ネットバンク不正:中国公安当局に捜査共助を依頼…警察庁
毎日新聞 2013年01月01日 02時30分
インターネットバンキングを不正使用した中国人グループによる預金窃盗事件で、警察庁が国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、中国公安当局に捜査共助を依頼していたことが捜査関係者への取材で分かった。事件を主導したとみられる中国福建省に拠点を置く犯罪組織の実態解明や、他に関与した疑いがある中国人の男数人の所在確認を要請したとみられる。事件を捜査している福岡、埼玉両県警は中国公安当局からの返答を待ち、全容解明を進める。
事件では、日本国内で引き出しグループのリーダー役を務めた福岡市博多区の無職、尚洋被告(33)=福岡地裁で公判中=ら少なくとも5人以上の中国人が窃盗容疑などで逮捕された。
起訴内容によると、尚被告らは11年8〜9月、大阪府と埼玉、岡山県内の3金融機関のネットバンク口座に不正アクセスし、別口座に移した預金約800万円を引き出したなどとされている。
福岡県警によると、犯罪組織は中国のパソコンから日本のネットバンク利用者のパソコンにウイルスを送り込み、身分証明(ID)とパスワードを把握。これを使って口座に侵入し、預金を別口座に不正送金した。その直後、組織から連絡を受けた尚被告が「現場指導役」や「出し子役」に指示して現金自動受払機(ATM)から現金を引き出した。現金の8割は犯罪組織に送金し、残り2割を尚被告ら引き出しグループが分け合っていた。
捜査関係者によると、中国の犯罪組織の活動実態は不明で、捜査員を派遣するにも手がかりがないという。このため組織の実態解明のほか、ウイルス送信したパソコンやパソコンを操作した人物の特定などを依頼したとみられる。
福岡県警などは、日本で事件に関わった疑いがある中国人の男数人の名前などを把握しており、このうち1人は「出し子役」を指導する「現場指導役」で、残りは「出し子役」とみている。いずれも事件後に中国に帰国したとみられるが、所在が分からず、警察庁は中国側に足取りの確認も要請したとみられる。【山本太一】
★捜査共助 他国の捜査機関に容疑者の所在特定などを照会する手続き。ICPOを介するルートや捜査共助条約締結国との間では条約ルートなどがある。相手国によって差異はあるが、ICPOルートは条約ルートより早く照会の回答を得られると言われている。