Updated: Tokyo  2013/01/01 16:59  |  New York  2013/01/01 02:59  |  London  2013/01/01 07:59
 

【コラム】「死刑宣告」に値するUBSは米国から出ていけ

Share Google チェック

  12月26日(ブルームバーグ):遠慮した言い方をしても始まらない。銀行業という職業に泥を塗る行為を何年も続けてきたスイスのグローバル銀行UBSは、廃業すべきだ。

UBSに米国での営業を認めてきた監督当局である連邦準備制度理事会(FRB)と証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)、通貨監督庁(OCC)は、同行が先週、譲れない一線を越えたことを認識する必要がある。

UBSは19日、東京のUBS証券を舞台にトレーダーやマネジャーがロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を6年間にわたって不正操作したことを認め、米、英、スイスの関係当局に15億ドル(約1275億円)を支払う行政処分に同意したと発表した。このうち、CFTCへの7億ドルの支払いはCFTC史上、過去最高額だ。

LIBORは、数兆ドルもの融資の金利決定に日常的に用いられる指標金利だ。LIBORの不正操作で制裁金の支払いに同意したのは、これまでのところ英銀バークレイズとUBSの2行だけだが、他のグローバルバンクも処分対象になることが予想される。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、政府支援機関(GSE)であるファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社) も不正操作の結果、合計30億ドル余りの損失を被った可能性が指摘されている。

UBSの元トレーダー、トム・ヘイズ、ロジャー・ダリン両被告は19日、LIBOR操作の「共謀罪」で米司法省から訴追請求された。ホルダー司法長官は「彼らは銀行の取引相手から数百万ドルをだまし取った。利益を拡大し、ボーナスを増やすことが主な目的だった」と指摘した。

思い切りもうけたな

米検察当局の文書で示されている通り、UBSの行員がどこまで身を落としていたかを知るには、通信記録を見れば済む。あるブローカーは、UBSのデリバティブ(金融派生商品)トレーダーに対し、「このLIBORゲームで思い切りもうけたな、相棒」とささやいていた。

UBSは金融危機で約500億ドルの評価損を計上したことについて、「当時の経営幹部の指導の下で誤った方向に大きくかじを切った。その結果、計り知れない信頼の喪失を招いた」と76ページに及ぶ報告書で総括していた。

しかし、UBSと不品行という2つの言葉は、今や再びほぼ同義語となっている。UBSは2009年2月、米国人顧客による脱税をほう助したことを認め、顧客情報を提供し、7億8000万ドルを支払うことで米司法当局と和解。元トレーダーがポジションのリスクを隠し、23億ドル余りのトレーディング損失発生に関与したアドボリ事件では、英金融サービス機構(FSA)から約4700万ドルの制裁金を科され、ロンドンのトレーダーを信頼し過ぎる監督の甘さを指摘された。UBSは内部の統制が少なからず失われているように見える。

好きなだけ払う

米司法当局に訴追請求されたヘイズ被告は08年9月18日、円建てLIBOR6カ月物の数字をその日変えないでくれとあるブローカーに電話で頼み、「5万ドル、いや10万ドル、好きなだけ払う。私は約束を守る男だ」と述べたという。

ヘイズ被告をめぐっては、ブルームバーグ・ターミナルのチャットで、申告する円建てLIBORの金利を知らせるようダリン被告に迫ったことも分かっている。ヘイズ被告は、円建てLIBOR3カ月物を低めに申告してほしいという要請を繰り返し、ダリン被告は「公正な」0.69%という数字よりも2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低めの数字を最終的に申告したという。

CFTC法規執行局のデービッド・マイスター局長は「大手銀行がずうずうしくも世界で最も重要な金融指標の一部を操作するのであれば、CFTCは全力で対処する」と強調した。世界的なLIBOR不正操作スキャンダルの根絶に動くCFTCは称賛されるだろう。

しかし米国の賢明な監督当局は、UBSにもっと断固としたメッセージを送るべきだ。UBSにはこう言うのがふさわしい。この銀行の米国での営業は終わりだ。われわれはコネティカット州スタムフォードとマンハッタンのオフィスに鍵を掛ける。荷物をまとめて今すぐ出ていけ。(ウィリアム・コーハン氏)

(「Money and Power : How Goldman Sachs Came to Rule the World:仮題=カネと権力:ゴールドマンはいかにして世界の支配者になったか」の著者であるウィリアム・コーハン氏は、ブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:UBS Libor Manipulation Merits a Death Penalty: William D.Cohan(抜粋)

記事に関するコラムニストへの問い合わせ先:William D. Cohan at wdcohan@yahoo.com.

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Toby Harshaw tharshaw@bloomberg.net

更新日時: 2012/12/26 15:17 JST

 
 
 
最新のマーケット情報を携帯でご覧いただけます。ぜひご利用ください。