隻眼の少年「皐月駆(さつきかける)」が、たった1人の肉親である姉を喪ったのは5年前のことだった。
 


               

 新興都市「綾女ヶ丘(あやめがおか)市」にある「虹陵館(こうりょうかん)学園」、通称「虹校(にじこう)」に通う2人。

まるで当然のように駆に寄り添い、健気に尽くすゆかだったが、無気力な駆との関係はなかなか進展しなかった。
それでも、ほんの少しずつ前に進もうとしていた2人であったが、それを嘲笑するかのように、彼らの運命は劇的な変化を起そうとしていた。

 
 


幼馴染「水奈瀬ゆか(みなせゆか)」の健気な対応のお陰か、今では何とか心の平静を取り戻してはいたが、駆の心にはどこか虚無感が漂い、未来に希望を抱けないまま怠惰な日々を送っていた。





 何の前触れもなく、2人は不気味に変貌を遂げた世界に投げ出される―――




街から人の気配が消え去り、まるで無人の廃墟を思わせる静寂に包まれる。

空は鮮血を満たした泉のような赤い色に染まり、墨を落としたような漆黒の月がかかっていた。

 
 


そんな中で駆とゆかは、自分たちの他にも「赤い夜」の世界に投げ出されている人間、仲間がいることに気付く。
あるものは陰陽道の術を駆使して敵を圧倒し、あるものは人間離れした戦闘能力をもって敵を蹴散らしていた。
「赤い夜」の世界で出会った仲間たちは、駆とゆかの常識を超えた異能者だったのである。

赤い夜に出入りしている人間の数は、駆たちを含めて6人。
彼らは赤い夜で生き残るため、協力し合うこととなる。


自分たち以外には誰もいないような荒涼とした世界に変貌を遂げる綾女ヶ丘。
黒く巨大な月の下、赤い夜の世界に駆とゆかは取り残されてしまったのだ。

街には人の代わりに、異形の存在が不気味に蠢き、成すすべのない駆とゆかは、ただ逃げる他になかった。
やがて、ある程度の時間が過ぎれば「赤い夜」の世界から現実に戻れることを知るが、「赤い夜」は時と場所を選ばず唐突に訪れる。
その繰り返しに疲れ果て、命の危険に晒される2人……。
 


だが、そんな彼らの前に明確な殺意を持って立ち塞がる6つの影
他の異形とは比べ物にならない力を秘めた6人の「黒騎士」たちを相手に、駆たちは命懸けの戦いを強いられていくのだった。

それぞれにとって戦う意味は違っていたが、学園生活をいっしょに送り、ともに戦っていくうちに、かけがえのない仲間を守るための戦いへと変化していく。

壮絶な戦いの果てにたどり着く「赤い夜」の真実を前に、駆たちはいかなる選択をするのか……







「赤い夜」の世界に侵蝕される街を舞台に、
壮絶な戦いに巻き込まれた少年少女の運命を描く大型学園伝綺、ここに開幕。






 
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