それはそうだ。俺は今日、莉子を置いて朝早くに学校に訪れたのだ。朝の弱い俺がまさか莉子よりも早く学校行っていることを知ったら、莉子の奴はきっと慌てふためくだろう。
「いったいどうしちゃったの?孝四郎くん?頭になにか悪いものでもできちゃった?」
とか、言ってきそうだ。そう言ったのなら俺は迷わず、莉子のつくる飯の中に頭に悪いモノが入っていたに違いないと返すだろう。
違うって。
莉子には悪いけど、俺は朝早く起きて美凪の作る朝食を交わす約束をしていたのだ。
「じゃあ、今から美味しい朝食を作ります」
「おう」
「腕によりをかけて作っちゃいます」
「軽くで良いぞ」
今のやる気に満ち溢れている美凪に釘を打っておかないと、朝からビーフシチューやら、おせち料理やらを作りそうな気がした。
朝なんだから簡単に食べられるモノにしてほしいものだ。
「…………残念」
シュンとしていた。言わなければ、美凪はなにを作ろうとしていたのだろうか。
「それじゃあ、準備しますね」
「おう」
美凪がゴソゴソと準備に取りかかっていた。
場所は例の仮眠室。
朝早くの部活など開いたことのない料理部(仮)。宿直の先生がいるのだろうと思っていたのだが、そこに先生の姿はどこにもなかった。
先生がサボっているのである。いつか校長先生に告げ口してやろう。
「まぁ、そのおかげでこうして俺たちが朝から部活に励めるんだけどな」
朝からの新鮮な空気での部活動だ。日差しも入りとても気持ちが良い日である。
こんないい日に美凪の作るて料理が食えるなんて、最高の一日を予感させてくれる日であった。
「で、いったい何を食べさせてくれるんだろう、美凪は?」
ちゃぶ台で座っていた俺に美凪が顔を出した。美凪がエプロンをつけて戻ってきたのである。
……エプロン以外は何も身に付けていなかった。
「ブーーーー!!!!」
後ろに倒れ込む俺。「お待たせしました」と、美凪は普段と変わらない声で言った。
「あの……これは、いったい……」
「……。裸エプロン、好き?」
恥ずかしそうに小声で言う美凪。実際恥ずかしい格好をしているんだから仕方がない。こんなところ、誰かに見られたらどうするんだろうか。
「……。好きだよ」
ウソも付けない俺も俺だ。
「じゃあ、この格好で料理を作りますから」
「マジか?」
一回頷いて美凪は料理を作り始めた。
手際良く材料を包丁で切る音が響き、火にかけて野菜を炒める音が聞こえ始める。
そんな小気味良い音を聞きながら、後ろから美凪の裸エプロンを見つめる俺。背中は丸見えであり、後ろで蝶々結びで縛ったエプロンの紐が可愛らしい。美凪が横に移動するときに脇から見える乳房の膨らみが、朝から俺のムスコを悶々とさせる。
と、いうより、朝から美凪の料理をちゃぶ台前で待っているのだ。その姿はまるで新婚したての妻の料理を待つ夫そのものというシチュエーションであった。
「ムフフ……」
いかん、ヘンな声をあげてしまった。美凪にも聞こえてしまったみたいで、俺の方を振り向いていた。
「孝四郎さん……」
甘えた声で非難する美凪。お尻を突き出しているせいか、先程まで見えなかった美凪のおま〇こまで俺にはバッチリ見ることが出来た。
い、イカン……!まったくもってケシカラン――!
飯を食うと言うはずだったのに、今の俺はもう我慢の限界だ。
「待て」と言っても聞かないぞ、美凪。俺は忠犬ではなく、狼だ!
お腹が空いた俺だけど、食欲よりも性欲を満たしてくれ!
「美凪――!」
わるいな、美凪。
俺が食べたいのは、美凪の作る手料理ではなく、美凪そのものだ――。
続きを読む
「美凪!」
起き上がることのできないほどの体力を使っていた美凪が、孝四郎の声に気付いて顔を上げた。
「孝四郎さん……っ!来ないでください!!」
美凪が孝四郎を拒絶する。
「なんで、こんなことになっているのかわからないけど……おねがいします、孝四郎さん……こないで、ください……」
自分の身を震わせながら、寒気のする身体、真っ青になる表情に美凪は例えいまここに訪ねたのが莉子であったとしても拒絶を示すであろう。
それほど、美凪に与えた影響は大きかった。
「こんな……汚れたカラダ……さわらないで……わたし…、わたし……!」
失敗だった、と孝四郎は思った。
本当は隙を窺って美凪の身体から抜け出そうとして、行人を殴り飛ばす算段だった。
しかし、孝四郎は美凪の身体から抜け出るのが遅れた。美凪の身体で、自分の欲求に逆らえずに逸物に貫かれる快感を味わいたかったと思ってしまったから。
中に出すつもりもなかった。ましてや、美凪の身体から弾き飛ばされるほどの快感が襲ってくるとは夢にも思ってなかった。
おかげで美凪本人が意識を起こしてしまい、現場を目撃してしまった。挙句の果てに絶頂の瞬間を味あわせてしまった。
座りこむ美凪の秘部から、行人の精液がドロドロと零れ続ける。
穢されてしまった身体に耐えられず、美凪は孝四郎の前で泣いてしまっていた。
(……俺が……泣かせた……)
ひどい罪悪感。
美凪が守ってきた貞操を奪ってしまった。憑依できる『飲み薬』は麻薬だ。
美凪が大切なモノを失ったと同時に、俺もまた大切なモノを失ったのだ。
行人も自分のために快感を味わっていたが、一番、快感に飲み込まれてしまっていたのは……孝四郎本人だった。
美凪のため、――――それは自分のため。
その結果の代償が美凪の涙であるとわかっていたのにも関わらず。
「俺は……馬鹿だ…」
「ぅぐ……えっぐ……」
「こうやって、実際見てみないと分からないんだ。本人が傷付くかどうか……。本当は、美凪なら少しぐらい耐えれるんじゃないかとか、大目に見てくれるとか考えて、自分の都合のいいように考えちまうんだ。……でも実際、美凪は泣いている。泣かせたことをこの目で見て、ようやく気付くんだ」
「ぅ……ぅぁぁっ……ぐすっ」
「考えが足りないよな……浅はかだよな、俺って……。ぜんぶ、うまくいくことを考えて、間違えたらどうしようとかは考えなくて……、いま、美凪にどう接していいのか分かんねえよ……」
「ぅぅ………」
「ごめん……本当にごめんな……美凪っ!おれっ――!」
泣いている美凪の顔を隠すように、孝四郎は美凪を抱いた。誰にも美凪の顔を見せないように、身体についた穢れを誰の目にも触れさせないようにいた。
美凪が抱き返してくることはない。孝四郎がつくった罪を許してほしいと、孝四郎自身も思わない。しかし、少しでも美凪に対して償いが出来ればそれでいいと、美凪に対して出来るだけ優しく抱いてあげた。
髪の毛から香るにおいも、制服についたシミも、すべてを多い包むように孝四郎は被さった。
「…………こうしろうさん」
「……えっ?」
「誰のために……?……わたしのために……泣いてくれているんですか?」
美凪の顔が目の前にあった。瞳に涙を浮かべた美凪の目が、孝四郎を確かに見つめていた。
「ああ。あたりまえじゃないか」
孝四郎は力強くうなずいた。
「美凪の泣き顔を見たくはないから。美凪の失ったモノを、俺も供に取り返そう。美凪が悲しんで立ち止まってしまったなら、一緒に立ち止まって傍にいるよ」
美凪と同じように泣き顔を見せる孝四郎。二人同じ表情で、互いを想い求めていた。
孝四郎の想いを知り、美凪の中には悲しみ以外の別の感情が込み上げてきた。涙がさらに溢れて零れ、美凪の表情が赤く染まっていた。
「大好きです……孝四郎さん……」
美凪がポツリとつぶやく。美凪本人から聞く本心。今まで堰き止めていた感情をぶち壊して、美凪の溢れた思いが零れ出した。
「こんな、穢れた私ですが……孝四郎さんは、私を許してくれますか?」
謙虚な告白。美凪は孝四郎の罪ですら取りこんで汚れキャラになることを受け入れた。
しかし、それができるのは孝四郎の後ろ盾を信じているからだ。孝四郎が美凪の傍にいてくれるという安心感を、美凪が信じて告白してきてくれたのだ。
本当はすごく怖いと言うことは、孝四郎が誰よりも知っている。告白とは、そういうものだから。
今度は孝四郎の番だ。
目に見えない不安を吹き飛ばすために、美凪の想いに応えよう――
「愛してる、美凪」
言葉で分かりあえるだけの眼差しで見つめ、美凪に対する迷いもない――
孝四郎はあやまちを超えて、美凪に本当の優しさを気付かされた。
『愛』と呼べる強さだ。
震えながら口づけを重ねる孝四郎と美凪。
募る想いが愛しく、唇から伝わる温かさに孝四郎の鼓動が高鳴った。
続きを読む
「……孝四郎さん。……美凪とセックスしてください」
美凪の身体は熱く煮え滾り、おま〇こは既に大洪水状態だった。
美凪とのセックスをするため、もう一度逸物を奮い立たせる。あれほど精液を出したはずなのに、孝四郎の逸物は美凪に扱かれるとすぐに勃起して硬さを取り戻していた。
孝四郎に抱きついた美凪は、自分のおま〇こを広げて孝四郎の逸物を飲み込もうと腰をゆっくり降ろしていった。
孝四郎は美凪と繋がるため、美凪に憑依していまセックスしようとしている。カメラも回っているので、その様子はばっちり録画されるはず。
しかし、いま美凪と繋がるだけになったにも関わらず、孝四郎にはぽっかりと穴が開いた気持ちがあった。
(……なんだろう、この虚無感は……?)
美凪の身体は熱くなって興奮しているのに、セックスすれば今でもできる状態なのに、孝四郎はあと一歩を踏み出せずにいた。心に残る空虚感。美凪に憑依した自分への後ろめたさで、罪悪感に苛まれ、はたしてこのまま美凪とセックスして良いのかを考えてしまった。
(いや、ここまできてなにを考えているんだ!今まで散々美凪の身体を堪能させてもらっただろう!?)
フェラチオまでしておいて、カメラに録画しておいて、今更ここにきて美凪の処女を奪うことに躊躇いを覚えている。
こうしている内にもカメラの前で抱きついたまま固まっている美凪が録画されている。引き戻すことなんかできない――!
(ゴメン!美凪――!)
――孝四郎は美凪に謝り――――セックスを中断した。
「…………やっぱ、違うよな?」
美凪のためを想って、一歩勇気を踏み出してほしくて美凪に憑依して、セックスするために録画して、準備まで仕込んでいたにも関わらず、その行動全てが自分の為だと孝四郎は気付いた。
美凪の身体を好き放題したくてたまらなかった。美凪になって自分とセックスしたかった。美凪の気持ちなど関係なく、美凪の処女を奪いたかった。
全部、孝四郎自身の勝手なわがままだった――。
「俺、美凪の大事なモノを奪うところだった。……気付けて、よかった」
間一髪、危ないところだった。
美凪の処女を奪えるのは、美凪の気持ちを、美凪自身に聞いてからじゃないと出来ない。何故なら、それは美凪自身が決めることだからだ。
美凪が孝四郎を好きだとしても、愛していたとしても、美凪が決めなければ心がなくなってしまうから。
――相手のことを考えること。
孝四郎もまた、美凪のことを思い詰めて、なくしていたものが確かにあった。
好きだからなにをしても良いということは絶対にない。
時に暴走してしまう心を抑える力も必要だと、孝四郎は危なく戻ってこれたのだ。
「よいしょ……ここまでだな」
孝四郎から放れた美凪は身なりを整えると、孝四郎の逸物をしまった。勃起したままズボンに戻されていくムスコには悪いことをしたと思いながらも、無理矢理ズボンの中にいれてファスナーをあげて元通りにさせた。
「この身体も返してくるかな」
孝四郎の身体を残したまま美凪は教室を後にする。
自分の身体から放れた場所で美凪を解放することにした孝四郎。少しでもリスクを減らそうとした結果だ。
扉を開けて廊下を出る。
すると――、
「よぉ、遠野!」
扉の前で、孝四郎の知らない男性が立っていたのである。
目を丸くして驚く美凪。美凪の記憶から目の前に立つ男性が、同じクラスメイトの氷河行人―ひょうがいくと―だと知った。
「行人くん……どうしてここに?」
行人は美凪を掴んで隣の資料室へと入り込む。行人はそこに用があったのだが、一学年上の教室でクラスメイトの美凪が先輩と卑猥な行動をしているのを扉の隙間から見ていたのだ。
「知らなかったぜ?おまえがそんなに盛ってるとはな」
ニヤニヤと、強気な態度で美凪を見つめる行人。頭から足のつま先まで視線を移し、舌舐めづる行人は既に狂気を隠すことはしなかった。
「キャッ!」
腕を取られて壁際に追い込まれる。その気迫に美凪は思わず悲鳴をあげた。抑揚もない、咄嗟の一言だった。
「黙れよ。誰かに見つかったらヤバいんだろ?」
「行人くん……まさか?」
美凪に対して行人目を細める。
「このことは黙っといてやるから、俺にもお裾分けしてくれよ?」
表情を緩ませるも力はぐっと強まっている。否定的な答えを出しても逃がさないと言う意志の表れが自然と零れていた。
(どうしよう、美凪の身体をこんな男に奪われるわけにもいかないし、かといって逃げ場もない……)
孝四郎は答えるわずかな時間の中で、最適な方法を模索する。
そして、頭に閃いた一つの案を閃いた。
「わかりました……」
「聞きわけが良いじゃないか」
力を緩めたと同時に美凪は行人の腕を振り払った。ニンマリとしている行人に対して、美凪はある条件をつきつけた。
続きを読む
椅子に座って眠っている孝四郎の股ぐらに美凪の身体を入れ、ベルトを緩めてチャックを緩めて逸物を取り出す。
小さな手で自分の下腹部を弄っている。もぞもぞとズボンの中で動いている様子が妙に卑しかった。
「簡単、簡単」
座っている孝四郎のズボンから逸物を取り出すのは難しいかと思っていたが、美凪の手ならスルリとズボンとお腹の間に手を差し入れて、逸物を取り出す隙間も十分にあった。
取り出された逸物は外気にさらされた途端に勃起していた。美凪の手で触られたことで意識が無くても反応したようだった。
「うわぁ。自分のチ〇ポを誰かの目線で見られるとスゴイかも……俺のって、大きいかも……」
自分の逸物を持て思わず本音が出てしまう。せっかくビデオ撮影しているのに台本の無い台詞を喋ってもらうと困るものだ。アドリブはなしでやってもらいたいと、孝四郎は自分が監督だった時ならそう呟くだろうと思った。
(まぁいいか。後で編集すればいいことだし)
孝四郎は自分の逸物を弄りはじめる。オナニーの時になれた手つきで扱きながら、普段とは違う方向から攻めてみようと逆手でも扱いてみる。親指と人差し指の間の水かき部に逸物の皮の部分が当たってきて生温かい。
加えて美凪の手で扱いているので、その小さな手では逸物は片手で収まるのがやっとの大きさだ。両手で挟みこんで扱いて見ると、眠っている孝四郎の身体がピクンっと反応した。
「んっ……気持ち良いですか、孝四郎さん?」
返答がないと分かっていながら、美凪が孝四郎に問いかけるように言って聞かせる。
「……。わかりますよ、孝四郎さんの返事がなくたって。孝四郎さんのオチ〇チ〇を見て気持ち良くなっているのが」
嬉しそうにさらに美凪の手絵扱くペースをあげる。大きな孝四郎の逸物が美凪の手の中でさらに大きく勃起していく。硬く、長く伸ばす様に、竿から一気に扱くと、亀頭部分が赤く腫れているように盛りあがってきた。
「はぁ……。孝四郎さんのおち〇ち〇、とっても素敵です。硬くて、ビクビクしていて、美味しそうです」
美凪の声でそう言われると褒められている気がして、孝四郎はさらに興奮してきた。顔を近づけ、逸物のにおいを嗅いで、口をゆっくり開いて逸物を咥えようとしたところで、美凪の身体がピクンと止まった。
「あれ……?これじゃあカメラに映らない……?」
カメラを挟んで孝四郎を愛撫しているわけだから、当然いま美凪の身体はカメラに対して背を向けていることになる。
美凪はカメラを移動させ、自分の顔がカメラに映るように孝四郎の横に持ってきた。
画面を見ながら美凪の顔が映る様にする。バッチリである。
「孝四郎さんのおち〇ち〇……可愛い……。今から私が口でしてあげますね」
美凪がレンズを見ながらフェラチオをすすめる。逸物を両手でつかんで亀頭部分を美凪の唇にまで持っていく。
硬く、勃起した逸物からは独特のにおいを発している。しかし、美凪はその匂いにうっとりとした瞳をし、唇を亀頭に近づけていく。
おいしいものを最後に残していた子供が、ゆっくりと唇に運ぶかのように、美凪の唇がゆっくりと亀頭に触れた。
「チュッ」
ぷるんと触れた柔らかい美凪の唇と、温かい吐息をかけられ、亀頭が揺れて歓喜するように震えていた。
続きを読む
夕方、美凪に言われて私は二年B組の教室を訪ねた。時刻は遅く、もう夕日が教室に差しこんでいる。
誰もいない教室で、美凪だけが残って私を待っていた。
「先輩……」
既に悲しそうな顔をしている美凪。きっと昨日のことを悔いて謝るつもりなんだろう。
先輩として、美凪に明るく振る舞い、謝りやすい空気を作っていく。
謝ることは誰にでもある。謝る勇気は許す勇気よりもきっと多く必要だと思う。私は謝ることのできる環境を整えてやることが、なによりの優しさではないかと思うんだ。
「んに?どしたの、美凪?」
私の声に美凪が目を丸くして、小さく笑ったように見えた。
「なんですか、今の?」
そんなに変な声だったのかな?美凪が見る私の視線が赤く染まっているように見えた。
夕日のせいだよね、きっと……。
「私に用があるんでしょう?なにかな?」
「…………莉子先輩」
心が落ち着いたように美凪が静かに喋り出す。
「昨日は、本当にごめんなさい」
頭を下げて深々とお辞儀をする。45度ぴったりの綺麗なお辞儀だった。
「昨日って、私を突き飛ばしたこと?」
「うん……。わたし、先輩に対してヒドイことしてしまって……どんな顔して会えば良いのか分からなくて……悩んで…………キライに、なってほしくないから……」
震える声で今にも泣きそうに喋る美凪。顔を伏せて段々と声が小さくなるのを堪えて、必死に伝えようとしているのがわかった。
「もう!そんなことで悩んでたの?ちっちゃいなぁ、美凪!」
「……」
「怪我もないし、私もそれほどか弱くないよ!美凪に突き飛ばされただけで美凪を嫌いになるわけないから、心配しないでよ!私にとって美凪は大事な後輩だし、大切な料理の先生だからね!」
「先輩……」
私の言葉を聞いて美凪が表情をほころばせた。美凪は謝った。私は許した。その関係が美凪にも伝わったのだと思う。
許すことができれば、傷つく心もきっと癒すことが出来るよ。
「先輩に、渡したいものがあります」
「え~!なにかななにかな!?」
美凪が私に贈り物があるらしく、ポケットからある券をくれた。
「なにこれ……?おこめ券!?」
「……おめこ券」
…………なにそれ?
私は難しい言葉は分からない。
「先輩だけ特別です。その券を使うと一回だけ私はなんでも言う事を聞いちゃいます」
「んに?そうなの?」
「はい。……なんでも、です」
顔を赤くして言う美凪。どうしてそこを二回言ったのだろう?
パンパンと、美凪はスカートを叩いて誇りを落とした。そして、なにを思ったのか、制服のボタンを外してリボンを解いて見せた。
「先輩になら、あげてもいいかな?」
「ナニを!?」
美凪のブラジャーが見えているよ。白なのに模様が入っている可愛いブラジャーだ。私に見せているってことは、きっとそういうことなんだね!
ご期待に応えられるか分からないけど、美凪のおめこ券をもらっちゃった!なんでも一回言う事を聞いてくれるのなら、私にだって考えがある。
美凪は女性らしさを持ち合わせ、加えて料理もうまい。
お嫁さんにするなら絶対に私より美凪を選ぶ人が多いと思う。
だから――、
「うん、わかった!じゃあ今度、孝四郎くんとのデートの時に、美凪が私をコーディネートしてよ!」
――そしたら、きっと美凪が私を女性らしくしてくれるはず。私だってもう少し着飾りたい。大人の下着が置いてあるランジェリーショップに行きたい年頃だもの。
私に似合う艶っぽいショーツあればいいなぁ。
「……あれ、それでいいの?」
美凪が予想を外していたことに驚いていた。
いったいなにを予想していたのだろう。そんな私を見て悲しそうな顔をしないでほしい。
おかしいな?昨日の一件はもう許したのに……。
「早く服着て。今日の料理を教えてよ」
「……うん。そうだね」
美凪が残念そうにしながらも胸を仕舞おうとした。
「今日の料理は――――うぅっ!」
突然、美凪から小さな悲鳴が聞こえた。
「美凪?」
「んぅぅ……ぃゃぁ。はいってこないでぇ……」
突然、身体を抱きかかえた。力が抜けたように膝を曲げて床に倒れる美凪が、顔を青ざめながら苦悶の表情を浮かべていた。
「み…ないで……せんぱい……!」
「みなぎ!どうしたの、美凪!?」
苦しく息を吐く様子を見られたくないと、両手で顔を隠す美凪。
急な美凪の様子の変化に慌ててふためいてしまう。いったいなにが起こったのか分からない私は、美凪を保健室に連れて行こうとするも、美凪の身体が動く気配がなかった。
誰かを呼ぼうにも教室には誰もいない。美凪が苦しそうに身体を震わせているのを黙って見ているしかなかった。
「このまま、美凪に何かあったらどうしよう――?」
そんなことを考えていると――美凪の加えていた力が一気に緩まったのを感じた。震えは一瞬で収まり、美凪を取り巻いていた緊張感が和らいでいった。
美凪が顔をあげる。
先程までの苦痛の表情が一転して、不敵な笑みを浮かべていた。
口元を釣り上げて笑っているみたいだった。
私は、美凪になにがあったのか聞くために顔を覗きこんでいた。
「美凪……?大丈夫?」
美凪に声をかけると、美凪は何も言わずに立ちあがって自分の身体を触り始めた。怪我がないのかを見ているのだろうか、それにしても前を開けている格好なので、美凪が顔を下に向けると自分のブラジャーが目に入っていた。
「えへへ……」
だらしなく笑う美凪。口元が緩んで涎でも垂れてきそうだ。なんだか急に美凪が怖くなって、私は声を張り上げてしまった。
「美凪!?」
「――っ!莉子!?……せんぱい」
急に我に返って私を見た美凪は、咄嗟に私を呼び捨てで呼んでしまい、少し間をおいて『先輩』と付けていた。美凪は私を呼び捨てで呼ばない。そんな間違えするはずがない――!
「どうしたの、美凪?大丈夫なの?」
「先輩……。大丈夫です」
しかし、見た目も口調も美凪本来のものに戻っていく。
変に意識してしたのか、私の気のせいだったと思いなおして美凪に笑顔を振りまいた。
「保健室行く?それとも、部室いく?」
これから一緒に向かう場所を問いかける。美凪は何かに気付いたような表情を浮かべると――。
「ごめんなさい、莉子先輩!ちょっと急用思い出したから!」
「えっ?」
――私を教室に残して全力で駆け足で出て行ってしまった。私は呆気に取られて廊下に出るのを遅れてしまった。その時にはもう美凪の姿は廊下のどこにもなかった。
でも、どこからか美凪の嬉しそうな笑い声が廊下に響いて聞こえてきていた。
うーむ……。あれからなにも進展がない……。
孝四郎は期待に胸膨らませて早一ヶ月を過ぎようとしていた。
神原莉子―かんばるりこ―と遠野美凪―とおのみなぎ―の天然コンビは今日も一緒に料理を作っている。
そんな二人の様子を円卓テーブルで見つめている俺。
「今日はオムライスを作ります」
「楽勝だよ!」
「……あれ?そう?」
「うん!だって、炒めたキチンライスにケチャップをドバーってかけて、玉子焼きを乗せて完成でしょう?」
「うん。正解」
実に莉子の調理しやすい料理を選んだというわけだ。
先輩を立てる、実に美凪らしいチョイスであった。
「でも……、言うは容易く、行うは難し」
「おおぅ」
「何故思わせぶりな口調になってる?」
美凪が一つ溜め息をついた。
「莉子先輩……玉子焼き作れていませんから」
「はぁ~!?」
玉子焼きなんか、卵を溶いてじっくり焼いて表面を固めてから一纏めにし、少しずつ卵をフライパンに流して層を作っていき、お皿に盛りつけるだけの簡単な料理じゃねえか!
莉子はそんなに不器用なのか?
「卵をかき混ぜてはいけません」
「納得……」
それは卵焼きではない。スクランブルエッグだ。
「だって、プロはオムライスの卵はふんわり作っているよ?私だってあれくらいできるもん!」
「半熟だからだろ?莉子の場合は生で完成とか言いそうだしな」
「火が通れば既に半生だよ。ってことは、言い換えれば半熟なんだよ」
「ダメだって言ってるだろ!」
半分半分といいながらなぁ!半分だった試しがない!!
世の中は、五分だ五分だと言いながら、本当は7:3くらいがちょうどいい――
「せめて美凪くらい料理がうまければなぁ」
「……。褒められちゃった。えっへん」
「いいなぁ。美凪~」
褒めるだけで胸を張るポーズを取った美凪。
それが、今の美凪にできる唯一の喜びの表現の仕方であることを俺は知っている。
美凪にとって、莉子との関係を崩すことは絶対にしない性格だ。
『――私にとって莉子先輩と同じくらいに、孝四郎さんは大切ですから……』
あれ以来、俺に対して美凪の方から言葉をかけてくることはなかった。
それは莉子のことを案じて、美凪の方が距離を取ったということだ。莉子を傷つけることを美凪はやらない。莉子が俺を好いている限り、美凪は絶対に俺に手を出したりはしないのである。
『居なくなっちゃイヤですよ、孝四郎さん』
自分の本音を隠して、莉子に付いて俺と会うだけで満足している。
それは確かに楽かもしれない。莉子を通じて俺に会えるのだから。
でも、俺はそれで満足できなくなっていた。
美凪と二人きりで話をしたい時もあった。だが、美凪は二人きりで会うことを躊躇い、休み時間もどこかに行ってしまうことがあった。一年先輩の俺が美凪に会いに来るだけで噂にされる。
俺も迂闊な行動が出来なくなり、いつしか美凪を苦しめないように料理部だけの時間で会うようになっていた。
玉子焼きを作る音が聞こえる。今にも箸を滑らせ卵を崩したいと疼いている莉子に、美凪は待つように指示している。
仲睦ましく料理を作っている二人の料理を待つ俺は、まるで妻の待つ愛妻料理を待つ夫の気分だった。
「じゃ、いってくるよ」
「うん!いってらっしゃい、孝四郎くん!」
料理を詰めた莉子の弁当箱を持った俺が扉を開けて玄関を出る。
外には車。愛用のロードスターに颯爽と乗って会社までひた走る。
そのつもりだったが、乗ったのは何故か助手席の方だった。運転席には既に誰かが座って待っていてくれたのだ。
黒い髪の、長髪の綺麗な美人女性だった。
「おはようございます、孝四郎さん」
「み、美凪っ!?なんで!?」
「くすっ、可笑しなこと言いますね?私は孝四郎さんの専属の秘書ですのに」
「専属の……秘書!?」
なんだ、その素敵ワードの連続に属する立ち位置は!?妄想だと分かっているのに、つい興奮してしまう。
妄想は暴走へ向かうのみだ。
美凪が今まで浮かべたことのない笑みで微笑んでいた。
「……孝四郎さん。会社へ向かう前に……私をなぐさめて……」
マジか……、美凪の顔がすぐ近くに……っ!
だ、ダメだ!こんな車の中で!?家の目の前で、莉子が見ているかもしれないのに――!!
破廉恥なことを――!?あーーーーーーーーー!!!
「孝四郎くん……?」
「わあああああああああ!!!?」
莉子に声を掛けられた瞬間、思わず悲鳴をあげてしまった。莉子までも俺の悲鳴を聞いて小さく叫んでいた。
「きゃふっ!?なに今の悲鳴!?」
「…………孝四郎さん?」
「あ、ああ…、すまん……」
「お料理出来ました」
気付けば二人の料理は完成してお皿に盛りつけられていた。
湯気のあがる完成したての料理。ホクホクと温かくふっくらした米粒と、黒いこしょうがたっぷりかかった――――
「急な予定変更で炒飯になりました」
「やっぱりスクランブルエッグじゃねえか!!」
しかも胡椒が隠すことが出来ないと知ってケチャップかけるの諦めやがった!なんだ、この黒胡椒、米粒が真黒だあああ!火加減までつええええ!!
「莉子、おまえの作る料理はマズイ!」
「ふえええええ……!」
泣きそうな顔しても許してやらない。いい加減、『愛』に頼らず腕を頼れ!!
「先輩。頑張ってください。私も応援しますから」
「美凪ぃ……ありがとう!」
そう言って美凪に抱きつく莉子。微笑ましい限りだ。
「…………あれ?」
でも、俺には違和感。美凪の様子が前と違う……。
「美凪。そこは愛でカバーしなくていいのか?」
「――っ!?」
――ドンッ!
美凪が動揺して、莉子を突き飛ばした。
「うわあっ!」
小さな身体で床は畳みのせいもあって、莉子は怪我もなくただ突き飛ばされて転んだだけであった。しかし、その様子を見た美凪が激しく慌てていた。
「せんぱい……わたし……っ!」
今にも泣きそうな顔で、美凪は状況を見つめていた。
思わずやってしまった本性。
言葉をかけ忘れてしまった美凪の何気ない気苦労が垣間見えてしまったのだ。
無理をしていた。
美凪は苦しんでいた。
「ごめん、なさい……今日はこれで、失礼しますっ」
一礼だけした美凪が仮眠室を飛び出していった。エプロン姿のまま走り去ってえ消えてしまった美凪を、俺も莉子も追いかけることが出来なかった。
「みなぎぃ!!」
莉子にとってなにが起こったのか分からないまま美凪が遠くへ行ってしまったことを悲しんだ。莉子のことだから後々連絡を入れることだろう。
しかし、俺は消えていった美凪の影をじっと見つめるしかなかった。
俺が美凪になにかできることがあるだろうか。
今はその解決方法を求めていた。
続きを読む
俺は志穂の前で飛び出した。志穂は俺にびっくりすることはなかったが、足を止めた。むしろ、気配を感じて足を止めていたと言う方が正しい。
つまり俺は獲物を狙っている虎そのものというわけだ。
荒く息を吐いて、気配をかき消せないほどいきがっているわけだ。
――ここが戦場。俺の辿り着いた死に場所だ――
「田村さん!!」
上ずった声を張り上げる。志穂はさらに冷たい目で俺を見ていた。
「……なに?」
「(好きです!付き合ってください!)」なんていきなり告白したい衝動に駆られるものの、俺がいまそんなことをいったところで玉砕するのは目に見えている。
少しでもリスクを減らすためのデートのお誘い。それがクリスマスで出来る俺の謙虚な告白だった。
特訓の成果でそれしか出来なかった。そう言う意味では、今更になって『コピーキャット』には本当に悪いことをしたと思う。
「あの、俺……おれ、と……」
口数の少ない志穂の冷たい視線が痛いほど刺さり、俺の体力が削られていく。声が震え、弱腰になって、立っていることさえ辛くなる。
胸が苦しい、息が荒い、早く終わりにしたいとどうしても気持ちがはやる。
そして、俺は遂に言ってしまった。
「――これから、俺と一緒に夜を過ごさないか?」
「………………」
志穂がさらに目を細めた。俺は頭を抱えるほど心の中で悶絶した。
「うおおおああああ!!なんだ、その言い方は!?完全に夜を意識した喋り方になってるじゃないか!?ホテルに連れ込むことしか頭にないからそんな言葉が出てくるんだ!もう少し『食事とか……』、いや、『お茶でもどう――?』とか、軽く誘う程度にしておけば良かったのに、これじゃあ完全にセ――」
「(アハハハ―――あはっ――あじゃじゃした―――)」
「建て前と本音が逆……」
糸冬了……。
完全に終わった……。俺の初恋。
誰とも喋ってないからこんな咄嗟の言葉をかけられないんだ。
人間力が違いすぎた。俺には三次元に振り向いてくれる子なんていないんだ……。
『いけ!玉砕して来い!』
ああ、あいつの声が頼もしく聞こえる。
どうせ玉砕覚悟の告白だ。
せめて美しく、華々しく散らせてくれ。
春には桜――夏には花火――秋には紅葉――そして冬には俺の心臓―グラスはぁと―を。
四季折々の美しさに彩られて散っていく、その中に私も混ざりたい……。
さぁ、言ってくれ!俺は告った!――覚悟はもうできている。
結末がどうなろうと、俺はもう前へ進める――。
「…………ダメ」
がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!
やっぱな!ほらっ、やっぱりだ!
人生が急に華々しくなるわけないし、急にモテ期が来るわけない。
媚薬でも飲ませて、惚れ薬でも飲まない限り、俺にモテ期が来るわけない!
俺はどうせ女と縁がない無縁地蔵――!
やっぱりクリスマスなんか縁もゆかりもないイベントなんだ!
日本人らしく羊羹食ってた方がまだ性に合ってるもんだ!!
バーカ、バーカ!!
うあああああああああああああああああああああああああんん――――!!!
「…………今日は家族みんなでクリスマス会があるから」
…………………はっ?
か、家族……?
彼氏とかじゃなくて、血の繋がった……かぞく?
こんな大事な日に、家族と食事かよ。それって、つまり、フリーってこと……?
志穂は誰とも付き合っていないのか……?
志穂が携帯を取り、おもむろに電話をかける。無表情な顔で電話が繋がった。
「もしもし、お母さん。わたし……。今日…………うん。友達とご飯食べることにした。お父さんにごめんなさいって伝えておいて……うん。ほんとうに、ごめんなさい……」
プッと電話を切った。その間、俺は志穂以上に表情を殺していたと思う。
「……どこに電話してたの?」
「おうち」
「なんで・・・?」
志穂が非難する視線を送っていた。俺の方から誘っておいて一瞬でも忘れてしまったことを非難する視線だ。でも、その表情が一瞬和らいだ。
「夕食断ってきた。あなたが奢ってくれるって言ったから」
「いってねえ(いってねえ)」
まっ――。男ならドンッと構えて、飯の一回ぐらい奢ってやれる男になりたい。
好きな人と食事できるのなら尚更だ。
志穂が俺の隣に付いて歩く。夜景のイルミネーションが灯る、町の商店街へと向かって供に歩く――。
「どこに連れて行ってくれるの?美味しいおしゃれな店でしょうね?」
まったく、志穂は計画性があって困る。
俺がそんなことまで計算できている男だと思ったか……?
もう少し、男を磨かないとな。
――志穂を喜ばせるために……。
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手に入れたかったフィギュアをゲットしたかのような、他人をも顧みない下種な笑みを浮かべて嘲る。肩を揺らしてご満悦に、結依の細い手足をいじって遊んでいた。
「細いなあ、この手、この足。それにこの胸も……全部俺のモノ……」
「ハッ……ハッ……綾鷹……」
息を絶え絶えに、苦しく咽る俺に綾鷹が手向ける。
「どうだい、この『人形』!結依ちゃんそのものなんだぞ!」
「アッ…ハッ……『人形』……」
ここでは神の御霊を入れる器。結依の『人形』を手に入れた綾鷹が、俺に対して強気に出る。俺の彼女、俺の幼馴染、結依をいったいどうするつもりなのかは分からないが、綾鷹から取り返さなくちゃいけなかった。
「かえせ……結依を、返せ……!」
睨みをきかせたところで今の綾鷹には無意味。興奮で好調な状態の綾鷹には、俺は小さな蟻のような存在に見えるのだろう。
強気を超える超強気。信じられないくらい綾鷹がでかく見えた。
「生意気だなぁ。そう、怒るなよ。今から面白いモンを見せてやるんだからよ」
「なに……?」
俊太郎の前で綾鷹が結依の『人形』と向き合った。そして、太い肉団子のような短い指で、結依の『人形』の鼻に触れたのだ。
すると、みるみる綾鷹の様子が変わっていった。段々と顔が小さくなり、同時に身体全体が変化し始めていた。
結依の『人形』のシルエットがなくなっていき、まるで綾鷹に流れていくように姿を同化していく。
そして、全体がどんどん小さくなり始めた。綾鷹の脂肪が弛んだお腹や腰回りが目に見えて落ちていった。体型に合わせた太い指までもが細く華奢なものになっていく。足のつま先までも指と同じ小さなものに変わっていく。
俺より背の大きかった身長までも低くなっていく、綾鷹はいつのまにか俺よりも小さくなっていった。そして、胸を腰よりも膨らませ、女性ものの洋服を身に付けて、変身は終わったのだ。
「あっ…………結依……」
全体のバランスが整い、俺の前に現れたのは……『人形』にされたはずの結依本人だった。
手に持っていたはずの結依の『人形』は、入れ替わった様に『綾鷹』の人形に変わっていた。いったいなにが起こったのか分からなかったが、結依が戻ってきたことに胸をなでおろしていた俺がいた。
「ブハハハハ!!!そんな顔で俺をみんなよ、俊太郎!」
しかし、それは一瞬――結依の言葉ではない、綾鷹の言葉で、結依が喋り出したのだ。
「お、まえ……!?」
「そうだよ。俺だよ、俊太郎!綾鷹だよ。分かるだろう?いま、俺は結依ちゃんになっているってことがよ!」
信じられない光景を目の前にしている。ウソであるならウソだと言ってほしい。
結依の身体が、綾鷹に取られたなんて……信じられるわけがなかった。
「ウソだ……冗談だろ、結依っ!」
「信じられないのか?だったら、おまえの彼女は彼氏の前でこんなことするか?」
そう言うと、俺の目の前で結依は自分の胸を鷲塚んで皺がつくほどに強く揉み始めた。服の上からでも結依の胸が形が分かるほどのイヤらしい手付きで胸をこねる。
次第に結依の表情が頬を赤く染めていった。
「はぁん!んふぅ……あぁ、気持ち良い~」
「やめろおおお!!」
「ブハハハ!!軽いなぁ、結依ちゃんの身体はよ!まるで生まれ変わったようだぜ!いや、俺は現に生まれ変わったようなものだ!俺が結依だ!!」
目の前にいるのは結依なのに、その正体は綾鷹だ。会員たちが拍手喝采をあげて新生の結依を迎え入れた。その中には当然、麻依さんや芽依ちゃんの姿もある。
彼女たちも同じように、もう、俺の知っている二人ではなかったんだと……悔しさでたまらなかった。
俺のことなど気にすることなく、結依は自身の胸を揉みまくる。
俺の見たくないことを率先してやるかのように。
結依から高い声が漏れ、なんの躊躇もなく胸を揉み、持ち上げ、その柔らかさを堪能するかのように弄ぶ。
「いいおっぱいだ。この触り心地、たまらないよ。俊太郎も毎日この心地良さを抱いていたのかい?」
「そんなこと……ない…」
「そうだよねぇ……わたし、俊太郎に触らせたことないもんね!」
「なっ……!」
綾鷹が普段の結依の口調で喋りはじめたことに動揺してしまう。
「俊太郎優しいから、私に手を上げることはしてくれなかったね!……嬉しかったけど、すこし淋しかったんだ」
目の前にいるのが本当に結依の口ぶりで、俺の心を惑わせる。
「ちがう……おまえは……」
「そうだよ。俺は綾鷹だよ。でも、同時に結依でもあるんだ。記憶を読めば結依の口調や気持ちもこの通りさ。嬉しいだろう、結依ちゃんの気持ちを知ってよ!」
そんなの、決まってる――。
嬉しいわけがない!結依が伝えなくちゃ嬉しくても感動ができなかった。綾鷹が結依の気持ちを知って、俺に伝えることでなんの意味があると言うんだ!?無性に淋しくなるだけじゃないか……!
「結依……!…………ゆい……」
「泣かないでくれよ。せっかくここまで感情を伝えたんだ。結依ちゃんの身体はもう完全に火照ってるんだぜ?気持ち良くしてくれるのが彼氏の役目じゃないか?」
「ちがう!おまえは……俺の、彼女じゃない!」
「まだそんなこと言うのか?ニヒッ。……いいよ?私、まだ早いかなって思ってたけど、今日は記念日だから抱いて欲しいって思ってたから」
「やめろ!お前は結依じゃない……結依の真似をするなぁ!」
結依の記憶を使い、結依の口調で誘惑する。 俺の心を蝕み、綾鷹に都合良く作り変えられる内容だ。でも、少しでも結依の本音が入り混じる内容は、いったいどこからどこまでが本当の結依のモノなのか分からない。
俺の心をくすぐり、俺を抱きしめる温もりすべてを偽りだとは思えない。
結依のにおい、結依のぬくもり、
心を縛りながらも、ゆっくりと解いていく優しさに、再び俺の逸物が反応を示していた。
温かさ、優しさ、それは結依本人のものだった。
「私の身体、好きにして、いいよ……俊太郎」
目の前で微笑む結依に、俺は男性の本能が感化されていった。
ヤンキー達と一緒にホテルに入った『志穂』は早速裸にされた。前菜も必要ないほどにいきり立った逸物を、『志穂』の身体に挿入していく。
「ふにゃあああ――!!」
ゾクゾクと、身体を痺れさせる志穂の快感。猫が全身の毛を逆立てるように、『志穂』の身体で四つん這いになって腰を浮かせていた。
「うおおおっ!!いいぜえ、こいつの膣内…熱くて、ぐっしょり濡れてやがるゼ」
「へへ、俺も我慢できない……。入れてみたいぜ!」
そう言うと、一人は前に回って志穂の口に自らの逸物を挿入する。オチ〇ポに串刺しされる『志穂』は息も出来ず苦しく呻き、快感を両方の口から同時に味わっていた。
「ぶっ……ふぎゃ……ぐちゅっ…ちゅっ……ちゅぷ……」
「ああ、こっちの口も、気持ち良いぜ。涎がたまって、全身ずぶ濡れにされちまうぅ」
満足そうに漏らす。しかし、『志穂』が謝って逸物を噛みついてしまった。歯を立ててかまれた拍子に、悶絶していた。
「いてえっ!てめえ!」
「にゃあっ!!」
「いま、俺のブツ噛みやがったな!!なにしやがるんだ、こいつ!!」
部屋に響き渡る乾いた音。『志穂』の身体に男性が強烈な平手打ちをかましたのだ。
「きゃあああああ!!!」
「こいつ!こいつ!」
バシン!バシン!と何度も叩く。男性の力は『志穂』の細い身体で耐えられるはずがなかった。白い肌が真っ赤になり、『志穂』の顔も高揚してきていた。
「ニャア……ああっ……」
「んっ、なんだよ、その顔?叩かれて感じていやがる?」
手を休める相方に膣内に挿入していた男性がたまらず声を漏らしていた。
「ああ、膣内が締まる感じ、たまんねえぞ、おい」
叩かれる度に濡れてくる『志穂』の膣内。愛液がどんどん溢れて、膣内はぐちょぐちょに濡れていた。熱い滾った身体の奥から漏れだす快感の波に、『志穂』も荒く息を吐き出していた。
「きもちいい……にゃあ!」
「そうか。おまえはとんでもないマゾだったのかよ!だったら、遠慮はしないぜ!」
男性が再び攻撃を始める。『志穂』の身体を鞭うつように叩きつける平手に、大きなもみじの跡を刻みつけていく。
「にゃあ!きもちいい、きもちいい!」
『志穂』は気持ちいいとしか言葉を知らない。
男性の快感を刺激する言葉しかしらないのだ。
「好き、だいてぇ。ごしゅじんさまぁ。たすけてください~!」
「ははは!こいつ、本当におもしれえ!叩かれてる俺に縋りついてくるぜ!」
ビシーンと大きく音が弾かれる。
「ひにゃああああ――――!!!!」
『志穂』がたまらず絶頂した。そして――、
「うはあ!!すげえ締まるぅ!!……くうぅ!ダメだ、いくぅ―――!!」
男性が絶頂を迎えて大量に精液を吐き出した。びくん、びくんと『志穂』の身体が痙攣し、連続して絶頂をむかえた。
「ひぃぃ!!いくぅぅぅ――!!いくうぅぅ!!いっくうううう……」
再び赤から白く染められた『志穂』の身体は、すっかり発情した猫そのものであった。
目を虚ろにしながらも身体の奥から熱くなる体温に、猫なで声で男性を求め始めた。
「どけ。次は俺の番だ!」
男性が交代で次々と『志穂』を犯す。
柔軟に身体をくねらせて膣内を動かす『志穂』に、男性もまた快感にやられていった。
「なんだよ、こいつの膣内は!!?もぅ、ヤバすぎる!」
「にゃあ!すきぃ!抱いてにゃあ!」
「うわああぁぁ!!!」
絶えず受け、絶えず吐き出し――、
精力の続く限り男性たちは『志穂』と交わり、遂に尽きた。体力、精力供に尽きた男性たちは『志穂』を置いてホテルから出ていった。
「にゃん…にゃあにゃあ……」
戦いが終わったことも気付かず、さらに自分の身体を慰めようと胸を弄りだす『志穂』。
その欲求に塗れた姿を――、俺と少女は見つけたのだった。
「なんてことだ……」
俺はがっくり肩を落とし、扉の前で崩れ落ちた。
という能力系を中心にした
TS/MC小説を掲載する場所です。
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