贈収賄「三銃士」が結託、UBSが開く銀行不正の新天地-社説
12月21日(ブルームバーグ):金利操作から資金洗浄(マネーロンダリング)まで、世界の銀行による道を外れた行為はこれ以上悪くなれないと思われるほどだが、スイスのUBS は悪行の新天地を開いた。
各国当局から15億ドル(約1260億円)規模の処分を受けたUBSは、管理職を含む100人以上の行員による数千回にわたる金利操作を認めた。行員らは円やポンド、スイス・フラン、ドル、ユーロとさまざまな通貨建ての金利を操作し、世界の指標金利であるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を動かしていた。
UBSを際立たせたのはこの慣行の驚くべき規模ばかりでなく、他行のトレーダーとの結託の強さ、ブローカーに対する賄賂というやり方だ。
英金融サービス機構(FSA)によれば、UBSのトレーダーらは他行のトレーダーと共謀し、円建て金利の操作によって皆が利益を得られるように「互いの商業的利害を一致させる円滑化取引」を行っていた。この綿密な「キャプテン・ケイオス・スキーム」は金融界いかさまの殿堂入りに値する。キャプテン・ケイオスは映画「キャノンボール」(1981)に登場する謎の覆面男。操作スキームに加わっているトレーダーやブローカーは互いを「キャプテン・ケイオス」や「三銃士」などのニックネームで呼び合っていたという。
FSAによれば、UBSのあるトレーダーは金利操作に協力してくれるブローカーに対しこんなことを書いていた。「やってくれれば5万ドルでも10万ドルでも好きなだけ支払う。私は約束を守る男だ」。
何も知らないはずはない円建て金利の操作が他の通貨建てと異なるのは、UBSの日本部門が通信詐欺で有罪を認めた点だ。米検察がLIBOR操作に絡み個人を訴追するのに適した罪状がこの電気通信詐欺法の違反だ。同法は自己の利益のために他者を欺くことを目的とした通信手段の使用を禁じている。有罪になれば最長30年の禁錮刑を科される可能性がある。
当局は幹部に注目するべきだろう。不正の行内での広がり具合とそれが行われていた期間の長さから、幹部が何も知らなかったとは考えにくい。FSAの指摘によれば、少なくとも5人の上級管理職の行員が金利操作について承知していた。法律では不正のための共謀も罪になり最長5年の禁錮刑を科され得る。
UBSが支払う15億ドルは6月に英銀バークレイズに科された額の3倍余り。ブルームバーグ・ニュースによれば、両行を含めた欧州の大手銀がさまざまな不行跡のために今年支払う制裁金などの総額は61億ドルに上る。罪を犯した銀行にたっぷりと払わせるのは良いことだ。そのような行為は容認されないと銀行に思い知らせることができるし、株主へのショック療法になり、経営陣の責任が厳しく問われるきっかけにもなる。
しかし欺瞞(ぎまん)行為を実行、支援、教唆した個人の意識を変え、市場の信頼を取り戻すのに最も効果があるのは刑事裁判だろう。また、当局は不正があった期間の銀行の真の借り入れコストについての情報も集めるべきだ。そうすれば投資家に対して支払われるべき損害賠償の額を特定できる。
真実を突き止め悪を懲らす仕事が世界の監督当局、検察、刑事裁判所を待っている。UBSとバークレイズは始まりに過ぎない。
原題:UBS’s ‘Captain Caos’ Breaks New Ground in Libor Scandal:View(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Mark Whitehouse mwhitehouse1@bloomberg.net
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更新日時: 2012/12/21 07:00 JST