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【エロゲレビュー】霞外籠逗留記
霞外籠逗留記(かげろうとうりゅうき) (2008/07/25) Windows Vista 商品詳細を見る |
久々のエロゲレビューはライアーソフトさんの姉妹ブランドraiL Softのデビュー作「霞外籠逗留記」
いやあ、やっぱりライアー系列、鉄板そのもののゲームでした。
攻略順は令嬢→司書→琵琶法師→トゥルー
シナリオ A-(テキスト補正S)
素晴らしかった。
シナリオの根幹自体は特に奇をてらっているわけでもないのだが、各シナリオとも隙の無い優等生に仕上がっている。
加えて旅籠を中心とした世界観、そして何より徒然と綴られる独特のテキストが何よりのスパイスとなってシナリオの「魅せ方」に一役買っている。古風に語られる旅籠の物語は、読み物として極上の薫りを持っているだろう。
冒頭にて『遍く活字愛好家に捧ぐ』というフレーズが出るが、まさにその通り、活字を以って物語の魅力を最大限に引き出すことに成功している作品だ。
まさにこのテキストがこの作品が名作であるがゆえんであるに違いない。
青年が記憶を無くしているところから始まるが、令嬢・司書・法師の3人の物語では青年の過去にまつわることは希薄でそれぞれのヒロインを中心に据えた奇譚が繰り広げられる。
青年が生きる時代は現代であろうと予測されるが旅籠の雰囲気からして古風な感じがして更には妖とかそんなものまで出てくるがこれまたこの旅籠に合っていて違和感無く受け入れられる。
各ヒロインの業のようなものがテーマで、テキストがまたその生々しさを際立たせている。細やかな描写が読み手に余韻や思い入れを刻み込んでくる。
青年の過去と旅籠そのものについては最後のトゥルールートにて明らかにされる。
このルートについてはいろいろ意見もありましょうが終わり方はとても秀逸であったと思います。
テキストへの力の入りようはあの『神樹の館』を軽く上回りますので注意w
また、各ルートでは人を選ぶようなテーマ(※ネタバレ気味反転:カニバリズムや近親相姦)がありますので……嫌悪感を抱く人もいるかも。
ちなみに渡し守の般若面が半分だけなのも、各キャラ(青年を除く)に名前が無いのにも理由があります。
個人的には司書のシナリオに一番感嘆してしまいましたね。
キャラ A
これもテキストが一役買っています。登場人物は極めて少ないと言え、そのため各キャラが非常に細やかに描写されていてよかったです。
音楽 S
ライアー系列なのでまさに鉄板。主題歌「カスミカゲロウ」は名曲でしょう。
エンディングにボーカル曲を持ってこなかったのも正解でしたね。旅籠の雰囲気を不足なく醸し出し、テキストとの絡み方はまさに絶妙。
CG C+
「萌える」絵ではないでしょう。癖があり、多少は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、それもまたライアーらしいといえばw
テキストの堅さにマッチした雰囲気であり、これでよかったとは思います。
エロ C(テキスト補正A)
令嬢3 司書3 法師2 司書&法師(レズ)1 お手伝いさん1 (※ネタバレ反転:渡し守)2
回数はまあ、こんなもんでしょうが、濃いw
CGの差分が少なく、テキストと表示されるCGがマッチしていないことが多かったのが気がかりですが(例:前戯してるだけのはずなのにCGはすでにフェラ、悪いときはすでに挿入とかも)テキストがねちっこいというか濃い、淫靡な感じなので思ったよりもエロく感じるかもしれません。尺もかーなーり長く感じます。
システム B+
まさに「読ませよう」というのがバリバリ伝わってくるシステムでして、字の大きさ・フォント・縦書き横書き・文章配置・立ち絵配置・背景透過度など自分が読みやすいと感じる環境を作り出すことができます。
ただ、文字の大きさを「小」にした場合「これ本当に読めるのかよ!」と突っ込みたくなるくらい小さいですw
結局、「縦読み・文字大」というデフォルト設定が一番な気がしました。横書きもどこか読みにくいんですよねえ。
人それぞれなんで「こんなレイアウトどうかな?」ってのがあったら教えてもらいたいですが……
総合 A+
今のところ(※9月初頭現在)今年のエロゲで一番よかったと思いますね。
本格的な「読み物」として扱ったほうがよく、軽い気持ちでプレイできるゲームではないでしょう。
しかしながら伝奇的な物語、奇譚としては傑作といってよく、活字慣れしているのなら間違いなく気に入るでしょう。
でも売れないんだろうなあ、こういうゲーム……
生々しく、美しい物語でありました。が、最終ルートについては賛否あるかもしれません。俺は賛の方だけど……
ちなみにこれはソフマップで購入したんですが、「予約している方はディープな感じの方が多かったです。担当もディープです」という売り場担当さんのコメントが張ってあって妙に納得してましたw
以下ネタバレ有りの感想とか考察とか・令嬢について
令嬢の業は「憤怒」「激情」。ビジュアル的には一番のお気に入りですがどことなくシナリオはパンチが弱かったかなあと思います。
・司書について
司書シナリオは一番惹き付けられましたね。カニバリズムがテーマ、そして司書の業の一つでもありまして、引く人は引くだろうねえというかw
大河で飢え、人あらざるモノへとなってしまう青年の描写は恐ろしさを覚えましたが、それゆえこの物語が生々しいだけでなく美しいとさえ感じるものになったのではないでしょうか。
そうそう、司書シナリオは様々な妖怪にまつわる奇譚を集めた短編集みたいな様相を呈していますが、そういうのもよかったですね。獏のお話は面白かったですよw 令嬢とか、お手伝いさんとか……獏とかw
飛び掛る令嬢の一枚絵とか無い? 無いですよね!
・法師について
法師の業は「芸事」にまつわるもので「幼さ」「未熟さ」を纏い浮世然としたところが法師らしくもありそして精霊らしくもあり。
最後の秘曲を弾くシーンがよかったですね……結末もありきたりといえばそれまでですが、どこかのほほんとした法師っぽいというか、それでいて人間らしい感情を発露して人間っぽく生きるというのがあの二人にお似合いでよかったよかった。
・渡し守について
あんたこええよw めちゃくちゃこええよw
近親相姦がテーマになってますがこれまた重い愛です……
すべての旅籠の物語はすべて青年と渡し守=姉の創作で、その揺り篭で起こった物語を放棄し過去を追い求める青年。青年が旅籠に残らないことですべてを壊そうと試みる渡し守。
ということで今までの世界観を否定するようなシナリオなので今までのシナリオがお気に入りであれば「ちょ……」といいたくなる話でありましてw
俺はどっちかというと壊れる儚さ、その過程に孕む醜さもひっくるめて美しいと感じる性質なのでこの渡し守シナリオもありであると思いますね。
特に「霞外籠逗留記」エンド(勝手に命名w)はかなりこちらの琴線を刺激してくるいいエンディングであったと思います。
結局はこの逗留記は青年と姉の二人のために紡がれた物語であるのでそこに反発を覚える人もいるでしょうね。
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