空中キャンプ

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2008-06-11

原文ママ

本を読んでいると、「ママ」もしくは「原文ママ」という表記がでてくることがある。これは、ある文章を引用したいのだが、元の文章に漢字のまちがいや文法上の誤りなどがあった場合に使われる。なにかを引用する場合には、すべてオリジナルのテキスト通りに引用するのがルールだから、そうした誤りも引用側で勝手に訂正したりせずに、いったんそのまま書き写した上で、「ママ」もしくは「原文ママ」と注釈をするわけだ。ようするにこれは「まちがってるけど、そのままです」の意味である。

わたしはこれがわからなかった。はじめてこの表記を目にしたのは、きっと中学生くらいだったとおもうが、いったいなんのことかわからなかった。誰も、こんな表記があることを教えてくれなかったからである。「ママ」ってなんだ。なぜかはわからないが、引用された日本語の誤りと「ママ」との関係に気がつかなかった。だからとうぜん、これはお母さんのことなのだなとおもった。

「すごくお腹が痛たい(ママ)ので、家に帰りたかった」
「アイスクリームが食事べたい(ママ)とおもいました」
「道に迷って途法に(ママ)暮れていました」

なんて甘えん坊なんだ。どんなときもお母さん頼みじゃないか。いつになったら自立するんだろうと、読んでいるわたしが不安になるほどである。中学生のわたしは、おぞけすら感じた。こういうやつは、ロクな大人にならないし、そんな男と結婚した女性は苦労するに決まっている。そして、嫁の了解も取らずに、勝手に二世帯住宅など買う計画を立て、親と同虚しよう(ママ)などと腑抜けたことをいいだすに決まっているのである。

次に立てた仮説は、母親の代筆という案だった。引用は、いかにも著者が書いたところの文章であるように見えるが、実は締め切り等にまにあわず、母親に代筆を頼んである。ママに書いてもらったのである。原文はママが書いている。原文ママ。これも、ふざけた話である。だめだよー、自分で書かなくちゃ。なんでお母さんに書いてもらうの。わたしはそういう、他力本願はすきじゃない。しかもそれが親ってところがまたイヤだ。せめて、助けてくれる友達をさがしたり、共同作業をしてくれる仲間を見つけたりするべきではないか。

わたしは、次の世代がこのように混乱しないよう、子どもたちが読書を開始する早い時期において、この「原文ママ」についてきちんと伝えていく必要があるとおもっている。