米国で急激な財政引き締めが今月から始まる「財政の崖」が土壇場で回避された。米景気の失速や金融市場の混乱を招き、世界経済全体を危機的な状況に追い込むという最悪の事態だけは免れた。
しかし急場しのぎの対応に追われ、財政再建の包括策を先送りしたのは残念だ。与党・民主党と野党・共和党は景気動向にも配慮しながら、抜本的な税制改革と歳出削減の合意を急ぐ必要がある。
米国では大型減税の失効や強制的な歳出削減などが重なり、6000億ドル(約52兆円)規模の財政引き締めを迫られる恐れがあった。法的な手続きは年明けにずれ込んだが、与野党が危機回避に動いたことをひとまず歓迎したい。
焦点の所得税減税については、年収45万ドル以下の世帯に限って延長し、それ以外の世帯は打ち切ることになった。給与税(社会保障税)の減税延長は見送り、歳出の強制削減は2カ月間凍結する。
米国では家計の債務返済や住宅市場の調整が進み、景気回復の基盤が固まり始めている。今回の措置で富裕層を中心とする個人の負担は増えるが、米経済に強い負荷がかかるのを避けるためには、やむを得ない選択といえるだろう。市場もおおむね好感している。
だが強制的な歳出削減の凍結は単なる時間稼ぎにすぎない。与野党が財政再建の包括策で合意できない限り、2カ月後には国防費などの機械的なカットが始まる。
米国の連邦政府が抱える債務は、法定上限の16.4兆ドルにほぼ到達した。こちらも2カ月以内に引き上げの合意に達しなければ、債務不履行の危険にさらされる。
社会保障などの歳出削減に慎重な民主党と、個人の増税に強く反発する共和党の対立は根深い。それでも不毛な政争に明け暮れ、米国の経済政策を機能不全に追い込むことは許されない。
米国の経済課題は成長と財政再建の両立に尽きる。短期的には財政緊縮のペースを調節しながら、景気の下支えに万全を期すべきだ。同時に増税と歳出削減のバランスがとれた中長期の財政再建策を示し、年1兆ドルを超える財政赤字を削減しなければならない。
まもなく2期目に入るオバマ大統領は、今後10年間で4兆ドルの財政赤字を削減する方針を表明した。与野党は党派の対立を乗り越え、その詰めを急ぐべきだ。改選後の新議会に「決められない政治」を持ち越してはならない。
オバマ
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