――新聞業界の衰退が叫ばれる時代に新聞を創刊しました。
インターネットが爆発的に普及する時代の潮流と逆行していたかもしれませんが、新聞で新しいサッカーメディアを育てたい信念がありました。日本の新聞の流通網は高度に完成され、印刷・流通コストも安い。1部150円のエル・ゴラッソだと、コストは1部あたり十数円ほどでしょうか。前日深夜に作ったものが、翌朝に日本の広い範囲に配られるのはすごいことです。
――サッカーだけの紙面作りにこだわる理由は?
野球やほかのスポーツ、芸能も載せたら、とずいぶん助言されました。でも、石川遼、斎藤佑樹、浅田真央らを取り上げるメディアは山ほどある。メジャーなものばかりが消費される時代ではない。この10年で、百貨店も専門店街へと移行しています。独自の個性、ブランド力がないと消費者は選ばない。最近の読者は多様なメディアから情報を選んでいます。書き手より深い情報を持つ場合もあるし、ブログやツイッターなど個人が発信するツールもある。だから、記者には専門家としての深い知識が不可欠です。サッカーに特化するというのは強みです。
――Jリーグに徹底的にこだわっていますね。
06年ドイツワールドカップ(W杯)での日本の惨敗で代表人気が下火になったのは一因ですが、それだけじゃない。その時々の旬な選手……今なら本田圭佑、長友佑都らを取り上げるメディアは多い。日本代表というおいしい花の部分だけを摘むのではなく、幹や根っこの部分、例えば地域に広がるクラブや若年層などに存在価値を見いだすことにしました。
――コアな読者層は?
Jリーグをこよなく愛するファンやサポーターです。毎週末の試合を楽しみに、それが生活の軸になっている人々です。月・水・金の週3回発行ですが、試合前日の金曜に盛り上げ、月曜に試合の余韻を楽しんでもらう。ひいきクラブが勝った、負けたと友人らと話に花を咲かせてもらう。水曜には国際試合やカップ戦のほか、特集を充実させる。新聞で、サッカーのある生活サイクルを提供するのがエル・ゴラッソなんです。
――ご自身が当初描いていたイメージと、今の編集方針は違うそうですね。
私のように40代以上の感覚では新しいメディアは作れないのかなと悟りました。情報化で社会の変化が速くなり、世代間の価値観が乖離(かいり)しています。編集部員は20代後半から30代前半が多い。若いスタッフが持つメディア作りの感覚は、ジャーナリスト目線じゃない。消費者の代表という意識です。例えば日本サッカー協会の人事がどうなっているかなどには関心がないようです。
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