「和食を食べたい」「寝がえりを打ちたい」……。こうした500種類以上のメッセージを脳波で伝えることができる「ニューロコミュニケーター」と呼ぶ装置も、製品化の一歩手前の段階まできた。ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者など身体が自由に動かせない人の生活支援を目指したもので、産業技術総合研究所が開発に取り組んでいる。
小型の脳波計を装着した患者がパソコンの画面に表示される「飲食する」「移動する」などの中から選ぶと、家族や介護者に意志を伝達できる。産総研ニューロテクノロジー研究グループの長谷川良平氏は「1~2年以内に協力企業からの製品化を目指している。家庭に体重計、体温計などがあるように身近な装置として健康器具・生活支援の道具として使ってもらいたい」と期待する。この装置が実用化されれば、全国の数万~数十万人の患者が家族や介護者と意思疎通できるようになるという。
脳の血流変化に伴う物理現象を測定する技術としては、すでにfMRI(機能的磁気共鳴画像装置)やNIRS(近赤外分光計測)、脳波計(EEG)、脳磁図(MEG)などがある。
■超高齢化社会をにらみ産業応用が活発に
元来、米国では軍事用途としてBMIの技術開発が進められてきた。ATRの川人氏によると、頭で考えただけでコンピューターのカーソルやロボットを動かす「テレキネシス」や1万キロメートル離れた場所にいるロボットを動かす「テレポーテーション」、被験者の主観的な認知を読み取る「テレパシー」、脳の活動から映像を取り出す「念写」は、BMI技術で実現しているという。
川人氏は産業応用を期待する一方、「戦争や犯罪に使ってはいけない、本人の意志に反して心を読んだりしてはいけないなどの倫理的な規範が重要」と警告する。脳から直接情報を取ったり、遠隔で機器を自在に操ったりなど、BMI技術の普及にはリスクも伴うが、超高齢化を迎えようとする日本をはじめ医療分野向けなど産業への応用が活発になっている。
2年前には産学協同の研究組織「応用脳科学コンソーシアム」が発足。今では日産自動車や東芝、NEC、ヤマハ発動機、パナソニックなどが参加を表明し、参画企業数は40社近くまで増加している。
脳情報を検出して自動で操縦できる自動車や、考えただけで通信可能なモバイル機器、運転中の覚醒度をフィードバックする装置など、「日本メーカーは技術開発に本格的に力を入れ始めた」(同コンソーシアム事務局)という。計測分野では、日立製作所や島津、浜松ホトニクスが医療機器分野などのBMIの研究蓄積を生かして用途拡大を目指す。
睡眠中に「暑くて寝苦しい」と感じたらエアコンの冷房が効き始め、起床直後に「和食が食べたい」と思ったら、ロボットがご飯と味噌汁を用意してくれる――。近い将来、こんなSF映画のような生活が現実のものにな…続き (1/2)
各種サービスの説明をご覧ください。
・三菱電機、海外拠点の環境担当者を現地で育成
・大光電機、LEDダウンライトを3~4割値下げ
・川重、印で二輪車自社生産 バジャジへの委託切り替え
・アサヒビール、量販店向け営業体制を刷新
・湾岸・郊外、攻める大手 野村不動産や住友不動産…続き