2012年の音楽業界を振り返って〜業界関係者が今年の音楽産業を総括

高橋裕二高橋裕二さん
——2012年の音楽業界を振り返って。

ユニバーサルミュージックによるEMIミュージックの買収が完了。これでアメリカのレコード業界は2.5大メジャーになった。

業界誌ヒッツが今週(2012年12月21日時点)に掲載した2012年年間の市場占有率。カッコ内は前年。
1位)ユニバーサルミュージック 31.1%(29.6%)
2位)ソニーミュージック 30.4%(29.3%)
3位)ワーナーミュージック 15.1%(15.4%)
4位)EMIミュージック 7.8%(7.3%)

2.5大メジャーになるとどんな結果になるか。

新人アーティストはメジャー入りを目指しても2.5社しかないので大変難しくなる。
メジャーにいた大物はコスト・カットの為、リストラされる恐れが多い。

また、さらに新しいテクノロジーやビジネス・モデルとの付き合いは、ユニバーサルミュージックとソニーミュージックの2社がOKすれば前に進む。

アップルのインターネット・ラジオ・サービスは極端に言うとこの2社との契約でビジネスが成立する。その一方でワーナーミュージック以下インディーズは、ユニバーサルやソニーが決めた条件には入れて貰えず、使用料が低くなる可能性がある。アップルに言わせれば、ユニバーサル(EMIミュージックを含む)とソニーで約70%の音源を確保するので、高い事いうなら、うちは要りませんという事になる。

いずれにせよ様々な局面でユニバーサルミュージックとソニーミュージックの発言力が増す(日本のユニバーサルがどうかは私は分からない)。

——印象に残った出来事。

やはり「アデル」です。アメリカではソニーミュージック傘下のコロンビア・レコードと契約したが元々本国イギリスではインディーズの「XLレコーディングス」。昨年発売されたアルバム「21」がアメリカで今年だけで420万枚売れた。

宣伝手法は従来通りの「ラジオ局を攻める」。ツイッターやフェイスブックは殆ど関係ない。奇をてらったやり方は全くない。通勤途中の人達はラジオで聴いて好きになってレコードを買った。良い音楽だったら購入する。

プロデューサー指導のポップ・ソングはなくならないが、アルバムのビッグ・ヒットにはつながらない。作品が消耗品化している。

——音楽業界、2013年の展望について。

1番大きな出来事は「アップルのインターネット・ラジオ・サービス参入」です。これはアップル全体の未来をも決める、又スマートフォン市場と音楽業界がどう関わるかの最も大きな出来事になります。


洋楽天国
高橋裕二さんインタビュー