安倍政権に東京電力・福島第1原子力発電所の事故調査の継続を強く求めたい。事故の原因や経過で未解明の部分が残る。原発事故という惨事から得た教訓を原子力の安全向上に役立てるには徹底した原因究明が必要だからだ。
福島事故について「再検証をしていきたい」。安倍晋三首相は衆院選後のテレビ番組で述べた。この発言に同意する。政府は役所から独立し、原子力の専門家を含む新たな事故調査委員会を組織し、事故原因などについて科学的な解明を進めてもらいたい。
昨年7月、政府の事故調査・検証委員会の畑村洋太郎委員長は調査報告を公表した際に「調査に限界があった」と述べた。事故を起こした原子炉建屋内は放射線が強いため、立ち入って調べることができない。ロボットなども併用し客観的な事実やデータを徹底的に洗い出す必要がある。
事故原因をめぐっては、津波が襲来する前の段階で地震動によって原発の重要機器が壊れたかどうかで異なる見解がある。事故原因が確定しないのに、既存原発に十分な安全対策を施せるのか疑問を投げかける声がある。再稼働に向け国民の不安を払拭するためにも調査継続が求められる。
国会にも調査を続ける責任がある。国会の事故調査委員会も昨年報告書をまとめたが、政府と異なる視点から福島事故の背景を分析した点は意義深かった。
報告書は事故の未解明部分の究明や事故収束プロセスの検証のため、民間の専門家からなる第三者委員会を設けて調査を続けることを求めた。これは国会自身が自らに課した宿題といえる。しっかり実行に移し政府事故調をチェックし相補う機能を果たすべきだ。
昨年12月、福島県で「原子力安全に関する福島閣僚会議」が開かれた。会議に参加した世界の原子力安全規制当局の専門家は福島事故の教訓を真摯に学び自国の原発の安全性向上につなげたいと語った。事故調査の継続は世界に対する日本の責務でもある。
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