特集ワイド:識者が見る、安倍新政権

毎日新聞 2012年12月27日 東京夕刊

 官房長官に起用された菅義偉(すがよしひで)氏は、衆院選直後の日本郵政の社長人事を「政権移行期に財務省出身者でたらい回しにするのは看過できない」と批判した。一方で首相政務秘書官には今井尚哉(たかや)・前資源エネルギー庁次長を充てるとしており、「威圧と懐柔」で官僚を使いこなそうとする方針が透けて見える点は、単純に官僚を排除しただけの初期の民主党政権との違いだ。

 麻生氏を副総理兼財務相兼金融担当相にしたのは、盟友であり経済・金融政策についての考えが近いからだろう。だが橋本行革以来の財金分離をほごにするのは、安倍氏の前のめりの金融政策、財政政策とともに日本経済にとってのリスクといえる。

 公明党の閣僚ポストを、同党からの要望通りに国土交通相にしたことも注目される。今後10年間に100兆円を投じるという公明党の「防災・減災ニューディール」に協力する意味があるが、実は総額200兆円というもっと大規模な自民党の国土強靱(きょうじん)化計画への批判の盾にする狙いがあるかもしれない。かつての自民党の公共事業のばらまきに先祖返りすれば、安倍内閣のアキレスけんになる恐れがある。

薬師寺克行さん
薬師寺克行さん

 ◇総括なきセピア色内閣−−政治学者・薬師寺克行さん

 今回の顔ぶれには政策通が目立つほか、前回の首相辞任後に安倍氏が親しかった人、お世話になった人が少なくない。例えば官邸人事。主要政策の多くを実質的に決定する内閣の中枢だけに注目していたが、官房長官に菅氏、官房副長官に加藤勝信と世耕弘成の両氏を配した。首相補佐官や秘書官らの人事を含めて安倍氏の人間関係重視の性格が浮き彫りになっている。

 最大の特徴は自民党への信頼が地に落ちた時期に首相だった安倍、福田康夫、麻生の3氏のうち2人が総理、副総理という内閣の中心にいることだ。総選挙で大勝したとはいえ、自民党は野党時代の3年間、なぜ国民の支持を失ったかの総括も党改革もしていない。この人事は「自民党は変わっていないのではないか」という疑念を国民に抱かせる。

 景気対策を軸に政策の着実な実行という意味では、麻生氏や、経済再生担当相に起用した甘利明氏らは頼りになる存在であり、安倍内閣のキーパーソンなのは間違いない。だが、かつての自民党政権時代のように「政官業のトライアングル」が復活するようなら国民は再びそっぽをむくだろう。甘利氏ら原発推進派が入閣しているが、再稼働問題は参院選後に先送りするのではないか。

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