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inspire Windows95版 18禁 ノヴェルティックAVG
一押し:リディエル
 ディアボリックルーンの頃からずっと追いかけている、神宮寺りおさん原画のゲームです。

 ある夏の日、リディエルとイーリスの姉弟は叔父からの手紙を受け取ります。叔父は、随分昔に辺境の古城を買い取り、そこに留まり文章を書く仕事をしています。たまたま、イーリスが遠方の寄宿舎から帰省していた事もあり、姉弟は叔父の住む古城へと旅行にいく事にしました。古城について彼らを出迎えてくれたのは、叔父ではなく優麗な雰囲気を持つ美しい女性、サリアと、その幼い侍女のフィアナでした。サリアの薦めもあり、リディエル達姉弟は古城に留まり、叔父の帰りを待つことにしたのです。

 ゲームを始めると、彼らの滞在する古城(館)が画面に大きく表示されます。コレの中の、任意の部屋をクリックするとその部屋での出来事を見ることができます。と言っても、大きな館に四人しか人がいないのですから、彼らの居る場所を見つけるのは大変です。このゲームでは、人の居る場所にはシンボルが表示され、そこしか見ることができなくなっています。そして、その見た出来事に応じて次の出来事が発生し、場合によっては一枚絵の表示されるイベントが起こります。この起こすイベントの積み重ねによってエンディングが決定されます。ゲームは、5章構成になっていて、章が始まる毎にプロローグが挿入されます。
 普段の会話シーンは、画面の右に登場人物の立ちグラフィックが表示され、画面左の上下に会話が表示されるという形になります。普通のゲームだと、こういうシーンで不意に選択が発生したりしますが、このゲームはそういうことは一切なく物語に没頭することができます。また、1枚絵の表示されるイベントシーンでも選択は発生しません。こちらは画面いっぱいに文章が表示されますが、サウンドノベル等とは違い、1ページがまとめて表示され、それを読むという形になります。

 時間という概念はなく、イベントを見る事で物語が進んでいくので、イベントがほとんど見られなくてつまらない、等という事はありません。また、最近のゲームとしては非常に珍しく、プレイヤーに等しい、もしくは近い存在の「主人公」という存在がありません。プレイヤーはあくまで「カメラ」の様な存在となり、物語を横から見ているだけなのです。おかげで最近ありがちな「オレはこんな事を言いたいんじゃない」というジレンマを感じることがありません。
 前述したプロローグから、いわゆる「館」ものの様な雰囲気を感じられるかもしれませんが、リディエル・イーリス姉弟は自分の意志で館に留まっていたり、彼らが淫欲に溺れていくように見えてもその心には倒錯していない愛情があったりと、他のいわゆる館物とは違っています。エンディングも基本的には、幸せを掴み館を出るものばかりですし。

 神宮寺りおさん原画によるCGは、丸っこく可愛いのですがそれでいて淫媚さを感じさせる、このゲームの雰囲気にぴったりです。立ちグラフィックも表情毎にパターンが用意されているわけではないのですが、服装が何点か用意されていて、それぞれキャラのイメージに合っていて良い感じです。
 音楽も、音自体はGM対応の為か弱いのですが、曲はやはりこのゲームの雰囲気を盛り上げてくれています。
 文章は、プレイヤーが第三者に徹している為か、小説を読んでいるような感じです。誤変換や、変な文章というのもあまり感じさせられませんでした。

 ここまではベタ誉めですが、もちろん不満点もあります。
 一部のシナリオスクリプトがバグっているのか、シナリオがループすることがあったり、ゲーム自体のボリュームが少なめ(フルインストール46MBでCD不要)だったり、エンディングの条件がわかりづらく、考えなしにプレイしていると同じエンディングになりがちな所、等などです。

 私にとっては、まさしく「隠れた名作」という感じです。掛け値なしに「絵が気に入ったら『買い』だ」と言えます。とはいっても、感動的な何かがある訳でなく、あくまで私の感じたままの感想ですので、万人にお薦めできる訳ではありませんが。
 1回のプレイ時間は、2時間程度で、スキップしまくりだと30分もあれば終わります。私は一応全部のエンディング/CGを見ました。

Septem Charm まじかるカナン

テリオス SMC-980121〜2 Windows95/98版 18禁 アドベンチャー
一押し:柊ちはや
 魔法少女もので、ヒロインがカードキャプターさくらの木之本桜に似ていたり、友達に大道寺知世っぽいお嬢様がいたり、お供の動物がピカチュウっぽかったり。とにかくパロディの匂いがする作品です。

 ナツキは、魔法の国の住人。ある時、厳重に保管されていた突然変異の「種」が何者かによって人間界に持ち出されます。突然変異種の為、まさしく何が起こるかわからないという事態を重く見た魔法の国の女王ツユハは、ナツキとその兄のハヅキに種の回収任務を与えたのでした。兄とは違い、魔力もそれほど強くないナツキは、人間界で遭遇した「種」との戦いでぼろぼろにされてしまい、命からがら逃げ出します。道端で意識を失った彼が次に見たものは……柊ちはやという少女だったのです。

 システムはごく普通のアドベンチャーです。行き先を選択したり感情を選択することで、物語は流れていきます。また、特定のシナリオをクリアする事で、次のプレイ時に選択肢が増え、それを的確に選択する事でサブシナリオに分岐する事もあります。
 メッセージスキップ機能や、読み返し機能、オートセーブ機能などもあり、システムはなかなか親切です。できれば、マウス右クリックでウィンドウ消去(ボタンで選択できる)や、メッセージスキップがもっと速ければ良かったのですが。
 男性の声も含めて、フルボイスです。このゲームは、ディスク2枚組なのですが2枚目をまるごと音声で使っています。それでも足りなかったのか、男性の声は女性の声の半分のサンプリングレートになったりしています。

 絵は、「猟奇の檻」シリーズや「慟哭……そして」等で、有名な横田守さんです。塗りも丁寧で、原画の雰囲気も損ねることなく良い仕上がりだと思います。
 オープニングムービーも、原画どおりの絵が良く動いています。ただ、エンディングも含めて歌(曲)がいまいちですが。あと、最後の方にブロックノイズが出ているのもちょっと悲しいですね。
 音楽は、それほど印象に残りませんでしたが、音声は良いです。キャラのイメージ通りのキャスティングです。

 シナリオは、「ちはや編(メイン)」「さやか編」「真冬編」「美由利編」「那津樹編」、それにタイトル下の「おまけ」メニューから見られる「おまけシナリオA」と「おまけシナリオB」があります。後者二つは、選択は全くなく読むだけのシナリオですが、専用のCGが用意されていたりします。
 最初に言ってしまうと、メインシナリオよりサブシナリオ、おまけシナリオ等の方が面白かったです。メインシナリオでは、ナツキとちはやの「好き合う心の絆の強さ」みたいなものがキーとなっているのですが、どうもちはやがどうしてナツキを好きになったのか、ナツキがどうしてちはやを好きになったのかの描写が足りないような気がします。ちはや以外を好きになってしまう「真冬編」「美由利編」は、それなりの描写が用意されていて、違和感を感じることなく読めたのですが。「さやか編」「那津樹編」はどちらかというと、コミカルなノリでそれはそれで面白かったです。
 また、買う前はパロディっぽいものを想像していたのですが、中身は戦う魔法少女物の王道という感じでした。え〜んじぇる!!同様、見かけはともかく中身にパロディ要素はほとんど感じられません。エロがなければ、そのまま魔法少女ものとしてTVアニメ化できるかもしれません。

 初回版には、32ビットモードで起動できないとか、サウンドブラスター64AWEGOLDを使うと音声が正常に再生されないなどのバグがありましたが、それらはすでに修正パッチが用意されています。個人的には、カレントでなくなった瞬間に強制終了してしまう事もどうにかしてほしいのですが、それは起動時に余計なものを全て終了させる、という方向で対処する事にします。

 あと個人的には、タイトルに関されている言葉が本編でほとんど出てこないのが気になりました。魔法少女物で「まじかるカナン」なら、ヒロインが変身した姿が「まじかるカナン」なのかと思いますが、ちはやの変身後の姿は「カーマイン」です。辛うじて、一部のシナリオで「カナン」という言葉が出てきましたが、「Septem Charm」にいたってはセーブ時に見られるシーンのタイトルで使われているだけでした。普通のゲームならそれほど気にしないのですが、魔法少女ものならそのへんまでこだわってほしかった所です。

 1プレイは音声をちゃんと聞いて進めると5時間くらい。私は音声は気に入っていたのですが、プレイ時間の都合で途中から音声オフにして進めていました。スキップしまくりなら30分かからないくらいでしょうか。一応、すべてのエンディングとCGを見ました。

カスタム隷奴

Kiss Windows95/98版 18禁 調教シミュレーション
一押し:なし
 「インターネット対応」という18禁ゲームでは初(?)のキャッチコピーに惹かれてチェックしていた作品です。

 主人公は、ある女学園の理事長となりそこに通う生徒を調教します。それなりの導入ストーリーがあるのですが、このゲームのウリの一つは「カスタム」ですので、その先のストーリーと言うものは一切存在しません。主人公が赴任する女学園の名前から調教する生徒のプロフィールまで、細かくいろいろなところがカスタマイズできます。
 具体的には、ヘアスタイル(6種類)、ヘアカラー(HSVで指定)、アクセサリカラー(HSVで指定)、アイカラー(HSVで指定)、スタイル(3種類)、ボディカラー(3種類)、眼鏡(あり/なし)、学年(3種類)、性格(5種類)、プロフィール(自由設定)、経験(4種類)となります。ここの設定により調教するキャラの外観や反応、初期パラメタが決定されます。なお、ここで上げた各種の数は99年2月6日時点のものです。

 ゲームは、月曜から木曜に通常調教を行ない、金曜に特別調教をします。これを4週繰り返して調教終了となります。女の子には、肉欲、理性、被虐、変態、技術、気品、忠誠、信頼、アナルの9個のパラメタが設定されています。これらを快楽、奉仕、被虐、恥辱、陵辱、アナル、媚薬といった系列のコマンドで調教をしていきます。調教開始時は、各系等共に一つのコマンドしか使えないのですが、その系統のコマンドをくり返し実行することで、その系統のより高度な調教コマンドが利用できるようになります。また、同時に使える調教コマンド数には限りがあり、状況に応じて取捨選択せねばなりません。
 このゲームの独特なコマンドとして「躾」コマンドがあります。このコマンドでは、調教開始時と調教終了時のセリフと主人公の呼び方を自由に設定できます。セリフについては、考えるのが面倒な人の為に、3パターンのプリセットも用意されています。
 調教される女の子たちには称号が設定されています。これは、彼女達の現在のパラメタに応じたものになっています。それとは別に主人公との関係というものもあります。こちらは、調教時の反応に大きな影響を与えます。
 1ヶ月の調教が終わると彼女達のその後が語られます。もちろん、調教後ですから娼婦になっていたりAV女優になっていたりとろくな結末はないのですが、それによって調教の完成具合を知ることができます。
 それが終わると、次の女の子のエディットかもしくはすでにデータベースに登録してある女の子を選んで次の調教に進む、とそういう感じでエンドレスに進行します。

 CGの枚数は調教毎に1枚ずつで、体形毎に違うという風になっています。少なくないとは思うのですが、できれば性格が変われば絵も変わるとか、調教が進行すれば同じコマンドでもCGが変わるとか、そういう部分にも力を入れてほしかったところです。メッセージは調教の進行具合によってそれなりのパターン数があるようなのですが。
 また、調教といっても、彼女達は結構すんなり順応します。既存の調教ものを想像してこれを買うとちょっと外されるかもしれません。

 ウリのインターネット対応部分ですが、まず調教報告書という画面がゲーム中に逐次見られるのですがこれをJPEGファイルとして出力することができます。同じく、調教終了後にメインメニューの下の「資料室」というメニューで見られる「Gai's Data」(Gal's Dataの間違いでしょうか?)という最終結果報告画面をJPEG出力できます。さらに、調教終了後のデータが「zed_調教済み」というフォルダに保存されています(サンプル)ので、これを他人に渡せばその人に調教した奴隷を見せることができます。このデータは交換を考えてか、1Kbyte弱の非常に小さなサイズになっています。
 また、アップデータというプログラムがついていまして、これを使えばKissのサイトに接続して最新のデータをダウンロードすることができます。ダウンロードできるデータは、バグ修正パッチなどもありますが、新たな髪型プラグインや性格プラグインなどもあります。99年2月現在の雑誌広告を見るとウェーブのかかったロングヘアのデータも追加予定みたいです。

 絵が少ないのと、どういうカスタムでスタートしても展開がほとんど変わらないことのおかげで、余り長所が活かせていないような気がします。また、インターネットからのデータのダウンロードですが、例えば発売直後に追加されたシャギーロングのデータは、体形ごとに7MBもあるような巨大データでした。しかも、アップデータはデータの破損をチェックしておらず、データが流れてこなくなったらダウンロード終了と判断するようで、回線状況の悪い人にはまともにダウンロードが出来ないのではないでしょうか。
 あと、個人的に気になるのがマウスカーソルの自動移動です。こういう機能を普段から利用しておられる方は、有り難いのかもしれませんが、私は思わぬボタンを押してしまうことが多々ありました。普段のメッセージ送り時の、マウスボタン押し下げのレスポンスの悪さも影響していると思います。

 さておき、実は数値の上げ下げだけを見て考えると結構面白い育成シミュレーションです。ゲームの結果としてではなく、純粋にパラメタだけを見て評価を行なう「隷奴ベンチ」というメニューがあり、これで高得点を出せるように調教を進めるのはなかなか難しいです。

 1プレイの時間は、スキップしまくりで30分〜1時間程度です。新しい試みをしたはいいのですが「インターネット対応」をうたって、データ追加をウリにした以上いつまでサポートをしてくれるのかが心配です。これが長続きするのなら評価するのですが、どうなることでしょう。

flowers〜ココロノハナ〜

CRAFTWORK side.b Windows95/98版 18禁 恋愛アドベンチャーノベル
一押し:稲葉環
 暗めのゲームを出していたCRAFTWORKの明るいゲーム用ブランドでの作品です。

 広瀬隆成(名前変更可)は、私立南学園に通う高校2年生。私立南学園は、彼が入学する前の年まで女子校だった学園で、現在も男子生徒の数は非常に少ない。2年になりクラス替えがあり、彼はクラスでたった一人の男子生徒となってしまった。しかも、この世で一番嫌いな女の子「三船柚子」とも同じクラスになってしまい、彼は途方に暮れていた。が、クラスには去年から密かに憧れていた「千秋美野里」もいることがわかって大喜び。と思いきや、最初のホームルームで彼女は壇上に立ち「父親の仕事の都合で5月には沖縄に引っ越す」事を発表したのだった。
 5月になって、彼の隣にいるのは千秋美野里なのでしょうか。それとも違う誰かなのでしょうか。

 ゲームはノベル形式、とりわけTo Heartと似たシステムになっています。通常のイベントは、画面に背景と立ちCGが表示され、その上に画面一杯に文字が表示されるという形式です。もちろん、立ちCGは感情に合わせて色々変化します。これらのシーンで所々、選択肢が織り込まれますが、2択なのでそれほど難しくはありません。平日の昼休みと放課後は、学校内やその他の場所に移動するメニューが表示されます。ここで移動する先によって、会えるヒロインが変わります。こういう移動シーンがあると、女の子を探して奔走せねばならないのか、と考えてしまいますが、このゲームの場合は、ほとんどのヒロイン達はここに行けば会えるという場所が設定されていますし、そうでないヒロインは重要なイベントは大体自動発生します。

 このゲームの特殊な所は、主人公の名前は変更可能ですが、変更すると音声なしになる点でしょうか。名前をデフォルトのまま使用すると、メインのヒロイン達はフルボイスになるのですが、名前を変更すると一切音声が無くなります。これは、ヒロイン達のセリフの中に含まれている「広瀬君」「広瀬隆成」「隆成君」などの部分を削除して不自然にすることを避けたためでしょうか。ともかく、音声のノリは非常によくなっています。
 また、各ヒロイン達はかなり個性的に設定されています。音声のノリの良さと相乗して、かなり楽しめました。

 個人的に気に入ったのは、色的なデザインです。タイトルの「flowers」にちなんで、ヒロイン達にはイメージカラーと花が設定されているのですが、それらのポップな色を格好良く配置して画面を構成しています。時間帯が切り替わるごとにアイキャッチが挿入されるのですが、これのシンプルさと色デザインのバランスの良さはかなりお気に入りです。
 各ヒロイン達のテーマ曲もいい感じです。特別なイベントで使われる曲は曲数が少ない為に、使いまわしが多く、いまいちシーンに合っていないと感じることが多かったのですが、曲自体はそれぞれ良くできていると感じました。テーマ曲も独特のメロディラインで、ハーモニーが気持ちよく、軽快なテンポで印象深いです。

 システムは、安定して動作していますし、メッセージスキップ、ゲーム中のロード、中断、その他コンフィグなど、必要な機能は網羅されています。シナリオも音楽もCGも全部水準以上の出来だと思います。
 絵とCGの塗りがちょっと癖があると思いますが、これが気にならないのならお薦めできるゲームです。ただ、気を付けないといけないのは、このゲームは恋愛モノというより、コメディ色が強いことでしょうか。
 一つだけ残念なところを挙げるとすると、前半は移動シーンがあるものの、ほとんどの行き先には誰もいないことですね。最初のプレイのときはあまりにも誰にも会えない為に、かなり焦ってしまいましたから。

 1プレイの時間はスキップしなければ4〜6時間程度です。
 一押しは、評判の志村渚先生ではなく「あやよさん」似の稲葉環ちゃんとしました。渚先生のシナリオは面白かったのですが、最後の方が最初のノリと随分違っていて、しかもいまいち気に入らない展開をした為、一押し降格としました。

RISE

RISE Windows95/98版 18禁 アドベンチャー+育成シミュレーション
一押し:ななこ
 藤岡タマヱさんによる、コミックっぽい絵柄に興味をもってチェックしていた作品です。

 主人公は、幼い頃に倫敦橋教授に出会い、ロボット工学を志すも夢破れ、二流大学に入り、平凡な生活を送っている青年。主人公は、久々に倫敦橋教授に呼ばれ1体のロボットを預かる事になる。それは教授の開発した「超AI」を搭載したロボット。そのロボットを1ヶ月預かり、人の心を学ばせて欲しいとの事。そして、それが立派に達成された暁には、教授の助手にしてもらえるという。
 倫敦橋教授がロボットを連れてくる日、教授の代わりに一人の女の子がやってくる。どう見ても人間にしかみえない彼女はなんと教授の作った「超AI」を搭載したロボットだという。一生懸命ながら、ドジで経験不足な彼女は、失敗ばかり。しかし、より人間に近いロボットになる為に、彼女は頑張る。人間らしい心、すなわち「人を愛する心」を知る為に。

 ゲームは、ノベル形式のアドベンチャーパートと、ななこROOMという育成パートに別れます。
 アドベンチャーパートは、非常にシンプルで、午前、午後にそれぞれ「家にいる」か「学校に行く」かを選択するだけです。そして、選んだ先で更に選択肢が出る事はありません。ある意味、非常に珍しいシステムと言えます。また、2回目以降のプレイで、すでに読んだ事のあるシナリオは「あらすじモード」で概要を読むことができます。純粋なスキップ機能はありませんが、この機能のおかげでくり返しプレイも苦になりません。さらに、この機能の場合単純にスキップする場合に比べて、まさに「あらすじ」を把握して進められますので、スキップしながらでも物語を楽しむことができます。
 ななこROOMでの育成は、ビジュアル性が重視され非常に楽しく仕上がっています。ななこROOMの画面はゲームからのキャプチャ、ウェブへの掲載が認められていますので、ここにサンプルを置いておきます。これは、すでに随分買い物をしてしまって、部屋の物が入れ代わった状態ですが。
 「ななこの頭の中を具体的に絵にするとこんな感じ」という、ななこROOMの画面ですが、ここでななこはDVDを見たり、本を読んだりして成長します。また、物語をななこからの視点で回想できる絵日記が読めたり、ななこの能力を確認するベンチマークを測定する事が出来ます。
 ななこROOMに配置するアイテムや育成に使うDVDは、電気街で買い物する事で増やすことができます。ここで売られている物は、ななこのパーツ(CPU/マザーボード/メモリ/オプションボード)、DVDソフト、その他のアイテムに分類されます。ななこのパーツは、ななこの基本能力を上昇させる物だったり、ななこの消費電力を減少させたりする効果があります。DVDは、成長率を少しずつ上昇させる効果があります。また、それぞれ実際に見られるソフトの内容(シナリオやCG、ミニゲームなど)が設定されていて、ななこと一緒に見ることができます。その他のアイテムは、ななこROOMに配置するオブジェクトだったり、背景データだったりします。これらの購入できるアイテムは、多種多様で合計150種類以上あります。その他のアイテムは、育成に関係のないアイテムばかりですが、例えば「ぶーぶーカー」や「ふよふよUFO」だと、ななこがそれに乗って遊んだりとか、「拳銃」や「鉄砲」だと弾を撃っていろいろなアイテムに弾痕を付けたりとか、それぞれ面白い効果があるのでコレクションも楽しいです。
 ななこROOMでの育成が終わったら、一日のまとめ画面になります。ここでは、今日一日の出来事とななこROOMでの育成が評価され、ななこが成長するという流れになります。
 これを1週間繰り返すと、土曜日に倫敦橋教授による、ななこの能力のチェックが行われます。この時の評価によって、貰えるななこの育成資金が増減します。
 それを繰り返し、1ヶ月後に主人公の通う大学で行われるミスコンでななこを優勝させる事がゲームの目的となります。このミスコンも、ななこROOM同様チビキャラが細かくアニメーションして、見ていて楽しいものになっています。

 このゲームの特徴は、1ゲーム中に同じメッセージを読まされる事がほとんどない事だと思います。ゲーム内の時間で、9月1日から1ヶ月間ゲームは続きますが、この間毎日毎日、全く違うエピソードが語られます。
 シナリオの内容も、宣伝文句の一つ「ストーリーは切ないだけでなく、笑いあり涙ありの方がよい」に裏切らず、まさしく笑いあり涙あり、それでいて切なさも感じさせてくれました。

 CGは、藤岡タマヱさんの原画により、随分幼く見えるのですが、可愛く、表情豊かに描かれています。立ちCGは、パターンによってばらつきを感じました。藤岡タマヱさんのページの裏話を読んでいると、どうも一部の立ちCGは彼女はタッチしていないようです。ななこROOMでのSDキャラなども、可愛くポップに描かれていて良いです。それ以外の画面の背景だとか、ボタンだとかもきちんとデザインされています。

 音声は、一部のイベントのみありです。音声が付いているのはななこ、涼子、あやめ、ともみの4人のみです。キャスティングは文句なしです。ただ、やはり一部イベントのみ声ありというのが残念ですね。

 キャッチコピーに「俺とななこは、人間とロボットだから正式に一緒になることはできない……けど、そんな事は関係ないよ」というのがあります。私は、これを見て最初は「開き直ってるやばいゲームかな」とか思ったのです。しかし、実際は開き直るどころか「関係ないよ」という言葉を正当化するだけの主人公のななこへの思い入れを感じることができました。
 また、「人を愛する心」を知るという事についてですが、これも陳腐なシナリオだとシナリオライターの自己中心的な恋愛観が語られたりして、感情移入を削がれることがあります。このゲームの場合は、わかりやすい事例を挙げて説明し、且つ主人公がわからないことは「わからない」と言えるキャラなおかげで、とても好感の持てるシナリオになっています。

 ……と、誉めっぱなしのレビューですが、私はそれだけ気に入りました。PCのXゲームをプレイしていて、心が暖まる思いをしたのはこれが初めてではないでしょうか。
 やはりキャッチコピーなのですが「ななこはあなたに届きたい」というのがありました。……届きました。少なくとも私のところには。
 4人のヒロインそれぞれのエンディングを見ました。初回プレイは、6〜7時間程度、2回目以降はあらすじモードでスキップしていけるので、4時間程度で終了できます。

アイサの涙

ピンパイ KSGW70149 Windows95/98版 18禁 ドラマチックファンタジーアドベンチャーゲーム
一押し:ララ
 RISE同様、ウェブ上で知ってお気に入りの絵柄の絵描さんである、りつべさんの原画を注目していたゲームです。

 夏休みに気の会う仲間6人と、南海の孤島カリロタ島へ遊びに来た主人公。そこで彼は「ララ」という一人の少女に出会う。彼女が唄う島の伝承を綴った歌には、思いもかけない秘密が隠されていた。人魚伝説の眠る南の島を舞台に、一つの歌をキーワードにしたマルチストーリーが展開する。あなたが遭遇するのはホラーかアドベンチャーか?そして、その向こうに隠された第三の物語で、この島の真実の姿を知る事になるでしょう。(マニュアルのあらすじより抜粋)

 システムは、MYSTタイプといいましょうか、画面上の物をクリックする事でそれを調べたり取ったり、画面の端のほうをクリックする事でそちらへ移動したりする形式です。
 前述のあらすじを見ていただくとわかるように、序盤の行動で物語は3つに分岐します。そのうち、3つ目のファンタジー編は、ホラー編とアドベンチャー編を一度ずつクリアする事で進むことができるようになります。それぞれのパート毎にヒロインが二人ずつ設定されています。誰がヒロインになるかはやはり序盤で分岐するようになっていますが、同じストーリー上でヒロインが変わってもそれほど物語には影響しません。

 館の内外を探索して、アイテムを見つけ、それを使って先に進むという感じで進行するのですが、難易度は低いです。物語のあらすじが変わっても、基本的にアイテムの入手法が変わらないというのも簡単な原因の一つです。また、時間制限などもありません。
 一部、選択肢や迂闊な行動でゲームオーバーになってしまう箇所もありますが、それも慎重にプレイしていればまず回避できます。

 絵は、立ちCGの塗りがいまいちです。また、ヒロイン達は公表されているサイズからは想像がつかないくらい胸が強調されて描かれており、そのせいで立ちCGのバランスが悪く感じられる部分もあります。イベントCGは、強調された胸もそれなりのバランスにおさめられており、非常に美しいです。

 私は、最初にホラー編からプレイする事になったのですが、このシナリオの内容と館の雰囲気がばっちり合っていまして、とてもドキドキしながらプレイすることができました。他のシナリオもツボを押さえた作りになっています。特に最後のシナリオとなるファンタジー編は、「ファンタジー」という言葉からは外れているような気がしないでもないですが、繭シナリオに進んでもララシナリオに進んでもそれなりの達成感を味わうことができました。

 残念なのは、やはりシナリオごとの差違が少ない点でしょうか。これに関係するのですが、同じような流れをくり返しプレイせねばならないのに、メッセージスキップの機能がないことも辛いです。また、ヒロインが変わってもあらすじが変わらないのももったいないです。個人的には、6人のヒロインそれぞれのストーリーがあれば良かったんですが。

 1プレイの時間は音声を聞かなければ2〜3時間程度、慣れれば1時間程度で終わらせることができます。
 個人的には、お手軽に「ゲーム」を遊んだ気になれるので結構気に入りました。

微熱情熱

CAT'S PRO Windows95/98版 18禁 アドベンチャー
一押し:町田悦子
 5年以上前だったと思いますが、昔、このCAT'S PROといブランド名で数本の98DOS版のゲームが発売されていました。その後全く音沙汰がなかったのですが、突然この「微熱情熱」でブランドが復活しました。過去に遊んだゲームはそれぞれそれなりの出来でしたし、今作の「純情使用人アドベンチャー」というコピーも興味をひいたので、購入してみました。

 主人公は、相棒のオカメインコの三四郎と共に放浪する若者。ある時、飲み屋で意気投合したオッサンから美人姉妹の住む屋敷で使用人を募集しているという話を聞く。そして、再び一緒に飲む事を約束してオッサンと別れる。しかし、主人公は二度とオッサンに会うことはなかった。あの後、色街に女を買いにいったオッサンはそのまま心臓発作で亡くなったというのだ。主人公は、オッサンの死に悲しみというより漢の生きざまを感じ、オッサンの遺言とも言える言葉に従う為、美人姉妹の住む屋敷に向かった。

 ゲーム期間は、主人公の試用期間の3ヶ月中、後ろ2ヶ月分です。
 システムは、ポイント消費移動型アドベンチャーとでもいいましょうか。主人公に行動力が設定されていて、移動するごとにポイントを消費、移動先で誰かに遭遇して会話をしたりすると更に消費する、というのを繰り返し、ポイントが0になるとその時間帯が終了する、というシステムです。移動以外にも、真面目に仕事をしたり、何もせずに過ごしたりも出来ます。1日は午前と午後にわかれていて、午後の始めにポイントが回復します。但し、午前中を何もせずに過ごした場合は、午前の行動ポイントを午後に引き継ぐことができます。また、午後を何もせずに過ごす事で、その日の夜にイベントが起こったりする事もあります。
 主人公は、屋敷の使用人ですから当然仕事をしないといけません。屋敷内を移動してヒロイン達と会話するのは当り前ですが仕事ではないので、あんまりサボっていると「屋敷荒廃度」というポイントがたまってしまいます。これが3つたまって、それでもまだ仕事をしないと主人公はクビにされて、ゲームオーバーとなります。また、ヒロイン達には主人公に対する不満度が設定されており、これがあまりにも悪化すると、屋敷荒廃度がたまっていなくてもクビにされてしまうことがあります。ヒロイン達の不満度は、屋敷内で会ったり一緒に仕事したりする事、Hする事などで回復します。また、ヒロインやタイミングによっては、不満度を高める事で自発的に夜這いに来たりしますので、時には放っておく事も必要です。
 こういうパターンのゲームはタイムテーブルとか、そういうのが綿密に設定されていて結構難しいことが多いのですが、このゲームの場合、イベントは発生日時というのは設定されておらず、基本的に「前のイベントが起ったら次はここに行けばイベントが起こる」という形式になっています。ですので、攻略情報などがなくても、とにかく屋敷内をしらみつぶしに歩いていけば誰でもクリアできます。

 ヒロインは、5人姉妹と先輩使用人一人の合計6人ですが、最近のゲームには珍しくオンリープレイするには全く不向きです。屋敷のどこに誰が居る、なんていう傾向はほとんど無いので、行動はしらみつぶしになります。そうすると当然ながら全員のイベントがどんどん進行してしまうわけです。しかし、このゲームのヒロイン達は自分以外が主人公を好きな事を受け入れてくれますし、それぞれの魅力も認めあっているので、二股三股がバレていても終始明るく進行してしまいます。
 そんな展開なので期待した「純情」な物語は味わえませんでしたが、パッケージ裏のコピー「いつだってノーテンキ いつだってラブ&ピース そう、いきたいね!」、こちらはちゃんと表現できているのではないかと思います。
 ちなみに、こういう展開で最後は一番好感度が高いヒロインと自動的にくっつく、だと激怒ものなのですが、このゲームは最後はエンディングを迎えられるヒロインの中から自分で選択することができます。

 音楽は、定評のあるPANDAさんによるもので、かなり良いです。
 CGは、ちょっと立ちCGで色づかいが気持ち悪いかな、と思いますが、イベントCGは綺麗です。
 操作系はいまいち良くないです。屋敷内の移動を選択肢で行なうのですが、完全に外れた所にカーソルを置いておくと一番上の選択肢にフォーカスが合っていて、ここでマウスを動かさずにクリックしてしまうと一番上の選択肢を選んでしまいます。また、次の選択肢までスキップする機能があるのですが、これが速すぎて途中で止められません。まあ、スキップを押しておいて好きな所で止めさせてくれ、というのはかなり虫のいい要求だとは思うのですが、私は必要に感じたので書いておきます。ただ、この点はマウスの左ボタンを押し下げつづける事でかなり速くメッセージが送られるので、これで代用することはできました。
 また、ロード時にちょっとシステムが固まるのですが、このときにマウスボタンをクリックすると、それがロード直後に解釈されるのです。このおかげで、ロード直後に意図しない選択肢を選んでしまい、再びロードしなくてはならない、ということが結構ありました。

 と、まあシステム的には弱い所もありますが、概合格だと思いますし、キャラクタ、音楽は気に入りました。
 1ゲームのプレイ時間はスキップなしで4時間くらいです。
 エンディングは、6人のヒロイン達それぞれのものと「全員」のものを見て全てカバーしたと思うのですが、キャラごとのCGにまだ結構抜けがありますので、もう少しプレイするかもしれません。

クランクアップが待てなくて

Seal Staff Windows95/98版 18禁 ノベル
一押し:倉本夏樹
 えっちのススメが良かったので、チェックしていたシールスタッフの新作です。

 主人公は、富士見学園3年生、映画研究会の部員です。富士見学園映画研究会では、伝統的に3年生がメインスタッフとなって発表用の映画を撮ることになっています。そして、学園生活最後の夏休み、とうとう主人公がメインスタッフになるチャンスがやってきました。主人公が選ぶのは監督でしょうか、カメラマンでしょうか。それとも俳優でしょうか。同じ3年の女子部員、羽石優香の書いた幼馴染の男女のラブストーリーを脚本に、他校からスカウトされた演劇部員の山岸美里をヒロインに撮影は進行していきます。主人公と彼女達の関係はどう変わっていくのでしょうか。また、主人公の幼馴染、倉本夏樹との関係は?

 このゲームは、パッケージの裏に『面倒な「コマンド選び」はほとんどなし、「漫画を読む感覚」で作品世界をお楽しみいただけます。』と書かれている様に、選択肢はほとんどありません。具体的には、携わる役職を選択する2択が2ヶ所あるだけです。よって、ゲームというのはちょっと違うと思いますが、最近はシナリオライターの思った通りに選択しないとまともな物語にならないゲームというのも存在していますので、こういうアプローチもありだと思います。
 システムは、大体前作の流用ですが、パワーアップしている部分もあります。まず、メッセージスキップ機能が付きました。さらに、読み返し機能が付きました。これがかなり強力な機能で、読み返しというより「巻き戻し」機能ですね。要するに、戻すと文章だけでなくCGまでどんどん戻っていくのです。また、これを応用した前の選択肢まで巻き戻し、という機能も付いてます。まあ、どちらもほとんど選択肢のないこのゲームだから出来た機能だといえるかもしれませんが、CG込みで巻き戻しができるのはちょっと新鮮でした。
 セーブは前作同様、コメントが入力できて20ヶ所可能ですが、はっきりいって必要ありません。
 クリア後のおまけも、CGモード、Hシーン再生、後日談モードと、充分です。この後日談モードは、本編でエンディングを迎えたヒロインとの後日談でして、要するに本編より濃いHシーンが楽しめる、と言うものです。実は、こちらのほうが本編より選択肢が多かったりしますが、それだけCGの枚数も多いです。

 絵は前作と同レベル、と言いたい所ですが前作に比べると弱いです。1枚絵は大差ないのですが、立ちCGでの各キャラの体格とかに違和感を感じます。あと、男性キャラをもうちょっと頑張って欲しい所です。
 音楽は、前作同様著作権フリーの音楽集からのピックアップですが、曲自体はいい感じです。

 ゲームとして考えるとダメですが、ストーリーだけを見ると、かなり良いです。前作同様幼馴染の微妙な感情の機微を描いています。文章も丁寧で、読んでいて苦になりません。映研の活動上、時折専門用語が出て来たりしますが、それらを逐一解説してくれていたりして、親切です。

 不満点は、やっぱりボリューム不足ですかね。私はこのくらいでもいいと思うのですが、普通このボリュームでこの値段だと高いと言われると思います。また、実は前作でも指摘しているセーブに時間のかかる点は、直っていないのですが、セーブ自体をほとんどしないゲームなのでこれは無視してもいいでしょう。

 はっきりいって前作以上にお手軽になっています。本編が一人のシナリオ毎に30分〜1時間程度、後日談が一人のシナリオごとに30分程度ですから。
 シールスタッフが、幼馴染を表現するのがうまいのは理解できたので、これをベースにもっと大きなものを作って欲しい所ですね。

終末の過ごし方

アボガドパワーズ Windows95/98版 18禁 恋愛アドベンチャー
一押し:大村いろは
 意欲的なテーマと、小池江里加さんの淡い色彩の美しいイラストで構成されたゲームです。

    次の週末に人類は滅亡だ。
 国家非常事態宣言が発令されてから7週間が過ぎた。いよいよ次の週末、人類はその小さな歴史を閉じる。死を選ぶ者、生にしがみつく者、来世を祈る者…。しかし、絶望は終焉ではない。週末までの7日間。人々に残された黄昏の刻がある。そしてそんな中、平凡な日常を生きる主人公たちの姿があった。果たして彼等には見つけられるのだろうか。終末の   過ごし方が。(パッケージ裏より)

 システムは、いわゆるノベル形式です。選択肢は少なく、露骨に各ヒロインの物語に分岐しますので、ゲームとして難しい、ということは全くありません。
 Xゲームとしては珍しく、MMX命令に対応していて、画面切り換えに特殊効果を使っています。もちろん、MMX非対応マシンでもそれなりに動くようにできているらしいですが。
 また、メーカーのページに公開されている修正差分を導入する事で、メッセージスキップ機能や読み返し機能が使えるようになります。

 シナリオは独特の形式で進行します。同じ時系列にある、複数のシーンを順番に見せていく、という形です。こういう形式ですので、主人公は存在しないほうがしっくりくるのですが、「ゲーム」として成立させる為か、脈絡のない所に選択肢を置かない為か、ともかく「耕野知裕」という主人公が設定されています。また、同時に進行しているシナリオとして松原重久と瑞沢千絵子の物語、竹岡多弘と大塚留希の物語があります。一応、全員面識はあるようですが、どうも同時に見せるわりにはシナリオ同士の繋がりが感じられません。その為、同時に見せるメリットは感じられず、デメリット(一つのシナリオへの集中ができない)ばかりを感じる構成になってしまっています。
 前述した通り、選択肢を選ぶキャラとして耕野知裕がいるわけですが、彼のシナリオのみヒロインが4人設定されていて選択によってそれぞれのヒロインとのエンディングに分岐します。

 設定は良いです。
 音楽も良いです。
 CGも良いです。
 文章の切れも良いです。
 でも、全体をまとめる構成がいまいちです。シナリオ自体も短くて物足りないです。

 申し訳ないのですが、ちょっとだけネタバレな感想を書かせてもらいます。
 パッケージには耕野知裕と宮森香織が二人で大きく描かれていますし、シナリオも「自分をさらけ出す事に臆病だった為に自然消滅した、でもお互い相手のことがまだ気になっている」という設定がある為に彼女との物語がメインなのか、と思わされます。確かにそれなりに盛り上がるのですが、実は彼女の物語は「終末」じゃなくても表現できるのです。シナリオの流れはこうです。きっかけがあって疎遠だった二人が再び接近する。そして二人は結ばれる。しかし結ばれた翌日二人は引き離される。主人公は彼女を取り戻す為に走る、昔言えなかった一言を伝える為に。このゲームの場合、「きっかけ」が「終末」だっただけで、これが大学での再会とか、そういうのでも全く構わないわけですよ。ちょっと拍子抜けしてしまいました。
 一押しにしてある大村いろはのシナリオ、これが実はメインではないか、と思っています。パッケージ裏の視点の中心に書かれたコピー、「私がこの世界でする   最後の約束。」これは、彼女のシナリオのクライマックスに配置されたセリフなんです。このセリフの前後のシーン、ここがこのゲームで一番「終末」への悲しさを表現していたように感じます。
 ここまでネタバレ。

 一言でこの作品を表現すると「もったいない」になるでしょうか。良いパーツが揃っているのに、まとめ方が適切でなかった為に、個々のパーツが力を発揮できていないです。
 初回のプレイ時間は2時間程度です。以降、一度読んだ文章をスキップして進行させると1回30分といった所でしょうか。こうやって、一人のヒロインのシナリオだけ追いかけると、一人分のシナリオが短い事をひしひしと感じます。もうちょっと練り込めば、心に響く作品になったと思うのですが……
 あと、このゲーム、マニュアルのキャラ紹介が非常に詳しいです。詳しすぎてネタバレの粋に達していますので、マニュアルを読まずにプレイするのをお薦めします。

My friends

Euphony Production Windows95/98版 18禁 恋愛シミュレーション仕立てアドベンチャー
一押し:工藤真弓
 主人公、神谷徹はこの春に大学に入学した大学1年生。はじめての夏休み前、新しい生活をいつもの仲間達と過ごしていた彼のもとに一通の手紙が届く。差出人は幼い頃この街を離れた懐かしい従姉。内容は、彼女の経営する事になるペンションに、最初の客として遊びに来て欲しいとの事。徹は、現在同居している従姉の奈津美に言われ、女の子の友達をペンションに誘う。リゾート地での、女の子たちとの数日間を経て、徹と彼女達の関係はどういう風に変わるだろうか。

 ゲーム期間は、旅行に出かけるまでの数日と、旅行に出かけてからの数日にわかれます。
 旅行に出かけるまでの数日は、主人公は昼間は大学へ、夜はバイトに出かけます。この日常の中で、ヒロインたちと会話し、所々出現する2〜3択の選択肢を選ぶ事で、ヒロインたちの好感度が上下します。
 旅行に出かけてからも、基本的には同じです。違うのは行動の節目で、誰と行動を共にするのかを選択できるようになる事です。
 素直に選択肢や同行者を選んでいけば自然にクリアできるようになっていますので、難易度は低いです。ただ、全てのCGを見ようと思うと少し苦労するかもしれません。

 このゲームの特徴は、画面構成でしょうか。画面右には、立派な樹を描いた栞の様な時間帯表示部があります。この部分は常にゆるやかにアニメーションを続けていて、且つ現在の天候なども反映されています。通常のシーンは、背景に人物の立ちCGが重ねられる、おなじみの手法で表現されているのですが、このゲームの場合、背景のCGがキャンバスに色鉛筆で描かれたような表現がされています。さらに、CG部分と他の部分を訳隔てる部分が綺麗にぼかされています。これらの点により、かなり「コンピュータらしくない」画面を作っています。

 音関連も頑張っています。BGMは、基本的にMIDIによる演奏なのですが、音源の規格に合わせてGS,XG,GMの三種類のデータを用意しています。また、フルインストールすると、添付している音楽CDを使ってCD-DAによるBGM演奏も可能になります。また、オープニング、エンディング曲はボーカル付です。それだけでなく、シナリオ中にヒロインたちがカラオケに興じるシーンがあるのですが、ここで前述した2曲以外の歌も披露されます。ちなみに、うち1曲は他社(ブランド?)のゲームで使われた曲でして、初めて聞いた時はちょっと驚きました。でも、パッケージの中には、そのゲームの原画集などの広告が含まれていましたので、きっと繋がりがあるんでしょうね。
 また、ボーカル曲があるということは、当然ヒロインたちは声付です。声質も演技も文句なし、ただちょっとキャラごとの音声ボリュームのバランスが悪いかな、という気はしました。

 シナリオは、可もなく不可もなく、と言ったところでしょうか。飛び抜けて良い部分は感じられませんでしたが、プレイ中は不満を感じませんでした。
 キャラも、幼馴染あり、病弱なお嬢様あり、憧れのお姉さんありで、それなりに揃ってはいるのですが、どうも突出する部分がありません。

 逆に不満点は、いくつか挙げられます。
 まず「コンピュータらしくない」画面づくりをしていると前述しましたが、画面に表示される文章がすごくコンピュータくさいフォントなのです。ここまで画面にこったのなら、もう少しこの辺も気を使って欲しかったところです。
 また、画面に凝った為か、処理が異様に重たく感じます。

 雰囲気はいいのですが、ちょっとあっさり目の作品です。1プレイの時間は5時間程度でしょうか。スキップしながらだと、2時間程度でしょう。
 お薦めというには、長所が見当たりませんが、これといった短所も無いと思いますので、絵が気に入って、明るい恋愛物がプレイしたいと思ったならプレイしてみてもいいんじゃないでしょうか。

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