■漂泊歌人の政治的腕力
第86首「嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな」(西行法師、嘆けと月が物思いをさせるのか、そうではないのに月のせいにして恨めしくも涙がこぼれる)
百人一首の歌詠みたちは世知辛い人生とは無縁そうにみえるが、決してそうではない。和歌の力を武器にして現実政治に立ち向かったケースもあった。例えば西行法師だ。
「和歌が政治の一部だった時代」と分析するのは作家の嵐山光三郎氏。詠み込められた言葉の一つ一つが微妙な政治的意味を伝えているため、俊敏な政治家は和歌にも通じていなければならない。「西行と清盛」(中央公論新社)では遁世(とんせい)・漂泊の歌人とされる西行の政治的な側面を描いた。
江戸時代に松尾芭蕉が慕って「おくの細道」を著したことで西行の脱俗イメージは決定的になった。
しかし現実は少し違う。当時の政界で最高の実力者だった平清盛にかけあって高野山への課税を免除させたり、東大寺再建の寄付金集めでは鎌倉の源頼朝、奥州の藤原秀衡と渡り合った。
西行は対立しているどの勢力とも交渉することができた。元北面の武士という軍事エリート出身の人脈と歌人としての力量がそれを可能にさせたといえる。西行には頼朝にもらった銀の猫をすぐに遊んでいる子どもたちに与えた逸話がある。西行の無欲さを示すエピソードだが、嵐山氏は「頼朝に『なめるなよ』という気持ちだったのではないか」と推理する。西行の政治的な実像は和歌の力で覆い隠されている。
嵐山光三郎、百人一首、清少納言、河野幸夫、五味文彦、アンソロジー、ミステリー、新古今和歌集
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