自殺した男子生徒の月命日に当たる今年七月十一日、県警が大津市立皇子山(おうじやま)中学校と市教委への異例の家宅捜索に踏み切ってから百七十日目。更生を目的とする少年法の壁が立ちはだかった苦渋の捜査の末、県警は「文科省のいじめの定義に照らし合わせると、定義に該当すると思う」と、いじめがあったとの結論を出した。
捜査は難航した。捜索以降、県警は夏休みを中心に男子生徒の同級生らに聞き取り調査を実施。しかし約一年前の事件に、日付や詳細な状況などを中学生から聞き出すことは至難の業だった。いじめを止められなかったことを悔やむ生徒や、聞き取りの途中で泣きだす生徒もいた。「非常につらい捜査だった」(県警幹部)
それでも「容疑を広くとらえ、可能な限り(事実解明に)盛り込むスタンスでやった」(県警幹部)。今年十月には、各署に配属されていた生活安全部の勤務経験者らを異例の人事異動により捜査班に集め増強。歴代の少年課長らも捜査の中枢を担い、県警組織を挙げて取り組んできた。
被害者が亡くなっていることもあり「いじめと自殺との因果関係は、推測では言えない」としたが、暴行など犯罪事実と認めた十三件の事案から「いじめがあった」とした。
大津署が当初、「捜査は進めている」としたものの、被害届を受け取っていなかったことが、世間からは門前払いをした印象を与えたことについても、県警幹部は「もう少し被害者の心の痛みに、気を配っていれば…」と悔いた。
「注目されればされるほど、少年の更生の機会を妨げる」(県警幹部)。異例の捜索により全国的に注目を集め続けたことも、静かに捜査を進めたい県警幹部をいら立たせた。それでも「この容疑事案は盛り込めるのか、盛り込めないのか」。県警本部のある会議室。県警では、送検日の前日も、詰めの協議を繰り返した。
今後は家庭裁判所の審判に委ねられる。県警幹部は「少しでも早く更生してほしい」と話した。
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