『カナダの教訓』は、日本外交の展開の上でカナダから学ぶ点を捜したものである。
その最たるものはピアソン元首相である。
ピアソン元カナダ首相のノーベル賞受賞スピーチは今日でも我々が学ぶべきものである。
「今日の世界は、もはや、戦争によって防衛しうるものではない。戦争が政治の一つとして使用されるなら、それは全面戦争になる。平和は、力によってではなく、紛争の源を絶つことにより達成される。
残念ながら、過去きわめて容易かつ頻繁に人々を戦争に駆り立ててきた。人々も政府が平和的すぎると批判してきた。人々が理解しあえなくて、どうして平和が達成されよう。残念ながら、人々は闘いを行うに容易に意見の一致をみ、平和を求めるに。意見の一致がより難しい傾向がある。
普通は平和な人間が集団的感情の高ぶりの下で野蛮になる。我々は何故このような現象が生じるか知らなければならない。実はこの認識は自分にとって、ある日、劇的に起こったのである。
第2次世界大戦中のクリスマス・イブの晩、自分はロンドンにいた。突然空襲警報のサイレンが鳴り、音はやがて対空射撃のものに変わった。その間、爆撃の落ちる不気味な音がした。爆弾の幾つかは、自分の部屋の近くに落ちたようだった。自分はベットの中で本を読んでいたが、気を静めるため、ラジオのダイヤルを回した。『クリスマスキャロル』の美しい、平和に満ちた音色が部屋に充満した。その音は戦争の音をかく消した。そしてアナウンサーの声がした。それはドイツ語であった。『クリスマスキャロル』を流していたのは、ドイツのラジオ局であったのである。ナチの爆撃は、戦争と死を告げつつ、響き渡る。他方、平和と救済のメッセージを込めて、音楽が響く。我々は一つの国から、二つの異なった音色が出るという矛盾を解決した際、平和と戦争の問題を理解し、解決しうる立場にたてるであろう。
チャンネルに入会して、購読者になれば入会月以降の記事が読めます。
入会者特典:当月に発行された記事はチャンネル月額会員限定です。