音声や視覚、脳波などを検知する様々なUIが登場しつつあるが、それらを統合して利用する「マルチモーダル」という手法も注目されている。あるときは脳波で情報を入力し、あるときは聴覚で情報を出力するなど、ユーザーがどんな状態でも「自然な形で機器とつながることができる技術」である。
テレビやカーナビ、携帯電話やパソコンを含めた日本の電子機器市場は12年で20兆円。経済産業省の試算で国内の自動車産業全体の市場規模は約47兆円。介護・福祉ロボットも将来の有望産業であり、こうした分野にBMIなど最先端のUIが利用されれば、さらに市場拡大が期待できる。
総務省は「脳の仕組みを活かしたイノベーション創成型研究開発」の調査・実験に取り組んでいる。その応用範囲は幅広い。
「耳にかけたセンサーで脳の活動を調べ、行き先を瞬時に探すカーナビ」「思い浮かんだ言葉をメール文に変える携帯電話」「寒いと感じたら動く空調機」「見たいときだけうつるテレビ」「子どもの理解度を確かめながら教える教師ロボット」……。これら夢のような技術を産学官が連携し、20年までに実用化することを目標に掲げている。
無限に広がるUIの近未来。理化学研究所で脳信号処理研究を担当するアンジェイ・チホツキ氏の研究室はその一端を担っている。脳波を使って人がロボットや車いすを制御する技術を応用し、2人の脳をロボット経由で対話させたり、同期させたりする研究に乗り出している。
■脳科学研究予算、米は日本の20倍
「ロボット制御」という枠を超え、音楽を聴いたり、映画を見たりしながら感情のやりとりをして人間同士の相互理解を深めることにつなげたい考えだ。チホツキ氏は「BMI技術はゲームや教育、芸術など様々な分野に広がっていく」と予想する。
しかし日本の脳科学研究は決して層が厚いわけではない。米国は研究人員の数が日本の8倍、予算は20倍で、がん研究やヒトゲノムに匹敵する規模だ。中国、韓国、シンガポールなどアジア各国でも同分野の研究は加速している。グーグルやマイクロソフトだけでなく、自動車、娯楽、日用品の業界に至るまで、「世界中のグローバル企業で脳科学の応用を研究していないところはない」といわれるほどだ。
「人」とパソコンなどの「機械」を隔てていた距離を一気に縮める究極のUIを目指して、産学官の動きはますます活発になりそうだ。
(電子報道部 杉原梓)
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