■MISAO〜淫辱忍法伝〜【物語】

日本——
織田信長が敗れ去ったあと、豊臣などの有名な武将達が
各地で競い合っていた。
武士達だけが戦っているわけではなく、忍達も誓いを
立てた城主の怨敵の為に争いあっていた。
忍の世界の中でも、小さな里に住まう焔の忍達。
その者達は若き長『操』を筆頭に、
徳川家康に誓いを立てていた。

天正18年 小田原の役——
豊臣軍と北条軍の戦いに武士だけではなく影では
忍も動き回っていた。
合戦は豊臣軍が優勢だったが、北条に誓いを立てている
下弦の里の忍達が戦場に躍り出て武士達に襲いかかり、
優勢が覆す。

戦場から離れた場所、無数の木々に覆われた所に
焔の里の忍達が隠れ、豊臣軍に組みする家康公の命令を
待っていた。
そこに一人の忍が近づいて来る。
「家康様の命を伝える」
「……」
「戦場をうろちょろと動いている下弦の里の忍を
 一人残らず抹殺しろ、とのことだ」
「……わかった」
言付けを聞いた女性はこくりと頷くと、配下の忍達に
命令を下す。
「下弦の里の忍を一人残らず抹殺する。
 皆、解ったな?」
喋っている女性の前で配下の忍達がひれ伏す。
「上那は自身の部下を指揮しろ。
 その他の者は我の命に従い下弦の忍を殺せ!
 散開っ!!」
その号令に忍達は戦場に散っていく——

戦場にいち早く駆けつけてきたのは
皆に命令を下した女性忍(くノ一)、操であった。
自身の持っている忍刀を手に持ち、
下弦の里の忍に走り寄っていく。
ザシュッ!
綺麗な音を立てて下弦の里の忍を一人、二人と殺していく。
操の身体には返り血一滴付いていない。
下弦の忍達は目の前のくノ一に襲いかかり、
彼女の身体を刀で貫く。
「へへ、やった! ……ッ!」
「どこを見ているの?」
操が声を上げた時には、男の喉に刀が刺さっており
グッと刀を捻ると男の背中を蹴り刀を抜く。
次に大男が豪腕を振るうと、かまいたちが発生し操を攻撃
するが、操には避けられその自慢の腕を切り落とされる。
残った片方の大腕を使って操に攻撃するも、
避けられ脇腹を攻撃され呼吸もままならない状態に陥る。
豪腕の男が地に倒れる。操はそのまま次の下弦の忍を襲いかかる。
刀を一振り、それで人は斬られ大量の血を流すが、
斬りつけられた男は血を吹くどころか操の素早い攻撃を
柔らかい身体で受け止める。
操はそこから連撃で刀を打ち込むも目の前の男の身体は
ゴムのように伸びており全ての連撃を柔らかい身体で受け止めていた。
目の前の男はニタリと笑うと攻撃に転じようとした瞬間
彼の身体は赤い炎に焼かれ始めた。
急に炎が巻き起こり男は何が何だか解らず、その場を
じたばたとする。
操はその男から離れると次の男が襲いかかっていく——
数十分後、操に遅れるも仲間の忍がやってくると、皆で戦い敵を倒していき、その場の敵を全滅させた。
操達が敵を倒すともう一つの部隊、上那が率いていた一団が
合流してきた。
「お見事、姉上」
「戦場では名前で呼べ、上那」
「は……操様。ひい、ふう、みい……ははは」
操の実の弟である上那、操の周りに無残に殺されている屍を見やる。
それは殺している数を数えて楽しんでいるような様子であった。
「この周辺の敵は掃討しておりますので、
 次の屍を作りに行きましょう。姉上の為に……」
「上那!! 操様に何を無礼な口をきいている」
「ちっ、うるさい小娘がきやがった」
上那に声を上げたのは蛍火と呼ばれる少女で、
いつも操の側近で上那から言わせると金魚の糞である。
険悪な関係である蛍火に背を向け、操に向き直る上那。
と、何かを察したのか操は声を上げ皆をここから離れるように
伝え、皆は一斉にその場から離れた瞬間、地面は割れ陥没していく。
1人の男が現れる。筋肉質の中年の男であった。
「さすが焔の里の長をやっているだけの事はある。
 青き死神……操。しかも俺の所の上忍がこうもあっさり
 殺されるとは……」
男の姿を焔の里の者が認識すると、その者の名を口にする。
「虎月!!」
北条氏に誓いを立てている下弦の里の長であった。
豊臣方として参戦した徳川家に従う焔の里にとって、
北条方の下弦の里は敵対勢力。

虎月を囲む上那とその他の焔の里の者。
一斉に虎月に攻撃を仕掛ける上那達。
上那達の攻撃を虎月は忍術を使い防ぐ。
虎月の忍術は『土遁』。
上那達の攻撃を地面から土の壁を作り防ぐと、
その壁から無数の棘を作り、相手に攻撃を与える。
上那は何とかかすり傷程度で避けられたが
その他の者は避けることも出来ず攻撃を食らう。

操は皆に引くように伝え、一騎打ちを仕掛ける。
操は自身の剣術を用いて攻撃を繰り広げる。
素早さに特化した攻撃に虎月も防御するだけで精一杯だった。

虎月はとっておきを出すか、と言うと身体中に岩石を纏う。火縄銃すら通さないその防御特化の鎧を纏い、しかも
拳一発でも攻撃があたれば大きな岩に叩き付けられている
ような重いものである。
操は虎月の忍術に怖じ気づくことなく攻撃を仕掛けるが
刀は刃こぼれする。
虎月は操に忍術を使うように命じる。
それは操の忍術の恐ろしさ(死体を自由に操る能力)を
耳にしているためであった。

操は少し考え深げな表情になるが、今の絶対防御の虎月を
倒すには忍術を使う以外方法がなかった。
刀をしまうと操は忍術を使う。
手から青い炎を出すと、炎の勢いは増し
巨大な鳥へと変化する。それを上空へと解き放つと、
不死鳥は急降下し死体に向かって拡散する。
死体に青い炎が付くも青い炎は死体の中に吸い込まれ
死体が急に動き出す。
下弦の里の忍と虎月に殺された焔の里の忍、その数は数十忍
であった。
意思のない死体は生前の忍術も使い虎月に襲いかかる。
虎月は強力な攻撃をしてくるも死体には意味が無い。
死体は虎月に群がり彼を抑えると青い炎を上げ燃え上がって
いく。
虎月は何とか死体を剥がそうとするが、できない。
虎月は焼かれた岩石に身体を抱かれ死んでいった。

操は自分が勝った事は当然といった様子で部下に命を下す。
「勝敗は決した。残党を駆逐し、里に戻るぞ」
上那は傷ついた身体を動かすと、冷ややかに命じる操を
苦々しげに見つめる。

その後——焔の里の忍は下弦の忍の残党を殺していく。
小田原の役は豊臣軍の勝利に終った。

小田原の役が終ってから、上那とその部下達は
独断で下弦の里に向かうと、女子供を含め好きなように殺戮を味わう。
お互いの里を襲うことは禁じている忍の掟を破った上那の
凶行を止めようと、操たちは急ぎ下弦の里に向かう。
だが、時は遅く里に着いた頃には死体の山があった。

「小田原の役はすでに終わっている。だというのに
 この無用の殺戮……お前は狂っている、上那」
「手ぬるいですよ。やるならちゃんとやらないと、正直
 俺達だってむかっ腹がおさまらない。でしょう、操様?」
日頃からの残虐非道に加え、下弦の里を非戦闘員まで含めて
皆殺しにした上那に対し、操は掟に従い断罪を決意し
操と焔の里の忍び達に刀を抜く上那とその部下達。

だが、焔の里随一の力を持つ操には太刀打ちできず皆倒れて行く。
上那は最後まで抵抗したがそれでも操には適わず、彼女は
上那の里の紋章が描かれた板を刀で斬りつけ、
罪もない下弦の里の人達を殺した報いとして忍法・不死鳥を
使い、上那は自分が殺した下弦の里の者達と青い炎に全身を燃やされ殺されてしまう。

数ヶ月後——
『羅刹』と名乗る集団が、焔の里を始めとする忍の里を
襲い始めいた。その手際は姑息かつ残虐非道なやり口で
あった。操と伊賀の服部が祝言をするとの情報を手に入れ
それを利用しようとし、彼女を捕まえ淫辱調教し傀儡にしようと動く。

 

 
■小田原の役
1590年(天正18年)豊臣秀吉が後北条氏の居城である小田原城を包囲し、領土戦略戦も行っている。豊臣側は、秀吉の養子である秀次を筆頭に徳川家、長曾我部家、武田家、石田家などが参戦し、その中には忍達も戦場に参戦していた。この戦いは豊臣軍の勝利で終っている。
 
LILITH|リリス