6回、ホセ・ロドリゲス(後方)をノックアウトしTKO勝ちした井岡一翔=ボディメーカーコロシアムで
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◇WBA世界ライトフライ級王座決定戦
その瞬間、ロドリゲスは苦悶(くもん)の表情を浮かべ、マットに座り込んでしまった。わずか1回2分だった。井岡の右アッパーから左ボディーブローの流れるようなコンビネーション。何とかロドリゲスは立ち上がったが、会場を埋め尽くした観衆は一気にヒートアップした。
「これぞボクシングという試合をお見せします」。前日の計量でそう言った通りのボクシングだった。正確無比な左ジャブがロドリゲスの顔面を次々と射抜く。ロドリゲス陣営も井岡の左ジャブは十分研究したはず。それでもあまりの速さに防ぎきれない。このリードパンチから、ボディー、フック、ストレートを次々にヒットさせる。
ロドリゲスも左右のフックを振り回し、抵抗するが、力の差は明らかだった。回を重ねるにつれて、ロドリゲスの表情がどんどん険しくなっていく。迎えた6回。こん身の右ストレートが襲った。スローモーションのように崩れ落ちるロドリゲス。何とか立ち上がったが、井岡のラッシュにもう一度ダウン。軽量級とは思えないど派手なTKO勝ちで、日本人最短記録となる、わずか11戦目での2階級制覇を成し遂げた。
「まだ実感はわきませんが、きょうは大みそか。ファンのみなさんにKOを見せたかった。それができて、本当にうれしい」。冷静な男が珍しく感情を高ぶらせた。
圧倒的な強さを見せつけて、井岡の1年が終わった。4階級制覇という究極の目標に向かって、2013年も井岡は走り続ける。 (青山卓司)
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