政治【正論】「安全運転」だけの内閣でいいか 評論家、拓殖大学大学院教授・遠藤浩一+(2/4ページ)(2012.12.27 03:08

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【正論】
「安全運転」だけの内閣でいいか 評論家、拓殖大学大学院教授・遠藤浩一

2012.12.27 03:08 (2/4ページ)正論

 ところが政治の現場では、目的が手段に呑(の)み込まれてしまうということが往々にして起こる。かつての自民党は、政権の維持という手段がいつしか目的と化し堕落していった。それは安倍氏自身、折節に指摘してきたところである。

 昭和30年に結党した自由民主党の党是は、経済成長・社会保障から国防・安全保障にいたる総合的な国家再建であり、自主憲法制定が中心課題だった。安倍氏の祖父・岸信介首相はその主導者だったが、安保改定で精力の大半を使い果たし、昭和35年、志半ばにして退陣する。

 ≪「古い自民」の轍踏んだ民主≫

 後継した池田勇人首相は「経済政策しかないじゃないか、所得倍増でいくんだ」(伊藤昌哉『池田勇人』)と、経済成長にナショナル・インタレストを特化させる路線を歩み、その後の自民党は政権維持のために分配を駆使する政党と化す。その遺伝子は自民党を経て民主党に継承された。3年3カ月にわたる民主党政権の惨めな失敗は、畢竟「古い自民党」の失敗にほかならなかったといえる。

 池田氏は、「自分の内閣では憲法改正を議論しない」と明言した最初の自民党総裁だが、政治指導者がそんなことを口走れば、豊かさを手にしつつあった国民が憲法改正に対して投げやりになるのも当然である。政治家の発言は良くも悪くも国民を動かす。そして、豊かさの獲得には、国家的課題への切迫感を麻痺(まひ)させるという副作用があった。「古い自民党」の最大の罪はこうした副作用を等閑に付し、しかも党是たる自主憲法制定から逃げてきたところにある。

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