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激突 東北の接戦区(4)山形2区/TPP対決、農村過熱
 | TPP交渉参加問題が関心を集める山形2区で、候補者の街頭演説を聴く有権者=11日、米沢市 |
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◎容認派民主、苦戦続く
<首相側近自任> 「少しじゃない。だいぶ苦しい」。公示日の直後、民主党前議員近藤洋介の陣営幹部が焦りだした。「この流れだと、水曜日(12日)ぐらいに追いつかれる」 予感が的中したのか、12日から13日にかけて、劣勢だった自民党新人鈴木憲和が近藤とほぼ並んだ、との観測が選挙区内に流れた。 近藤は前回、東北最多の16万6000票余りを獲得し、初めて選挙区で勝利した。党への追い風が逆風に変わった今回、反動の大きさは想定の範囲を超えた。 「企業からの支援が厳しい。今までのように動いてくれない。『あいさつに来るな』とまで言われる」。陣営幹部は頭を抱えた。 近藤は首相野田佳彦の側近を自任し、「私は野田政権の(政策)ライター。そのまま党のマニフェスト(政権公約)になる」と語っている。環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加問題でも、参加に意欲的な野田と歩調を合わせる。 それが、典型的な農村部の山形2区では裏目に出た、と言われている。
<1600人が「帰れ」> 11月29日に県農政連などが山形市で開いたTPP反対集会。近藤は唯一「TPP反対」の鉢巻きを巻かず参加推進の持論を展開し、客席の農業者ら約1600人から帰れコールを浴びた。 選挙戦に入ると、「争点にならない」(近藤)とTPPにはあまり触れないが、「推進派」のレッテルは剥がれない。 「本当はTPPと並行する地域農業振興策を主張したいが(有権者が)まともに聞いてくれない」と陣営幹部。いら立ちが陣営内に漂う。 対する鈴木陣営は「TPP反対集会で突破口が見えた」と、争点をTPP一点に絞った選挙戦を展開する。「例外なき関税撤廃が交渉の原則。TPPは絶対反対だ」と、鈴木は個人演説会などで言い続け、近藤との違いを際立たせる。 その鈴木も以前はTPP交渉参加の容認論者だった。陣営幹部は「TPP反対で一点突破できるという党本部や県連の意向に、鈴木も押された形だ」と認める。 東大卒の元農水官僚。父親は選挙区内の南陽市出身だが、本人は東京出身。「都会育ちの落下傘候補」といった批判をかわすため、TPP問題では農村地帯の声に最大限配慮したい。そんな思惑が透けて見える。
<長靴で土下座> 「TPP交渉参加推進派の野田側近」対「参加反対派の自民党新人」との構図から、山形2区は全国的な注目区に浮上しつつある。幹部クラスを投入するなど両党のてこ入れが激しさを増し、候補者同士の舌戦もエスカレートしている。 11日に長井市であった個人演説会で、演説を終えた鈴木は突如、スーツに長靴姿のまま壇上で土下座した。後半戦に入り何度も見られる光景だ。 「感謝と覚悟を示す」(陣営)のが狙いだが、30歳の若者に不似合いな古い手法に、聴衆から戸惑いの声も漏れた。 一方、近藤は2010年3月に亡くなった元自民党衆院議員で元労相の父鉄雄の思い出話を繰り返す。「おやじを支えてくれた皆さまに恩返しさせてください」 鉄雄が死んで初の選挙。党内きってのクールな政策通が「情」に訴え始めた。(敬称略) (米沢支局・金野正之)
◇山形2区立候補者 川野 裕章 53 ☆元米沢市議 維新 鈴木 憲和 30 ☆元農水省職員 自新 近藤 洋介 47 ☆経産副大臣 民前(3) 岩本 康嗣 47 党県委員 共新 〔注〕☆は比例代表との重複立候補者
2012年12月14日金曜日
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