2012年の音楽業界を振り返って〜業界関係者が今年の音楽産業を総括

ユーストリームUSTREAMロゴlogo筑田大介さん
(Ustream Asia 音楽担当)
——2012年の音楽業界を振り返って。

音楽業界全般については私が語れるところではないので、(Ustream)音楽担当として今年のUstreamの配信動向について。。

ここ数年、Ustreamはプロモーションの一環として、多数の視聴を目的に配信されることが多かったのですが、アーティストがライブ配信を行うこと自体がある程度定着化したことで、特に今年は「ファンの囲い込み」を狙うことが特に積極化した1年だったと思います。

今年はEXILEやDIR EN GREYなど大型の有料配信も実施しましたが特に新しい試みだったのは、ファンクラブサイト内での会員限定での配信(福山雅治、Superfly、スピッツ、吉井和哉など)や、CD購入者限定のライブを行い、CD内にUstreamの視聴チケットコードを封入して販促に繋げる(L'Arc〜en〜Ciel、MISIAなど)など、視聴者を限定することで配信の価値を高める動きで、特にクローズド配信には多くのお問い合わせを頂きました。

また、既存のメディアがUstreamを配信インフラとして活用し、新しいメディアをインターネット上に創ることも本格化していった感があります。エムオンのJamboriii、MTVのMTV TALK SESSIONSkampsiteのリニューアル、アメーバピグの仮想空間でのパブリックビューイングなど、既に複数のメディアさんにも配信インフラとしてUstreamを活用頂いていますが、こちらもコンテンツの属性に近いユーザーを自社メディアに囲い込む施策のひとつとして、動画配信を検討されたのではないかと思います。来年はこういった生中継や動画を絡めたメディアの動きがさらに加速することを期待しています。

——印象に残った出来事。

Ustreamでは新しいサービスとしておひねりができる機能「Ustreamチップ」を実験的に坂本龍一さんとスタートさせました。
これは路上ライブの投げ銭のようなサービスで、配信は無料で視聴が可能ですが、視聴者から配信者(アーティスト)に向けて任意の金額をUstream内の決済で送る事ができるものです。(金額の大小に関わらず対価として特典動画が視聴できます)坂本さんの時は、設定した最低金額の100円を送る方もいれば、感動したので1万円以上をおひねりする方もおり、こういったクラウドファウンディングに近いサービスも、今後可能性が非常にあるのではと思います。

また、個人的には新しい試みとしてOrigami Productionsを中心にスタートした音源、ラジオ、アーティストコラムや動画などを取り込んだ新しい有料メディア、Oshiteが面白いと思いました。

大規模なビジネス展開ではなく、ニッチでも趣味趣向の近しいコンテンツを集めて有料サービスを展開して行くことは、これからさらに細分化して増えていきそうです。

——2012年の各チャートに関して。

個人的にはチャートにあまり興味が無く。。ですが山下達郎さんのベストは特典とリマスターにひかれて購入しました。スイートラブシャワーでの山中湖のライブも涙が出るくらい素晴しかったです。

——音楽業界、2013年の展望について。

実はコンサートの中継を無料で見せる事で動員が減ったケースは聞いた事がありませんので、私の立場としては、より多くのアーティストの方がUstreamなど生中継をうまく活用していただくこと、オープンに見せる部分とクローズドでファンの囲い込みをする部分をうまくハンドリングしてライブ配信自体の総数がもっと増えて行けばと思います。

また、ソーシャルメディアにはもちろん可能性があると思っていますが、それによって経済が動くかどうかはまだ何とも言えないので、ソーシャルへの過度な期待は危険だと思っています。

動画配信もある程度認知が増えたとはいえ、まだまだ視聴しているのは一部のリテラシーが高い層が中心ですので、スマートフォンも含めて生配信の動画をさらに快適に見られる、配信する側もより手軽に高品質の配信ができるようになるといいですね。

WEB上での課金もまだまだ増えて行くと思いますし、時間はかかると思いますが良い形のビジネスモデルを成立させられればと思います。


USTREAM:http://www.ustream.tv/new
USTREAM 2012年年間最大同時接続数ランキング:http://www.ustream-asia.tv/news_20121221.html