Updated: Tokyo  2013/01/01 17:08  |  New York  2013/01/01 03:08  |  London  2013/01/01 08:08
 

去りゆくわれらの「スーパーマリオ」に贈る言葉-社説

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  12月12日(ブルームバーグ):イタリアのマリオ・モンティ首相の辞意表明を受けて、同国株と国債は週明けに一斉売りに遭った。「スーパーマリオ」が去った後のイタリアを想像し、投資家は青ざめた。

当然ながら、多くの投資家とイタリアの企業経営者は、2月の公算が大きい選挙にモンティ首相が出馬し続投することへの期待を表明した。選挙を経れば今度こそ、イタリア国民からの負託を受けた首相となるからだ。高級車メーカー、フェラーリのルカ・コルデーロ・ディ・モンテゼモロ会長は、自身のシンクタンクを政党に転換してモンティ首相の出馬を支えるとまで言い出した。

われわれも、モンティ首相のファンではあるし、スーパーマリオが去った後のイタリアの運命を憂いている。しかし、モンティ首相は出馬についてはよく考えるべきだろう。

モンティ首相はベルルスコーニ前首相が残した混沌(こんとん)の後片付けをするため、2011年11月に登板した。その後の1年1カ月でイタリア政府が何をするか分からないというイメージを払拭(ふっしょく)して安定性を取り戻し、借り入れコストをほぼ半分にした。

ベルルスコーニ前首相はこの間の大半を、首相特権によって免れていた訴訟への対応に費やした揚げ句、現政権への支持撤回宣言という爆弾を落としてモンティ首相から辞意表明を引き出した。この驚異的に無責任な行為によって、ベルルスコーニ氏は政治の表舞台に復帰し、市場を震え上がらせた。

国内人気は高くない

ただしモンティ首相は国内では、海外ほど人気がない。演説が退屈な上に、不人気な緊縮策の旗手である同氏が総選挙に出馬した場合、10%の票を得るのも難しいかもしれない。むしろ、選挙で票が割れ明確な勝者が現れない場合、モンティ氏が実務型内閣の首相として再び登板する可能性はある。これはイタリア選挙の最悪の結果ではないものの、非常に望ましいということでもない。

選挙で選ばれたわけではないモンティ政権はもともと、長期に国政を担うべき政権ではなかった。モンティ氏の首相就任は民主主義における例外であって、その代替ではない。イタリア国民は既に、首相の緊縮政策に対して民主的に物を言う機会がないことにいら立ち始めている。ベルルスコーニ前首相の反ドイツ・反緊縮のスローガンはこんな国民の不満を意識したものだし、コメディアンから政治家に転身したベッペ・グリッロ氏の政党がシチリア州選挙で健闘したのも同じ流れだ。

モンティ首相にとって良い方法は、選挙後に辞任すると表明しているナポリターノ大統領の後任に就くことだ。イタリアの大統領権限は大きくはないが、争いに巻き込まれることなく影響力を行使できるし、選挙の結果どの政党も組閣できない場合は大統領として好みの首相を選ぶこともできる。

当面は選挙に出馬しない自由な立場を生かして、この選挙が厳しい選択であることを国民に訴えるのが良い。ベルルスコーニ、グリッロ両氏のような大衆迎合派は緊縮のほか労働市場などの改革の中止を約束するだろう。彼らは、そのような後戻りの政策がデフォルト(債務不履行)と救済、さらなる緊縮をもたらすリスクについては語らない。選択肢のもう一方は、国民の痛みを感じながらもイタリア経済の競争力強化と赤字抑制が必要だと認める政党だ。

モンティ首相は既にこうした構図を提示する役割を果たし始めているようだ。首相はオスロで10日、選挙で「極めて責任感の強い」政権が生まれるだろうと、投資家の不安鎮静化に努めた。ベルルスコーニ政権を念頭に置いていなかったことは確かだ。

原題:Mario Monti Is Super, But Shouldn’t Run for PrimeMinister: View(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Marc Champion mchampion7@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Gibney jgibney5@bloomberg.net

更新日時: 2012/12/12 07:30 JST

 
 
 
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