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関東大震災 200人超の証言テープ分析へ
1月1日 19時24分

関東大震災 200人超の証言テープ分析へ
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10万人以上が犠牲になった「関東大震災」から、ことしで90年になります。
当時、震災を経験した200人以上の証言を録音した、膨大なカセットテープが、分析されないまま残されていることが分かり、NHKは、今後の防災対策に役立てるため、専門家と共同で、地震直後の火災の実態や、災害に巻き込まれた人々の心理状態などを分析することにしています。

災害時の情報を研究していた、東京大学大学院教授の廣井脩さん(故人)は、大正12年の「関東大震災」の教訓を風化させず、今後の防災に役立てようと、およそ20年前、震災を経験した人を探して、みずからテープレコーダーで証言を録音していました。
しかし、7年前に病気で亡くなり、およそ170本のテープの多くは分析されないまま残されました。
NHKが専門家と共同でテープの分析を始めたところ、関東大震災で犠牲になった人の数が最も多い、現在の東京・墨田区にあった「被服廠(ひふくしょう)跡」と呼ばれる広場にいた人の証言など、少なくとも200人以上の肉声が記録されていました。
当時9歳の女性は、「流れるままに押されて、被服廠に避難した。荷物がまきのように燃えて、火の回りが早く、逃げ惑ううちに竜巻が発生し、兄と弟も飛ばされた。母に引っ張られて、はうようにしてあちらこちらに行き、翌朝気がついたら生きていたんだと思った」と、避難や火災の実態を生々しく証言しています。
被服廠跡や周辺にいた人の証言は数十人に及び、当時の避難や火災の実態を多角的に解明できる可能性や、災害に巻き込まれた人々の行動や心理状態を分析できる可能性があります。
NHKは、テープを今後の防災対策に役立てるため、ことし9月に向けて、災害時の情報伝達に詳しい、東洋大学の関谷直也准教授と、廣井さんの長男で、都市の災害を研究している名古屋大学の廣井悠准教授と、共同で研究を進めることにしています。

今の都市の防災対策につながる可能性も

「関東大震災」は、今から90年前の大正12年9月1日に、東京や横浜など近代化した都市を初めて襲った災害です。
地震の揺れや津波のほか、その後発生した火災で、死者と行方不明者は10万5000人に上り、国内の災害では明治以降最大の被害をもたらしました。
このうち、現在の墨田区にあった「被服廠跡」と呼ばれた広場では、犠牲者全体の3分の1以上に当たる、およそ3万8000人が火災で亡くなりました。
このため、関東大震災以降、火災対策が大きな課題になり、防火対策や火災に強いまちづくりなどの研究が進んでいます。
しかし、災害時の情報伝達に詳しい専門家が、避難の行動や心理状態を大規模に調査した例は知られておらず、当時の証言を分析することは、はるかに過密になった今の都市部の防災対策につながる可能性があります。
都市の災害を研究している名古屋大学の廣井悠准教授は、「あの地震で何が起きたのかをもう一度整理して、それを現代の社会システムの中で置き換えて防災対策を進める必要があり、そのための重要なキーワードを探していきたい」と話しています。

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