2007年08月28日

哀・南京町

 土曜夜のこと。夫が、日曜日には兵庫県立美術館に行こうという。「前に行った、大丸の近くの…」というが、私の脳内でチカチカと赤ランプが回る。「ちょっと調べてみるわ」と電話を置いてネットで検索したら、案の定、夫の勘違いで、氏が見たい「川村記念美術館所蔵  巨匠と出会う名画展」をやっている兵庫県立美術館は、JR灘駅や阪神岩屋駅から徒歩10分という辺鄙な場所にあった。大丸近くというのは、たぶん、神戸市立博物館のことだろう。

 「この暑い昼間に炎天下を歩くのはいやじゃー」と、一旦は同行を拒否した私だが、一晩寝たら、ま、いいか、と思えてきて(苦笑)、「行ってもいいよ」と連絡した。

 展覧会は結果オーライ。夫より私好みの近現代作品(含抽象画)が多くて、ほくほくと楽しんだ。

 ただ、会場がやたらでかく、かつ、入場券売り場から展示会場にたどりつくまでにかなりビル内を歩かされるし、動線もスッキリせず分かりにくい。いったい誰やねん、こんなビルを設計したのは! と調べてみたら、安藤忠雄さんだった。嗚呼!

 その昔、私はかれの作品のファンだったのだが、このビルはいただけない。悲しいぞ巨匠、私は。

 がっかりはなおも続く。

 「腹が減った」「ビール飲みたい」という夫のために美術館内のレストランに入ったのだが、ここには一品料理はないという。メニューは、コース3種類、スパゲッティ3種類のみ。私はコース料理でもよかったのだが、夫は南京町で夕食を取るつもりにしているらしい(それならそうと、先に言わんかい!)。

 「前菜やメイン料理を単品で出してもらえませんか?」と尋ねたが、それはできませんと融通の利かないお返事。夫が「スパゲティを2人で分ける?」と聞いてきたが、パスタ専門店でもなく、客サービスという発想のまるでない店で中途半端な食事なぞしたくないわいと、私は断固拒否。「それならけっこうです。出ましょ」と夫に声をかけて、店を後にした。

 自治体の施設には、何を勘違いしているのか、客に対してゴーマンな態度を取るテナント・店舗が少なからずある。大阪で例を挙げれば、中之島公会堂地下にある食堂がそうだ。しょせん、ショッピングビルで店舗展開しているチェーン店というレベルなのに、なんであんなにエラそーなんや?! 問い合わせで気分を害して以来、二度と足を運んでいないけれど。場所と雰囲気がいいだけに、早く運営母体を変えてほしいものだ。

 話を戻して。
 結局、高速神戸で3駅移動し、夫の当初の思惑通り、南京町の昌園さんで夕食をとった。シェフ黄棟和さん(通称ロミオ)は相変わらずダンディで、中3のお孫ちゃんがいるとはとうてい思えない「若さ」だ。ただ、ロミオに聞いた南京町の現状は、芳しいものではなかった。

          *     *     *

 米兵相手の売春婦が道路に立ち、クスリの密売やケンカが絶えず、しばしば警察の手入れを受けていた「暗くて危険な南京町」。それを、「家族連れが散策し、楽しく買い物や食事の出来る街」に生まれ変わらせたのが、黄さんや呉さん(「民生」オーナー。故人)をリーダーとする、南京町商店街振興組合の人々だ。阪神淡路大震災も彼らの思いを砕くことはできず、震災後、南京町は復興のシンボルとしてにぎわいを取り戻した。ところが…

 そこに目を付けたのが、ニューカマーの中国人たちである。正規の渡航者だけではない。「蛇頭」の名を南京町で耳にしたこともある。良くも悪しくも彼らはたくましい。南京町にどんどん出店しては、店頭での強引な客引きを始め、禁止されている店頭販売を始めた。

 どんな食材が使われているかも分からない「唐揚げ」や「肉団子」が串に刺されて1本200円ぐらいで売られる。「麺類」も数百円。お上りさんやガキどもがそれらを買い漁り、立ち食いし、ゴミをポイ捨てする。

 通りは人だらけだが、南京町の「いま」を築いてきたお店は必ずしもにぎわっていない。ごみごみした今の南京町を嫌って足の遠のいた常連さんが少なからずいるからだ。

 振興組合にも入らず、一次の利益を求めて出店した連中は、頭打ちになれば閉店し、稼いだ金を手にどこぞに移れば(本国に帰る?)すむ。荒らされた街を再建するのは、この地に根を張って店を営んできた人たちだ。

 いまのうちに何か手を打つことはできないのだろうか? あればとっくに手を打たれているはずなのは分かっているのだが…。敬愛する南京町の人々のために何も出来ない自分が情けなくなった宵であった。あーあ。

usagiyablog at 23:58│Comments(3)TrackBack(0)気に入らんっ! | 思ったり考えたり

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この記事へのコメント

3. Posted by みょうが   2007年09月02日 08:01
ドタ参を認めていただいて、ありがとうございます。センセは目下、ん十回目の禁酒中です。痛風で足が腫れあがっているからですが、9月末には飲酒再開しているでしょうね。でも、車で帰りますので、お酒は×!!! せいぜい、お茶を呑んでてもらいましょう。
2. Posted by はね奴   2007年09月02日 00:47
みょうがさんwrote:
>もう一人追加できるでしょうか? もしダメだと、わたしも出席不可なんです(一緒に○江に戻るもんですから)。

 おー! 一緒に帰るのはもちろん、よれ弁センセですよね?!
 高齢組4人が顔を揃えるのは、ドクターとムーミンの結婚を祝う集い以来じゃないでしょうか。

 締切りは今週いっぱい(1日夜中の12時まで)でしたので、もちろん参加大歓迎です!

 ところで、お帰りは車ですか? だとすると、アルコールは×になりますね。センセは禁酒中でしたっけ? 

 今日、塾の先生に、「おすすめの中華料理店」を紹介してもらいました。10人前後の個室もあるとのこと。さっそくチェックする予定です!
1. Posted by みょうが   2007年09月01日 15:12
ドクター歓迎ランチですが、もう一人追加できるでしょうか? もしダメだと、わたしも出席不可なんです(一緒に○江に戻るもんですから)。締め切り後にごたごた言いまして、すみません(^^;

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