クリケットはイギリスの国技といわれる球技です。 17 世紀以降、イギリスが全世界に領土拡大したのに伴い、その国技であるクリケットもオーストラリア、インド、南アフリカなど全イギリス植民地に広まりました。
17 世紀当時、同じくイギリスの植民地であったアメリカでも当初は移民者を中心にクリケットが行われていました。ところが、大きな芝生のグラウンドを必要としたクリケットはそれほど広まらず、逆にクリケットに似た新しいスポーツを考案し、ベースボールとして全米に広がっていきました。
そのため、クリケットは野球の原型といわれていますが、だからこそクリケットと野球は非常に似ています。例えば、“投手が投げたボールを打者が打ち返し、守備の選手が処理している間に、打者が走って得点を稼ぐ。規定回数まで攻撃して、チーム総得点が多いほうが勝ち。”という基本ルールはクリケットも野球も共通なので、野球・ソフトボールの盛んな日本ではクリケットは理解されやすいスポーツなのかもしれません。
クリケットは日本でこそまだ知名度は低いですが、世界100カ国以上で愛されているインターナショナルスポーツです。球技としての競技人口はサッカーについて世界第2位といわれ、クリケットの世界大会である ICC ワールドカップは数億人の視聴者を集める世界一大スポーツイベントです。
そうしたインターナショナルスポーツとしての側面から、日本における競技人口は外国人と日本人がほぼ半々となっています。日本人のクラブはイギリス大使館、横浜のスポーツクラブなどと定期リーグを行い、日本の子どもたちは英国人学校と日英ジュニア定期戦を行うなど、他のスポーツとは比較できないほど、国際交流機会にあふれたスポーツといえます。
クリケットの時間は非常にゆっくり流れます。 テストマッチといわれる国対抗の試合では、4〜5日を費やして試合を行います。 また、近年、短い時間で行うワンデイマッチという試合が人気を集めていますが、その試合でも約7時間ほどかかります。サッカーや野球とは比較にならないほど長い時間を費やすため、クリケット場で試合を見ている人中には、ビール片手ウトウトしている人も多く、ゆっくりした時間をのんびり楽しむ人も多いようです。最近では、約 2 時間半で終わる8人制クリケット、約 50 分で終わる6人制クリケットなども出てきましたので、短い時間のスポーツを好む人の間にも浸透するようになりましたが、もともとはゆっくりとした時間の流れを楽しむスポーツです。
クリケット場は全面芝が基本です。ガーデニングの国・イギリスの国技だけあって、クリケット場の芝生はとても大切に扱われ、安全で心地よい環境の中、プレイは進みます。
芝生の環境はピクニックにも最適で、イギリスやオーストラリアではピクニックの一環としてクリケットの試合を見に行ったり、お父さんが試合に出ている横で子どもたちが遊んだり、そんな環境があふれています。
クリケットは紳士・淑女のスポーツといわれるだけに、フェアプレイはとても重要視されています。英国に ”It's not cricket” (それはフェアではない)ということわざがあるほど、クリケットはフェアプレイの代名詞とされており、心身ともによい影響があることから、英国の名門校では体育の実技の中で必ずクリケットが取り入れられるそうです。また、クリケットの名選手は Sir (貴族)の称号を得られるなど、クリケットに熟達した人は真の紳士としてみなされます。
クリケットの他のスポーツにない特徴として、試合中のティータイムがあります。2デイマッチやワンデイマッチなど、試合時間の長いゲーム形式の試合のときには、2時間に1回、紅茶を飲みながら談笑するという優雅なひとときが訪れます。勝敗よりも何よりも社交を大切にするクリケットらしい一面です。
クリケットは社交をとても大切にするスポーツです。外国のクリケットクラブでは敷地内にバーが設置してあるところが多く、試合が終わった後、プレイヤー、アンパイア、観戦者、その家族たちの多くがそのバーに集合して、ドリンクを酌み交わしながら、その日のお互いの健闘を称え合います。また、街中にもクリケッターズ・バーなどがあり、まさに地域交流の象徴のようなスポーツとなっています。