弟の、秘密。
タンスの中にある制服の位置がおかしいと最近になって気がついた。
いつも学校の制服は同じ位置にかけているが、休日になるとかならずタンスのなかの制服の位置がかわっているのだ。最初はべつに気にしなかったが、いつも休日になるとタンスのなかの制服がかわるのが気味わるかった。
それと同時に、弟の態度もよそよそしくて、わざと目を合わせないようにしているようだった。弟が勝手に部屋に入ってきて、お金を探して盗んでいるのではないかと疑った。
「姉さんどうしたの」
「ねえ、正直に言って。私の部屋に勝手にはいったりしてないよね」
「なに言ってんだよ。なんで僕が姉さんの部屋にはいって、タンスのなかをいじるんだよ」
弟はすこし怒って言ったが、タンスのなかのことは言ってない。弟はなにか隠していると確信した。
弟の秘密がばれるのは以外にあっけなかった。
土曜日。友だちと遊ぶ約束があったので、朝はやく家をでた。朝の天気は晴れていて心地よかったが、昼を過ぎたころになって雲行きがあやしくなってきたので、いまにも雨が降り出しそうだったので、友だちと予定よりはやく別れて家に帰った。
雨が降る前に家にたどりつきドアを開けると、何かをもった弟が部屋に入って走る姿を見た。
自分の部屋に入ると、真っ先にタンスの中を開けたら、学校の制服がなくなっていた。弟の部屋をいきよいよく開けると、そこには髪のながい少女がウットリとした表情で鏡の前にたっているのを見た。よくみるとその少女は弟だった。弟は制服を勝手に着ていた。
「あんた、なんで制服を着てるのよ」
「ね、姉さん。えっと、これは……」
「勝手に服着て、お母さんに言いつけるから」
「姉さんゴメン。なんでも言うこと聞くから。お願いだから、お母さんには言わないで」
「それに、勝手に私の化粧品も使っているでしょう」
「姉さんそれはないよ。全部百円ショップで変えそろえたんだよ。このウィッグも、小遣いをすこしずつ貯めてコスプレショップで買ったものだよ」
弟は箱に入っている化粧品を見せた。たしかに百円ショップで買った安物の化粧品だった。今までせっかく貯めていたお金で買った化粧品やウィッグを捨てられるのではないかとおもって、必死になって言った。
「ほかにまだかくしているでしょ」
弟は観念したのか、黙ってタンスの中から服をだしてきた。出てきたのは、小学生のころに着ていた服や体操着だった。
「まさかあんた、下着までも勝手に……」
「ううん、下着はとってないから。姉さん信じて」
「それじゃあ、スカートめくってよ」
「わかったよ姉さん……」
弟は恥ずかしそうに、制服のスカートをめくって見せた。スカートの中は、弟がいつもはいているブリーフだった。
「あんたが着ているその制服脱いでよ。そこにある服に着替えて」
弟が制服を脱いでいるあいだに弟の部屋から出ていくと、自分の部屋からブラジャーとショーツを何枚か手にとり、弟の部屋にもどってきた。
「これを着なさい。もう古いからあげる」
「姉さん……」
弟は戸惑っていた。なぜなら女性の下着は着たことがなかったからだ。ブリーフを脱ぐので、弟は部屋から出ていってくれと姉に言った。
「なに言ってるのよ。あんた、ショーツとブラジャー着たことないでしょ。手伝ってあげるから、はやくそのブリーフ脱ぎなさい」
「わかったよ姉さん」
弟ははいていたブリーフを脱いだ。弟は恥ずかしいのか、自分の男性自身を両手でかくした。だけど姉は弟の手を無理矢理どけた。
「手をはずさないと、ショーツはけないでしょ」
「いいよ姉さん、それぐらいできるから」
「あんた、私に何でも言うこときくといったわね。ショーツのはきかた知らないためをおもって手伝っているのよ。わかった」
弟はさからえなかったので、ブリーフを脱いだ。弟の下の毛は中学生になっても生えてなかった。よく見たら、それは剃っていたのだった。
「あんた、なんでそんなところ剃ってるの。ヘ・ン・タ・イ」
姉に変態あつかいされた弟は半泣きになりながらショーツをはいた。つぎにブラジャーを着けるが、はじめてなので悪戦苦闘してなかなかブラジャーを着けられない弟だった。
「ちゃんと両手あげて」
弟にブラジャーを着けた姉だった。普通の男子中学生が女の子の下着を着けると滑稽に見える。でも弟はまだ思春期前の女の子みたいな体つきなのか、下着が似合っていた。
「この服も着なさい」
「これって……」
弟は戸惑った。渡された服は、姉が小学生のときに着ていた服だからだ。
「はだかだと風邪ひくでしょ。はやく着替えなさい」
「う、うん……」
弟は姉の服を着た。服はピッタリのサイズだった。
「あら、男の子にしてはかわいいじゃない。そんな安物の化粧品でなく、私のを貸してあげる」
姉は言うと、弟に手鏡をわたして顔に化粧をした。弟の顔つきは、男っぽさがなくなってかわいらしい女の子の顔になった。
「姉さん……眉までいじらなくても……」
「かわいらしいでしょ。だってその眉毛男っぽい眉だから、化粧したらあわないでしょう。おもいきって剃ったの」
「こんな眉じゃあ、学校にいけないよ……」
「あんたなに反抗してるのよ。勝手に服を持ち出したくせに。なんでも言うこと聞くと言わなかった。あれはウソなの」
「ちがうよ、ただ……、なんだか自分の顔じゃないみたいで……」
「そうよね。あんたはもう男の子でなく女の子。それも小学生の女の子よ。ほんと、私が小学生のときに着ていた服を中学生のあんたに似合うなんて、こっちも驚きよ」
弟は中学生の男の子。でもいまの弟の格好は小学生の女の子といっても通るだろう。ウィッグもロングからツインテールにされた。
「これも持ってきたから」
差し出されたのは赤いランドセルだった。姉に弱みをにぎられ、ますます小学生にさせられる弟だった。姉の小学生のときのランドセルを背負った弟。
「ちょっとあんたたち、いったい何してるの」
そこに、母親が部屋に入ってきてふたりを見て言った。母親はランドセルを背負った女の子を見た。最初は弟の彼女だとおもった母親は、弟だとわかると驚いた顔をした。姉は母親に、弟がいままでしたことを話した。弟の顔は見る見るうちに真っ青になった。姉は母親には言わないと言ったのに、約束を裏切られたのだ。
「姉さん、約束がちがうじゃない」
「もうばれたのだからあきらめなさい。それよりお母さん、この娘かわいらしいでしょ。今日から妹にしてもいいかなぁ」
「姉さん、なにバカなことを……」
「そうねぇ……。母さんも本当は弟より、妹が欲しかったのよ。そうだわ。明日は日曜日だから、三人いっしょにお洋服を買いに行きましょう」
「やったぁ。私も妹に合う服を見立ててあげるわ。もちろん、小学生らしいかわいらしい服をね」
「母さんに姉さん、そんなのあんまりだよ……」
弟は、母親と姉の行動に抵抗した。だが姉は弟の抗議を無視して言った。
「あんた、本当のことを言いなさいよ。本当は女の子の服を着たて女の子になりたかったんでしょう。だから、今日から弟でなく妹だから」
「お姉さんの言うことを聞いて、お母さんも女の子らしくしつけるから」
「わかったよ。姉さんに母さん……」
「そんな言いかたはダメ。私の言うことをまねて言うの。わかりましたわ、お姉様にお姉様。私をかわいらしい妹にしてください。言ってみて」
「わ、わかりましたわ、お姉様にお母様……。わ、わたしを……かわいらしい妹にしてください……」
こうして弟の秘密はなくなった。弟は髪をのばしていて、ポニーテールにしている。新しい学年になったら、学生服でなく、セーラー服を着さして学校に通わせようと母親と姉はおもったのであった。
お久しぶりです。色々な事情がかさなって書けませんでした。少しづつですが書いていきます。
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