6/19 福島原発の放射能汚染水の全容を紹介します!その1
昨日お約束したとおり、ここでは、福島原発の放射能汚染水について、全容をわかるようにまとめていきます。
TVやWebのニュースや、NHKかぶんブログなどでは満足できない方のためにまとめます。ただし、ここで書かれている情報は、基本的に東京電力と政府がプレスリリースで発表した内容に基づいています。
私は独自取材などは一切行っていませんので(東京電力には聞きたいことはいろいろとあるのですが)、発表された内容から、マスコミのニュースでは部分的にしかとりあげないために多くの人にとってわかりにくい全体像を、場合によっては他の情報源も確認しながら、わかりやすく解説するスタイルを取ってきています。
そのため、専門的な話になって数字がいっぱい出てきたりしてよくわからない、というコメントも個人的にはいただいています。ですが、かみ砕きすぎるとかえって肝心の部分を省略してしまって意味がないかな、と思い、自分なりのレベル設定でやってきました。右側の欄の下の方にFC2無料投票ボタンも設けていますので、もっとレベルを下げて説明して欲しいというご要望があれば「難しくてわからない」の欄を選んで、コメントを記入してください。そういう人が多くなればまた伝え方を考えます。今のところ、投票してくれた人は「わかりやすい」と言ってくれているので、このままのスタイルでいこうと考えています。
ただ今回は、おそらく他にこういうことをまとめているメディアがほとんどないと思いますので、この「その1」は数字をほとんど使わないで読める簡単にまとめたバージョンにしました。細かい話は知らなくてよい、というかたはこちらだけをお読みください。これだけ読んでもだいたいの基本は押さえられるはずです。この後、もっと詳細にデータをご紹介するバージョンをアップする予定ですので、より詳細な全体像を理解したい方は、この記事の後に「その2」をお読みください。
(※もし読んでみて、いいと感じた方は、ぜひツイッターやブログなどでの紹介をよろしくお願いします。)
1.なぜ放射能汚染水が生まれたのか?
まずはこの基本的な質問に答えないと、全体像を理解できないと思います。
答は簡単です。一言で言ってしまうと、「原子炉の冷却が至上命題であったため、どんなに放射能汚染水が生まれようとも、冷却水を注水し続けないといけなかったから」です。
時計の針を3ヶ月以上巻き戻してみましょう。
3/11 14:46 東日本大震災発生。
3/11 東京電力福島第一原発で、緊急事態発生。「原子力緊急事態宣言」発令。
3/12 1号機の爆発。
3/12 1号機に海水注入開始
3/13 3号機に海水注入開始
3/14 3号機の爆発
3/14 2号機に海水注入開始
3/15 2号機の爆発
3/15 4号機の爆発
3/17 空からヘリコプターで注水作業。核燃料プールへ注水開始
3/25 原子炉への注入を淡水注入に切り替え
4/3 電源を電源車から本設電源に切り替え
(多少不正確なところもあるかもしれません)
もうはるか昔の思い出のように思えますが、まだ3ヶ月しか経っていないんですよね。
原発事故発生以来、とにかく「原子炉を冷却しないといけない」ということが言われてきました。核分裂は止まっても、燃料棒が崩壊熱というものを発するために、とにかく冷やし続けないといけない、と。
(実際は、もうこの時点ではメルトダウン、あるいはメルトスルーしていたのですが、公式の発表では、この時にはまだ燃料棒は維持されており、原子炉に水を注ぎ続ける必要がある、ということでした。もしこの時点で、現状を正しく理解していたら(現時点でもまだ誰も原子炉の中を見たわけではないので正しくは理解できていませんが)、こんなにたくさんの水を注ぎ続けたり、「水棺」といわれるような措置をとろうとすることはなかったと思います。)
そして、3/12から原子炉への海水注水が始まりました(途中で淡水に切り替わりました)。燃料棒プールへの注水は、当初はあまり入っていなかったようですし、ある時から循環型になりましたので、実際には、1号機から3号機への炉心に注水し続けた水が、現在の10万トン以上の放射能汚染水の源です。もっとも、注入量全てが放射能汚染水になったわけではなく、4月18日の日本原子力学会の試算(現在はこの資料は学会のWebからなくなっている)では、たとえば毎時7トン注水しても、原子炉の冷却に使われる(水蒸気になって蒸発する)ものが4トンくらいあるだろうということなので、注入量から一定の量を引いたものが放射能汚染水になっています。
私は、4月の半ばから、「注水した後はどうなっているの?どうやって循環させているの?」と疑問に思っていました。循環型でない限り、漏れ出しているのだろうと思っていました。しかし、その時点でそのことを取り上げたマスメディアは一つとしてありませんでした。せいぜい、「今日の何号機の注水量は毎時7L」などと東京電力が発表する数字をそのまま報道するだけでした。どうしてこの人達は、注入した水の行方に興味を持たないのか、非常に不思議でした。まるでそのことに触れてはいけないかのようでした。
2.2号機からの汚染水が海に流出!
そして、4/2についに恐れていたことが起きました。2号機に注ぎ込んだ大量の汚染水がタービン建屋などを伝って海に流出したということが判明したのです。海に流れ出していることはわかったものの、その元がどこにあるのかを突き止めるのに東京電力は4日間を費やしました。その間、トレンチと呼ばれるところに新聞紙を詰めてみたり、おがくずを詰めてみたりして、結構涙ぐましい努力をした結果、4/6にはとりあえず流出が収まりました。しかし、その結果は、520トン、4700テラベクレルにも及ぶ超高濃度の汚染水の流出でした。この算出根拠については、「4/21 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その4」で詳細に解説しましたし、その後の海洋汚染については「海洋放射能汚染シリーズ」でさんざん追跡していますし、この「震災関係まとめシリーズ」でも「まとめ4:海洋放射能汚染と魚介類への影響1:基本的な内容」「5/22 まとめ5:海洋放射能汚染2:これを理解すれば魚介類への汚染を予想できる!」でまとめていますので、ここでは省略します。
また、その頃からタービン建屋の地下には水がたくさんたまっていて、それらが6万トンくらいあるということが言われるようになりました。しかし、その全体像について、マスコミでしっかりと解説してくれるところはありませんでした。東京電力の記者会見では、汚染水についてのやりとりは行われているようなのですが、いっさい突っ込んだ質問は行われなかったようです。そのため、苦労して情報を探した覚えがあります。「4/16 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その1」、「4/20 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その3」、「4/22 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その5」などにその頃の苦労の後が残っています。今になってみれば、多くのデータが発表されていて、これほど苦労することもないのですが、当時はやはり情報不足でした。
3.福島第一原発の施設を理解しましょう。(1)
これまでは言葉だけで説明できる範囲の説明をしてきました。しかし、放射能汚染水の全体像を理解するためには、原発の施設を理解しないといけません。東京電力の発表する資料は、専門家を相手にしているかのような資料で、意味不明の単語が乱発しています。たとえば、T/B、S/Cといった略号や、トレンチやらサブドレン、ピット、スクリーンといったカタカナです。解説がついているのでわかる用語もありますが、解説がないために非常に理解に苦労する用語が多いです。今回、6月始めに原子力保安院に報告書の提出を命じられたために、その報告書を丹念に読みこんでいくことで初めて全体像を理解することができるようになりました。(6/18の記者会見配付資料では、初めて用語集が配布されました。配布されたこと自体は評価すべきですが、こんな簡単なことは遅くとも広報部の体制を整えてHPが更新された4月中旬にはできたはずです。)
毎日のように放射能汚染水の情報を追いかけている私でさえこのレベルなのですから、いわゆる文系が多いマスコミの記者はおそらく誰一人として全体像を理解できていないと思います。たまに解説の記事が載っていますが、それは一部に関する説明で、全体像を理解しているとは思えません。
さて、まずはこの図をご覧ください。福島第一原発の敷地の全体像です。ここでは、MPというモニタリングポストは気にしないことにします。北側に5号機と6号機、南側に1-4号機が並んでいるのがわかると思います。それぞれに、複数の建物があるのがわかると思います。
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次に、多くのかたはもうご存じと思いますが、原子力発電の原理を確認しましょう。これは東京電力のHPから取ってきたものですが、非常にわかりやすい図です。火力発電ではボイラーで蒸気を発生させますが、原子力発電では、核反応で蒸気を発生させます。そして、蒸気を発生させた後はその蒸気のエネルギーでタービンを回し(動力エネルギー)、回したタービンから発電機を通じて発電(電気エネルギー)を行うという部分の原理は火力発電と変わりありません。原子力発電は高級な湯沸かし器だというような表現を聞いたことがあると思いますが、まさにその通りです。
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では、核反応を行う部分(原子炉)と、発生した蒸気からタービンを回して電気エネルギーを取り出す部分(タービン建屋)があることはわかりましたが、なぜ原発は海の近くにあるのでしょうか?それには、先ほどよりももう少し細かい説明が必要です。東京電力のHPの説明を流用します。
原発にもいくつかの型があります。現在主流なのは軽水炉と呼ばれるもので、原子炉の中で燃料のウランを核分裂させ、その時発生する熱によって水を蒸気に変るものです。なかでも、東京電力が用いているのは、原子炉で直接蒸気を発生させる沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれるものです。
BWRでは、原子炉圧力容器の中では蒸気の温度は280度ほどの高温になり、70~80気圧という高い圧力が発生します。この高温高圧の蒸気で直接タービンを回し、同じ軸に取り付けられた発電機を回して電気を起こします。蒸気は「復水器」で海水によって冷やされると水に戻り、再び原子炉へ送られます。(蒸気と海水は別々の管路を通っていますので、直接触れたり混ざることはありません。)
つまり、高温高圧の蒸気を使って発電するが、発電後の蒸気は水に戻す必要があるのです。そのために蒸気を冷やす必要があり、大量の海水を用いています。(実は、原子炉で発生した熱エネルギーのうち、発電に使われるのは1/3だけで、残りの2/3のエネルギーは海水を温めて戻すことに使われているのです。そのため、環境団体などが原発は周囲の海を暖めている、と主張していますが、電力会社側はそうではない、と主張してきました。)蒸気を冷やすために用いられるものがあれば何でもいいのですが、一番比熱が高くて効率がいいのが水なので、日本では原発は海の近くに建てられています。(ちなみに、フランスでも海または川の近くに原発は建てられています。)
そのため、原発事故後に沿岸海水のサンプリング地点として「取水口」とか「放水口」というものが出てきますが、これはこの海水を取り入れる場所、あるいは暖まった海水を放出する場所ということなのです。
建物でいうと、原子炉の入っている建物が「原子炉建屋」です。この中には、「原子炉」があり、その外側に「格納容器」が入っています。そして原子炉で発生した高温高圧の蒸気が隣接して建てられている「タービン建屋」に行ってタービンを回します。その蒸気は「復水器」で冷やされて水に戻り、また原子炉内に送られるのです。
ここまでの説明で、「原子炉建屋」「タービン建屋」があり、それらは蒸気や水を通す配管でつながっていること、また「タービン建屋」から海に通じる配管があることはおわかりだと思います。(ただし、海への汚染水の流出はこの経路で行ったわけではありません)ニュースでタービン建屋という言葉はよく聞いていると思いますが、こういうものだったのです。ここまで出た用語はここでしっかりと理解しておいてください。この後は説明なしに使用しますから。
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4.汚染水処理の方針
実はまだこれだけでは汚染水の全体像を理解することはできません。ですが、少し一休みして、一時期言われていた「水棺」方式についてふれておきます。
メルトダウンを東京電力が認めなかった頃(いずれはバレるのにどうしてウソをつき続けたのでしょうね?)は、1号機の格納容器は健全なので、格納容器全体に水を注ぎ込んでそれによって燃料棒を冷却するという「水棺」方式をとろうという話がありました。サプレッション・チャンバーと呼ばれる格納容器の一部が破損していることがわかっていた2号機は別として、まず1号機で下図のように水棺を試し、うまくいったら3号機も水棺にしようという予定でした。
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ところが、水棺を行うべく注水量を増やしていったのに格納容器にいつまでたっても水がたまらないということから、1号機の格納容器にも穴が空いているということがわかってきました。そこでこの水棺方式は完全に破綻しました。そこで次の案として出てきたのが原子炉建屋全体を一つの容器と考えて、建屋にたまっている水をポンプでくみ上げて原子炉に注入する方法です。これはまだ一つの方法として検討はされていますが、実は汚染水は原子炉建屋内だけで収まっていなかったことがわかってきたので、この方法は後回しになりました。
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そして、現在行われつつあるのが、原子炉建屋、タービン建屋も含めて一つの容器と考えて、その放射能汚染水の放射性物質を除去した後で再度原子炉に循環させようという計画です。このための準備を5月頃から始めていて、6/15にシステム稼働予定だったのですが、6/17に延期となり、稼働わずか5時間でいったん中断という状態になっています(6/19朝現在)。一つのシステムではなく、複数のシステムを組み合わせて使うことと、これまで誰もやったことがない高濃度の汚染水の処理ということなので、大方の予想通り、トラブルが続発しています。このように難しくてなおかつ失敗の許されない複雑なシステム構築に取り組んでいる原発の技術者達には頭が下がる思いです。
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5.現在構築中の汚染水処理システムとは
先ほどの図では、非常に簡単なシステムのように書かれていますが、実はそんなに簡単なものではありません。下図に示すように、大きく分けて4つのシステムをつなぎ合わせたものになっています。
このシステム全体の目的は、放射能汚染水の中をきれいにして淡水化し、再度原子炉に注入できる水を作り出すことと、同時に放射性物質を別途集めて処分できる形にすること、さらには汚染水の量を少しずつ(1日約700トン)減らしていくことです。
(1)油分分離装置
(2)セシウム吸着装置(キュリオン社)
(3)除染装置(アレバ社)
(4)淡水化装置
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では、一つずつ簡単に見ていきましょう。
(1)油分分離装置
これは、タービン建屋などにある放射能汚染水をある場所に集め、そこでその中に含まれる油分やスラッジ(汚泥)を除く装置のことです。これはおそらくどこの汚水処理場にでもあるような、一般的な施設ではないかと予想しています。
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(2)セシウム吸着装置(キュリオン社)
除染装置(放射性物質除去装置)には二種類を用いており、(2)ではアメリカのキュリオン社の製品(以下「キュリオン」と略)を用いています。(3)ではフランスのアレバ社の製品を用いています。キュリオンは、3種類の吸着材を充填した吸着塔を通して、いくつかの汚染物質を除去する装置で、アメリカのスリーマイル島(TMI)事故においても実績のあった手法を改良したものと紹介されています。
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3種類の吸着塔をさらに解説したのがこの図です。油分・テクネチウム除去用の吸着塔、セシウム除去用の吸着塔、ヨウ素除去用の吸着塔の3種類をつないでいます。大ざっぱに油が除かれてきた汚染水は、ここを通ることでさらに残った油が取り除かれます。そして、テクネチウム、セシウム、ヨウ素が除かれていく仕組みになっています。あとで試運転時のデータも示しますが、少なくとも低濃度であればセシウムを1/10000にするくらいの能力はあるようです。
こういう話をあまり知らない方のために二つほど補足しておきます。まず、このような装置で完全に100%除去するということはできないということです。原理的には100%除去できてもいいのですが、必ず一部は除去できずに残ります。二番目に、この装置は放射性物質だけを特異的に取り除くものではありません。放射性セシウムと通常の安定なセシウムを見分けて放射性セシウムだけを特異的に吸着させる物質というのは私の知る限りまだ開発されていません。ですから、これはそれぞれの元素の化学的性質を用いて吸着させる素材を用いているということです。セシウムは水中ではCs+という一価の陽イオンになっています。ヨウ素は水中ではI-という一価の陰イオンになっています。私は詳細は理解していませんが、セシウムを吸着させる物質とヨウ素を吸着させる物質とはおそらく化学的性質の違うものだと予想します。
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(3)除染装置(アレバ社)
これが巷でいろいろな噂のある、いわくつきの装置です。この装置の仕組みの説明文がこの下にあるのですが、はっきりいって何をしているのかわかりません。何を除去するのかも明記されていません。
以下は私が読んだ噂なので話半分に聞いて欲しいのですが、4月頃でしょうか、フランスのアレバ社の代表が日本に来日し、今回の事故処理に全面的に協力するという話がありました。その時に日本政府のトップと話をつけ、東京電力福島原発の吉田所長も知らない間にアレバ社の技術を導入するという話が決まったようです。一説によると、1トンあたり2億円。10万トンで20兆円をアレバ社に支払う契約になっているとか。どこまで本当かわかりません。アレバ社の技術は、六ヶ所村の最終処理施設でも使われているらしいのですが、批判する人によればそこの技術にも問題があるとか。あくまで噂ですけどね。
とにかく、キュリオンとは異なり、どんなメカニズムで何を除去するのかが開示されていない(ひょっとしたら東京電力にも開示されていないかもしれません)ので、どこまで効果があるシステムなのかは疑問があり、なおかつその費用に対してもよからぬ噂があるシステムであることは確かです。
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(4)淡水化装置
最後は淡水化装置です。現段階では、逆浸透膜(RO膜)によって、イオンを除去する装置だけのようですが、8月以降はRO膜に蒸留装置をつなぐようです。逆浸透膜というのは、以前「4/15 茨城県つくば市近辺の水道のデータその19:カスミの浄水器」でも紹介したように、水道水中の微量の放射性物質を除去することもできます。ここで得られた水は海に放出するのではなく、循環させるために塩分を除くことが目的なので、多少は放射性物質が残っていても仕方がないのですが、この装置にも多少の放射性物質除去能力はあります。
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これらのシステムを実際には福島原発の敷地にどのように展開するのか?というのを示したものが下図です。
これまで紹介してきた4つのシステムは緑色に塗られた場所にありますが、そのあとで、処理された水は原発の敷地を大きく回って(赤い矢印)原子炉への注水用ポンプへとつながる予定になっています。(最初に紹介した原発敷地の図面とは90度回転していて、左が北、上が海になっていることに注意してください。)こんなに膨大なシステムだったのですね。

6.もし汚染水処理システムがうまくいったら
「その1」の最後に、もしこのシステムが当初のもくろみ通りにうまく稼働してくれたらどうなるか、ということを説明しておきます。
現在約10万5000トンの放射能汚染水があります。これを順次汚染水処理システムに通していきます。
・毎日注水するのは約500トン
・汚染水処理システムで処理できるのは一日1200トン
そのうち500トンは循環してまた注水に使用されます。残った700トンの水は、残っている放射能にもよりますが、低レベルの放射能汚染水として別途プールされる予定で、この循環系から除かれる予定になっています。つまり、このシステムがうまく稼働すると、毎日700トンの汚染水が減っていくことになります。105000÷700=150日ということで、5ヶ月後の年末には汚染水がほぼなくなる計算です。そうしたら本来行いたかったタービン建屋や原子炉建屋での作業ができるようになります。そこからは、復旧に向けての作業が加速していくことでしょう。
放射能汚染水問題がなぜ重要かというと、理由は二つあります。
一つは、建屋に入りたくても高濃度の放射能汚染水があるために中に入って作業をすることができず(3月に防水の長靴を履かずにタービン建屋で作業して大量に被ばくした人がいましたよね)、復旧作業の大きな障害となっているからです。
もう一つは、後先を考えずに(というかその余裕もなく)原子炉への注水を続けた結果、放射能汚染水がかなりたまってしまい、海への流出が2回も起きてしまったからです。3回目の大量流出はもう許されません。ですが、毎日500トンずつ増え続けると、いずれはあふれて海へ流れ出します。そのタイムリミットが6月末だからです。(ここではその詳細は説明しません。知りたい方は「その2」をお読み下さい)
従って、今月中にこのシステムを安定的に稼働させることができなければ、また放射能汚染水が海に流れ出すという事態になりかねません。なんとしてもうまくいって欲しいものです。
ここまで、ほとんど数字を用いないで、多くの方にわかるように放射能汚染水の発生した経緯から現況、今後の予定までを説明してきました。つづく「その2」では、ここでは紹介しきれなかったことを中心に、もう少し詳細にこの汚染水の全貌に迫りたいと思います。これは私自身のまとめのためでもあります。
※なお「その2」を書き終わった後でこの「その1」も「その2」の内容に合わせて若干手直しするかもしれません。予めご了承ください。
まずはこの基本的な質問に答えないと、全体像を理解できないと思います。
答は簡単です。一言で言ってしまうと、「原子炉の冷却が至上命題であったため、どんなに放射能汚染水が生まれようとも、冷却水を注水し続けないといけなかったから」です。
時計の針を3ヶ月以上巻き戻してみましょう。
3/11 14:46 東日本大震災発生。
3/11 東京電力福島第一原発で、緊急事態発生。「原子力緊急事態宣言」発令。
3/12 1号機の爆発。
3/12 1号機に海水注入開始
3/13 3号機に海水注入開始
3/14 3号機の爆発
3/14 2号機に海水注入開始
3/15 2号機の爆発
3/15 4号機の爆発
3/17 空からヘリコプターで注水作業。核燃料プールへ注水開始
3/25 原子炉への注入を淡水注入に切り替え
4/3 電源を電源車から本設電源に切り替え
(多少不正確なところもあるかもしれません)
もうはるか昔の思い出のように思えますが、まだ3ヶ月しか経っていないんですよね。
原発事故発生以来、とにかく「原子炉を冷却しないといけない」ということが言われてきました。核分裂は止まっても、燃料棒が崩壊熱というものを発するために、とにかく冷やし続けないといけない、と。
(実際は、もうこの時点ではメルトダウン、あるいはメルトスルーしていたのですが、公式の発表では、この時にはまだ燃料棒は維持されており、原子炉に水を注ぎ続ける必要がある、ということでした。もしこの時点で、現状を正しく理解していたら(現時点でもまだ誰も原子炉の中を見たわけではないので正しくは理解できていませんが)、こんなにたくさんの水を注ぎ続けたり、「水棺」といわれるような措置をとろうとすることはなかったと思います。)
そして、3/12から原子炉への海水注水が始まりました(途中で淡水に切り替わりました)。燃料棒プールへの注水は、当初はあまり入っていなかったようですし、ある時から循環型になりましたので、実際には、1号機から3号機への炉心に注水し続けた水が、現在の10万トン以上の放射能汚染水の源です。もっとも、注入量全てが放射能汚染水になったわけではなく、4月18日の日本原子力学会の試算(現在はこの資料は学会のWebからなくなっている)では、たとえば毎時7トン注水しても、原子炉の冷却に使われる(水蒸気になって蒸発する)ものが4トンくらいあるだろうということなので、注入量から一定の量を引いたものが放射能汚染水になっています。
私は、4月の半ばから、「注水した後はどうなっているの?どうやって循環させているの?」と疑問に思っていました。循環型でない限り、漏れ出しているのだろうと思っていました。しかし、その時点でそのことを取り上げたマスメディアは一つとしてありませんでした。せいぜい、「今日の何号機の注水量は毎時7L」などと東京電力が発表する数字をそのまま報道するだけでした。どうしてこの人達は、注入した水の行方に興味を持たないのか、非常に不思議でした。まるでそのことに触れてはいけないかのようでした。
2.2号機からの汚染水が海に流出!
そして、4/2についに恐れていたことが起きました。2号機に注ぎ込んだ大量の汚染水がタービン建屋などを伝って海に流出したということが判明したのです。海に流れ出していることはわかったものの、その元がどこにあるのかを突き止めるのに東京電力は4日間を費やしました。その間、トレンチと呼ばれるところに新聞紙を詰めてみたり、おがくずを詰めてみたりして、結構涙ぐましい努力をした結果、4/6にはとりあえず流出が収まりました。しかし、その結果は、520トン、4700テラベクレルにも及ぶ超高濃度の汚染水の流出でした。この算出根拠については、「4/21 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その4」で詳細に解説しましたし、その後の海洋汚染については「海洋放射能汚染シリーズ」でさんざん追跡していますし、この「震災関係まとめシリーズ」でも「まとめ4:海洋放射能汚染と魚介類への影響1:基本的な内容」「5/22 まとめ5:海洋放射能汚染2:これを理解すれば魚介類への汚染を予想できる!」でまとめていますので、ここでは省略します。
また、その頃からタービン建屋の地下には水がたくさんたまっていて、それらが6万トンくらいあるということが言われるようになりました。しかし、その全体像について、マスコミでしっかりと解説してくれるところはありませんでした。東京電力の記者会見では、汚染水についてのやりとりは行われているようなのですが、いっさい突っ込んだ質問は行われなかったようです。そのため、苦労して情報を探した覚えがあります。「4/16 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その1」、「4/20 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その3」、「4/22 福島原発で注ぎ込まれた冷却水はどこへ行ったのか?その5」などにその頃の苦労の後が残っています。今になってみれば、多くのデータが発表されていて、これほど苦労することもないのですが、当時はやはり情報不足でした。
3.福島第一原発の施設を理解しましょう。(1)
これまでは言葉だけで説明できる範囲の説明をしてきました。しかし、放射能汚染水の全体像を理解するためには、原発の施設を理解しないといけません。東京電力の発表する資料は、専門家を相手にしているかのような資料で、意味不明の単語が乱発しています。たとえば、T/B、S/Cといった略号や、トレンチやらサブドレン、ピット、スクリーンといったカタカナです。解説がついているのでわかる用語もありますが、解説がないために非常に理解に苦労する用語が多いです。今回、6月始めに原子力保安院に報告書の提出を命じられたために、その報告書を丹念に読みこんでいくことで初めて全体像を理解することができるようになりました。(6/18の記者会見配付資料では、初めて用語集が配布されました。配布されたこと自体は評価すべきですが、こんな簡単なことは遅くとも広報部の体制を整えてHPが更新された4月中旬にはできたはずです。)
毎日のように放射能汚染水の情報を追いかけている私でさえこのレベルなのですから、いわゆる文系が多いマスコミの記者はおそらく誰一人として全体像を理解できていないと思います。たまに解説の記事が載っていますが、それは一部に関する説明で、全体像を理解しているとは思えません。
さて、まずはこの図をご覧ください。福島第一原発の敷地の全体像です。ここでは、MPというモニタリングポストは気にしないことにします。北側に5号機と6号機、南側に1-4号機が並んでいるのがわかると思います。それぞれに、複数の建物があるのがわかると思います。
次に、多くのかたはもうご存じと思いますが、原子力発電の原理を確認しましょう。これは東京電力のHPから取ってきたものですが、非常にわかりやすい図です。火力発電ではボイラーで蒸気を発生させますが、原子力発電では、核反応で蒸気を発生させます。そして、蒸気を発生させた後はその蒸気のエネルギーでタービンを回し(動力エネルギー)、回したタービンから発電機を通じて発電(電気エネルギー)を行うという部分の原理は火力発電と変わりありません。原子力発電は高級な湯沸かし器だというような表現を聞いたことがあると思いますが、まさにその通りです。
では、核反応を行う部分(原子炉)と、発生した蒸気からタービンを回して電気エネルギーを取り出す部分(タービン建屋)があることはわかりましたが、なぜ原発は海の近くにあるのでしょうか?それには、先ほどよりももう少し細かい説明が必要です。東京電力のHPの説明を流用します。
原発にもいくつかの型があります。現在主流なのは軽水炉と呼ばれるもので、原子炉の中で燃料のウランを核分裂させ、その時発生する熱によって水を蒸気に変るものです。なかでも、東京電力が用いているのは、原子炉で直接蒸気を発生させる沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれるものです。
BWRでは、原子炉圧力容器の中では蒸気の温度は280度ほどの高温になり、70~80気圧という高い圧力が発生します。この高温高圧の蒸気で直接タービンを回し、同じ軸に取り付けられた発電機を回して電気を起こします。蒸気は「復水器」で海水によって冷やされると水に戻り、再び原子炉へ送られます。(蒸気と海水は別々の管路を通っていますので、直接触れたり混ざることはありません。)
つまり、高温高圧の蒸気を使って発電するが、発電後の蒸気は水に戻す必要があるのです。そのために蒸気を冷やす必要があり、大量の海水を用いています。(実は、原子炉で発生した熱エネルギーのうち、発電に使われるのは1/3だけで、残りの2/3のエネルギーは海水を温めて戻すことに使われているのです。そのため、環境団体などが原発は周囲の海を暖めている、と主張していますが、電力会社側はそうではない、と主張してきました。)蒸気を冷やすために用いられるものがあれば何でもいいのですが、一番比熱が高くて効率がいいのが水なので、日本では原発は海の近くに建てられています。(ちなみに、フランスでも海または川の近くに原発は建てられています。)
そのため、原発事故後に沿岸海水のサンプリング地点として「取水口」とか「放水口」というものが出てきますが、これはこの海水を取り入れる場所、あるいは暖まった海水を放出する場所ということなのです。
建物でいうと、原子炉の入っている建物が「原子炉建屋」です。この中には、「原子炉」があり、その外側に「格納容器」が入っています。そして原子炉で発生した高温高圧の蒸気が隣接して建てられている「タービン建屋」に行ってタービンを回します。その蒸気は「復水器」で冷やされて水に戻り、また原子炉内に送られるのです。
ここまでの説明で、「原子炉建屋」「タービン建屋」があり、それらは蒸気や水を通す配管でつながっていること、また「タービン建屋」から海に通じる配管があることはおわかりだと思います。(ただし、海への汚染水の流出はこの経路で行ったわけではありません)ニュースでタービン建屋という言葉はよく聞いていると思いますが、こういうものだったのです。ここまで出た用語はここでしっかりと理解しておいてください。この後は説明なしに使用しますから。
4.汚染水処理の方針
実はまだこれだけでは汚染水の全体像を理解することはできません。ですが、少し一休みして、一時期言われていた「水棺」方式についてふれておきます。
メルトダウンを東京電力が認めなかった頃(いずれはバレるのにどうしてウソをつき続けたのでしょうね?)は、1号機の格納容器は健全なので、格納容器全体に水を注ぎ込んでそれによって燃料棒を冷却するという「水棺」方式をとろうという話がありました。サプレッション・チャンバーと呼ばれる格納容器の一部が破損していることがわかっていた2号機は別として、まず1号機で下図のように水棺を試し、うまくいったら3号機も水棺にしようという予定でした。
ところが、水棺を行うべく注水量を増やしていったのに格納容器にいつまでたっても水がたまらないということから、1号機の格納容器にも穴が空いているということがわかってきました。そこでこの水棺方式は完全に破綻しました。そこで次の案として出てきたのが原子炉建屋全体を一つの容器と考えて、建屋にたまっている水をポンプでくみ上げて原子炉に注入する方法です。これはまだ一つの方法として検討はされていますが、実は汚染水は原子炉建屋内だけで収まっていなかったことがわかってきたので、この方法は後回しになりました。
そして、現在行われつつあるのが、原子炉建屋、タービン建屋も含めて一つの容器と考えて、その放射能汚染水の放射性物質を除去した後で再度原子炉に循環させようという計画です。このための準備を5月頃から始めていて、6/15にシステム稼働予定だったのですが、6/17に延期となり、稼働わずか5時間でいったん中断という状態になっています(6/19朝現在)。一つのシステムではなく、複数のシステムを組み合わせて使うことと、これまで誰もやったことがない高濃度の汚染水の処理ということなので、大方の予想通り、トラブルが続発しています。このように難しくてなおかつ失敗の許されない複雑なシステム構築に取り組んでいる原発の技術者達には頭が下がる思いです。
5.現在構築中の汚染水処理システムとは
先ほどの図では、非常に簡単なシステムのように書かれていますが、実はそんなに簡単なものではありません。下図に示すように、大きく分けて4つのシステムをつなぎ合わせたものになっています。
このシステム全体の目的は、放射能汚染水の中をきれいにして淡水化し、再度原子炉に注入できる水を作り出すことと、同時に放射性物質を別途集めて処分できる形にすること、さらには汚染水の量を少しずつ(1日約700トン)減らしていくことです。
(1)油分分離装置
(2)セシウム吸着装置(キュリオン社)
(3)除染装置(アレバ社)
(4)淡水化装置
では、一つずつ簡単に見ていきましょう。
(1)油分分離装置
これは、タービン建屋などにある放射能汚染水をある場所に集め、そこでその中に含まれる油分やスラッジ(汚泥)を除く装置のことです。これはおそらくどこの汚水処理場にでもあるような、一般的な施設ではないかと予想しています。
(2)セシウム吸着装置(キュリオン社)
除染装置(放射性物質除去装置)には二種類を用いており、(2)ではアメリカのキュリオン社の製品(以下「キュリオン」と略)を用いています。(3)ではフランスのアレバ社の製品を用いています。キュリオンは、3種類の吸着材を充填した吸着塔を通して、いくつかの汚染物質を除去する装置で、アメリカのスリーマイル島(TMI)事故においても実績のあった手法を改良したものと紹介されています。
3種類の吸着塔をさらに解説したのがこの図です。油分・テクネチウム除去用の吸着塔、セシウム除去用の吸着塔、ヨウ素除去用の吸着塔の3種類をつないでいます。大ざっぱに油が除かれてきた汚染水は、ここを通ることでさらに残った油が取り除かれます。そして、テクネチウム、セシウム、ヨウ素が除かれていく仕組みになっています。あとで試運転時のデータも示しますが、少なくとも低濃度であればセシウムを1/10000にするくらいの能力はあるようです。
こういう話をあまり知らない方のために二つほど補足しておきます。まず、このような装置で完全に100%除去するということはできないということです。原理的には100%除去できてもいいのですが、必ず一部は除去できずに残ります。二番目に、この装置は放射性物質だけを特異的に取り除くものではありません。放射性セシウムと通常の安定なセシウムを見分けて放射性セシウムだけを特異的に吸着させる物質というのは私の知る限りまだ開発されていません。ですから、これはそれぞれの元素の化学的性質を用いて吸着させる素材を用いているということです。セシウムは水中ではCs+という一価の陽イオンになっています。ヨウ素は水中ではI-という一価の陰イオンになっています。私は詳細は理解していませんが、セシウムを吸着させる物質とヨウ素を吸着させる物質とはおそらく化学的性質の違うものだと予想します。
(3)除染装置(アレバ社)
これが巷でいろいろな噂のある、いわくつきの装置です。この装置の仕組みの説明文がこの下にあるのですが、はっきりいって何をしているのかわかりません。何を除去するのかも明記されていません。
以下は私が読んだ噂なので話半分に聞いて欲しいのですが、4月頃でしょうか、フランスのアレバ社の代表が日本に来日し、今回の事故処理に全面的に協力するという話がありました。その時に日本政府のトップと話をつけ、東京電力福島原発の吉田所長も知らない間にアレバ社の技術を導入するという話が決まったようです。一説によると、1トンあたり2億円。10万トンで20兆円をアレバ社に支払う契約になっているとか。どこまで本当かわかりません。アレバ社の技術は、六ヶ所村の最終処理施設でも使われているらしいのですが、批判する人によればそこの技術にも問題があるとか。あくまで噂ですけどね。
とにかく、キュリオンとは異なり、どんなメカニズムで何を除去するのかが開示されていない(ひょっとしたら東京電力にも開示されていないかもしれません)ので、どこまで効果があるシステムなのかは疑問があり、なおかつその費用に対してもよからぬ噂があるシステムであることは確かです。
(4)淡水化装置
最後は淡水化装置です。現段階では、逆浸透膜(RO膜)によって、イオンを除去する装置だけのようですが、8月以降はRO膜に蒸留装置をつなぐようです。逆浸透膜というのは、以前「4/15 茨城県つくば市近辺の水道のデータその19:カスミの浄水器」でも紹介したように、水道水中の微量の放射性物質を除去することもできます。ここで得られた水は海に放出するのではなく、循環させるために塩分を除くことが目的なので、多少は放射性物質が残っていても仕方がないのですが、この装置にも多少の放射性物質除去能力はあります。
これらのシステムを実際には福島原発の敷地にどのように展開するのか?というのを示したものが下図です。
これまで紹介してきた4つのシステムは緑色に塗られた場所にありますが、そのあとで、処理された水は原発の敷地を大きく回って(赤い矢印)原子炉への注水用ポンプへとつながる予定になっています。(最初に紹介した原発敷地の図面とは90度回転していて、左が北、上が海になっていることに注意してください。)こんなに膨大なシステムだったのですね。
6.もし汚染水処理システムがうまくいったら
「その1」の最後に、もしこのシステムが当初のもくろみ通りにうまく稼働してくれたらどうなるか、ということを説明しておきます。
現在約10万5000トンの放射能汚染水があります。これを順次汚染水処理システムに通していきます。
・毎日注水するのは約500トン
・汚染水処理システムで処理できるのは一日1200トン
そのうち500トンは循環してまた注水に使用されます。残った700トンの水は、残っている放射能にもよりますが、低レベルの放射能汚染水として別途プールされる予定で、この循環系から除かれる予定になっています。つまり、このシステムがうまく稼働すると、毎日700トンの汚染水が減っていくことになります。105000÷700=150日ということで、5ヶ月後の年末には汚染水がほぼなくなる計算です。そうしたら本来行いたかったタービン建屋や原子炉建屋での作業ができるようになります。そこからは、復旧に向けての作業が加速していくことでしょう。
放射能汚染水問題がなぜ重要かというと、理由は二つあります。
一つは、建屋に入りたくても高濃度の放射能汚染水があるために中に入って作業をすることができず(3月に防水の長靴を履かずにタービン建屋で作業して大量に被ばくした人がいましたよね)、復旧作業の大きな障害となっているからです。
もう一つは、後先を考えずに(というかその余裕もなく)原子炉への注水を続けた結果、放射能汚染水がかなりたまってしまい、海への流出が2回も起きてしまったからです。3回目の大量流出はもう許されません。ですが、毎日500トンずつ増え続けると、いずれはあふれて海へ流れ出します。そのタイムリミットが6月末だからです。(ここではその詳細は説明しません。知りたい方は「その2」をお読み下さい)
従って、今月中にこのシステムを安定的に稼働させることができなければ、また放射能汚染水が海に流れ出すという事態になりかねません。なんとしてもうまくいって欲しいものです。
ここまで、ほとんど数字を用いないで、多くの方にわかるように放射能汚染水の発生した経緯から現況、今後の予定までを説明してきました。つづく「その2」では、ここでは紹介しきれなかったことを中心に、もう少し詳細にこの汚染水の全貌に迫りたいと思います。これは私自身のまとめのためでもあります。
※なお「その2」を書き終わった後でこの「その1」も「その2」の内容に合わせて若干手直しするかもしれません。予めご了承ください。
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