特に、ちょっと古めのWindows XPのパソコンでよく見られます。
画面右下のタスクトレイから、「仮想メモリ最小値が低すぎます」との表示が出てきます。
この状況下では、ほぼ間違いなく、パソコンの動作自体も非常に重たくなっているはずです。

ほとんどの人は、「仮想メモリ最小値」なんて変更したことがないはずですし、
それなのに設定値が低すぎると言われるのは、ちょっと違うんじゃないかという気もします。
それもそのはず、本当の原因は他の部分にあります

とはいえ、表示されているとおり、仮想メモリの容量が不足しているのは、間違いない事実なのですが。

表示内容の意味

表示内容を、一部抜粋します。

仮想メモリ最小値が低すぎます
システムの仮想メモリがなくなって来ています。
仮想メモリページファイルのサイズを増やしています。
この処理の間、いくつかのアプリケーションのメモリ要求が拒否されることがあります。

この記述だけで、起こっていることの意味を把握するのは困難だと思います。
普段パソコンを使っているだけでは、あまり耳にしない単語が並んでいるからです。

ここで重要な単語が、仮想メモリです。
仮想メモリは、物理メモリの対義語ではありません
物理メモリも、仮想メモリとして使われています。

仮想メモリとは

ひとことで言えば、仮想メモリとは、ソフトウェアが扱っているメモリのことです。

ソフトウェアは、独立したメモリ空間を使って動いています。
でも、実際のメモリ領域は、様々なソフトウェアによって、様々なデータの読み書きが行われる必要があります。

限りあるメモリ領域を、多数のソフトウェアが効率的に使えるようにするため、
あたかもそれぞれに独立したメモリ空間があるように、仮想的にふるまうための仕組みが、
仮想メモリ
なのです。

ソフトウェア側にとってメモリが扱いやすいものになるよう、ソフトウェアをだましているわけです。

仮想メモリの実体

仮想メモリが理解されにくかったり、誤解を生みやすかったりするのは、
そもそも仮想メモリというもの自体が、具体的にイメージしにくいからだと思います。
仮想メモリの役割としては、前項目に書いたとおりなんですが、
その機能を果たすために使われている部分が、具体的にどこかということです。

仮想メモリ領域は、物理メモリと、
ページファイル(pagefile.sys)というハードディスク内のキャッシュファイルによって構成されています

さらに、物理メモリは、目に見えてイメージしやすいメモリモジュールと、
CPU内に存在するキャッシュメモリに分けられます。

「仮想メモリ」=「ページファイル」という記述が見られることもありますが、これは間違いです。
ページファイルというキャッシュファイルは、
仮想メモリの一部ではあっても、仮想メモリのすべてではありません。
「仮想メモリ」=「物理メモリ」+「ページファイル」なのです。

特に注意が必要なのは、物理メモリは仮想メモリの主要部だということです。
この認識があるかどうかで、「仮想メモリ最小値が低すぎます」との表示に対する考え方も、変わってくるはずです。

根本的な原因

上記内容をふまえて考えたらわかることですが、
「仮想メモリ最小値が低すぎます」というのは、そもそも物理メモリの容量が不足しているのです。

物理メモリに空きがないため、
物理メモリを使用するためには、ページファイルにデータを一旦移す必要があり(スワッピング)
しかも、そのページファイル自体の容量も足りなくなってきているため、容量を拡張するということ。
それが、一連の表示されている内容の意味です。

指摘されている内容が、仮想メモリの最小値が低いということなので、
ページファイルの最小値を上げればいいような気もします。
ページファイルの最小値を上げれば、仮想メモリの最小値も上昇するからです。
でも、それは根本的な解決にはなりません。

物理メモリに比べて、ハードディスクの読み書き速度は極端に遅いです。
文字通りケタ違い(ケタ2つほど違う)で、比べものになりません。
ページファイルというハードディスク上のキャッシュファイルで、物理メモリの代わりをすることはできないのです。

だから、仮想メモリの容量が不足して、ページファイルのサイズを増やそうとするような状況では、
いくらページファイルのサイズを増やしたところで、パソコンの動作は非常に重たいままです。
物理メモリに空きがなく、スワッピングが頻発する状況は、何も変わってないからです。
仮想メモリの主要部である物理メモリがそのままで、
ケタ違いに動作の遅いハードディスクのキャッシュファイルだけを操作しても、ほとんど意味がありません。

対処法

「仮想メモリ最小値が低すぎます」との表示に対する最善の方法は、物理メモリを増設することです。
表示されているとおりにページファイルのサイズを増やしても、前述の理由で動作は改善しません。

特に、Windows XPがプリインストールされているパソコンでは、最初からメモリ容量が不足気味のものが多いです。
さらに、Microsoftから提供されるサービスパックをインストールすると、
機能が追加された分だけ、よりいっそうメモリ不足が深刻な状態となります。
従って、Windows XPがインストールされたパソコンでは、
最低でも512MB以上のメモリを積んでおいたほうがいい
です。

メモリも年々安くなっていますから、必要であれば、すぐに増設してしまったほうがいいと思います。