体験はiPhoneとiPod touchくらい違う。
マンガの一巻を読み終わる。
続きを読むか聞かれて、続きを読むと押せばそのままダウンロードが始まる。
Kindleが素晴らしいのはそれだけではない。
たとえばFacebookやTwitterである本が話題になる。
リンクをふむとAmazonのページに行く。
そこで「Kindleで買う」みたいなボタンが出ていて、それを押すと、僕のKindleに自動的にダウンロードされてる。
Kindleで買うボタンがない本は、欠かさず「Kindle化をリクエストする」ボタンを押す。
これが何の役にたつのかわからないが、Kindle化されてほしい、と心から思う。
Kindleで買えないときだけ、仕方なく実物の本を買う。
あの段ボールを棄てるというイメージが頭に浮かんで、少しうんざりしながら。
しかしそのKindleも容量が一杯になってしまった。
ここまで完璧なユーザー体験を構築していたのに、容量がいっぱいになったあとのKindleはみじめだ。
むしろ「最近この本読んでないよね?捨てていい?」
と勝手に積ん読をビニールロープで括って廃品回収に出してしまうおせっかいな彼女の如く、「この本は読んでないので棄てますよ?いいですか?」と聞いて来てほしい。
このへんのデータの管理関係は、実はソーシャルゲームで恐ろしく磨かれている。
このブログの読者の大半はソーシャルゲームをやってないか、もしくは作り手の方だと思うので感覚としてわかりにくいかもしれないが、今主流となっているカードバトルソーシャルゲームは、実はデッキ編集に特化した携帯用CMSと言っても差し支えないような機能が満載されている。
最初はおっかなびっくり搭載されたデッキ編集機能だったが、今やデッキ編集はソーシャルゲームになくてはならないものになった。
その結果、あらゆるメッセージ処理は定型化され、最適化され、ユーザー体験の重要な一翼を担うことになった。
ソーシャルゲームのカードバトルに必要な機能は、要するにカードの管理である。
カードを合成したり、売却したり、進化させたりするという一連の機能がある。
効率的に売却するために売却のためのUIが洗練されていく。
効率的な合成を実現するために、「合成におすすめ」のUIが洗練されていく。
挙げ句、最近のトレンドは自動合成だ。
同じカードが複数でてきたら、勝手に合成する。合成の手間をユーザに掛けさせない。
また、入手したカードにテキスト入力なしで自由に検索できるよう様々なソート、属性やレアリティによるソートで全てのカードにアクセスできるようにするという工夫がある。
もっとも、これはいまのソーシャルゲームのカードの枚数が、せいぜい数百枚のオーダーだから成立する話であって、Kindleのように数十万冊の書籍を扱うという前提にはない。
ただ、それでもソーシャルゲームのカード管理はかなり洗練されたユーザー体験を提供してくれる。
Kindleでいえば、カードは書籍にあたる。
ソーシャルゲームで常に数百枚のカードを把握し、管理している経験からいえば、Kindleの書籍管理はまだまだ詰める余地がある。
ただ、それ以前に端末に入る書籍の数が少なすぎる。
すっかりネガティブな話題しか聞かなくなった楽天koboが付け入る隙があるとすればここではないかと思うのだけど、相変わらず大変なことになってるらしい。
Koboは3Gがないという点をのぞけばKindleに比べてハードウェア的にもソフトウェア的にも決して劣っているわけではない。
Wikipediaやギター譜を引いても書籍数も多いような気がするし、コンパクトで持ち運びやすい。おまけでついてくるお絵描き機能もなかなか楽しい。Kindleにはない。
なのに、にもかかわらず、会社の姿勢ひとつでここまで残念な感じになってしまうというのは、僕も社長の端くれとして多いに反省しなければならない。
koboで電子書籍を買うと、いつの日か読めなくなる可能性が非常に高いのではないか、と思ってしまう。ここには潜在的な恐怖感がある。wikiepdiaや青空文庫にまでDRMをかける会社だ。ある日、全く唐突に「koboやーめた」と言わないとも限らない。実際、そのような感じで楽天が運営してた電子書籍ストアがひとつ消滅してる。
だとすると電子書籍ストアにもとめられるのは、端末よりもなによりも安定感だ。
AmazonはKindleを米国で慎重に導入し、そして慎重に普及させている。3Gの通信料金をかわりに払うという、ヤケクソとしか考えられないようなことをしながらも着実に会社を成長させている安定感がある。
そしてなにより、Amazon自体はオンライン書店として決してなくならないであろう安心感もある。
仮に端末としてのKindleが死んでも、いつでもiPadやiPhoneでAmazon KindleStoreで買った本を読むことが出来る。これは安心だ。安定感がある。端末の書籍を消しても、半永久的にAmazonから再ダウンロードできるんじゃないか、少なくともむこう10年は大丈夫じゃないか。そういう安定感がある。
ただし会社の誠実さ以外の部分で安定感を出す方法もある。
それは大容量化と、DRM解除だ。
大容量化すれば再ダウンロードしなくていい。向こう10年分の本をダウンロードしておけば、もうkobo Storeが消滅しても構わないとすれば、これは安定感がある。
DRM解除は、さらに安定感がある。
その瞬間、その書籍はいくらでもバックアップできるようになるのだ。
DRM解除すると違法コピーされる、という恐怖心が未だに強い人も少なくない。
確かにその面はあるだろうが、それ以上にユーザーに与える安心感は大きい。まあDRM解除を実現するにはまず日本で一番頭の固い組織である出版社のお偉方を説得するところから始めなきゃならない。それが一番面倒といえば面倒だ。Kindleでさえ嫌だという人もいるのだろうし。
僕は個人的にはDRM解除したほうが電子書籍のユーザーは増えると思う。
それによって具体的な体験が損なわれることがなければなんの問題もなく人々は電子書籍を正規の手段で買うだろう。
たとえば電子書籍のビューアは今は各社が端末と一緒に作り込んでいるが、本来はもっといろんな可能性があっていい。青空文庫のビューアが洗練されているのは、フォーマットが公開されているから誰でも自由にビューアを作ることが出来るためだ。
DRM解除しても、もとの著作者にちゃんと印税が行くようになっていればなんの問題もない。
DRMを解除することと著作権を手放すことはまるきり別だ。個人のバックアップ目的ならDRMの解除を法的に認めてもいいと思う。そうじゃないと怖くて電子書籍端末を持ち歩けなくなってしまう。
koboはKindleの10倍の容量を搭載すればそれだけでキャズムを超えるのではないかと思うんだけどなぜしないんだろう。下手にフロントライト付きの新型機を出してる場合じゃない。やっぱり安かろう悪かろう戦略がそうさせているのだろうか。僕だったら面倒だからSSD載せちゃうけどな。アホみたいに高くなってしまうけど大容量化によって間違いなく体験は質的に変化がする。
データベースの容量ではなくて体験で差別化する、という感覚的にごくあたりまえのことが、まだ肌感覚として日本の経営層に伝わってないのかもしれない。
データベースの絶対量が重要なら、みんなが国立国会図書館に行くはずだ。
無料だし、全ての書籍が蔵書されているからだ。
ただ、国会図書館は他の図書館に比べて使うのがちょっと面倒だ。そこにしかない情報もあるが、たいていの場合は近所の図書館で事足りる。データベースの絶対量よりも、近場にあって便利という体験が勝っている。
コンビニもそう。
コンビニの商品は全てスーパーマーケットよりも割高に設定されている。
そのかわり、町のあちこちにあって、24時間やっていて便利。だからコンビニで買う習慣ができる。
Kindle Paperwhite3Gは書籍におけるコンビニになりうる。WiFiに繋ぐのはちょっと面倒だ。3Gはそれだけでキラー機能と言える。値段も異常に安い。
誰でもKindleに飽きなければ遠からず容量に不満を抱くだろう。
だとしたら次の電子書籍端末、電子書籍にiPodのような革命をおこすのは100GB以上の容量を持った電子書籍端末。それを誰が最初につくるかだ。
僕としてはAmazonに先鞭をつけてほしい。が、koboはわからないけどLideoならまだ充分Kindleに対抗できるかもしれない。LideoがKindle Paperwhite3Gのような3G回線契約を飲めるかどうかは別問題だが。
いっそSoftbankなら、日本中のあらゆる場所に設置したWiFiスポットがあるから独自の電子書籍端末を作って快適なユーザー体験を売ることも不可能ではない。
当然、出版社まで持っているソフトバンクグループなんだから、その領域を検討していないわけはないと思うし、いつまでもAppleの代理店みたいな商売をしているわけにもいかなくなるだろう。
2013年は面白い年になりそうだ。
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