記事 金融政策

金融緩和は本当に正しいのか

中原圭介

2012年11月21日 11:31

解散総選挙が決まり、自民党、民主党、みんなの党、日本維新の会など主要な政党は、デフレ脱却のために、日銀に対して大規模な金融緩和を求めています。日銀も物価上昇率が1%になるまで、金融緩和を進めていく方針を示しています。しかしながら、日本経済が長いデフレの状態にあるからといって、現状で物価上昇を目指す金融政策が本当に正しいと言えるのでしょうか。

何よりも重要なのは、デフレの本質的な原因を見誤ってはならないということです。本質を見誤ってしまうと、間違った対処方法を行い、デフレは解消されたとしても、国民生活をいっそう苦しくしてしまいかねないからです。デフレの本質は、国民の所得が下がり続けていることです。デフレを克服するためには、間違った対応策を取らないように、この本質を多くの国民が認識する必要があるのです。

経済が上昇に向かう正しい道筋は、「所得の増加→消費の拡大→物価の上昇」というプロセスで生じなければなりません。物価が上昇すれば、所得も増加するだろうという見方は、非常に短絡的だと言わざるをえません。たとえ大規模な金融緩和により物価を上昇させることができたとしても、今の日本では所得の増加はとても見込めないのではないでしょうか。所得の増加が伴わない物価の上昇は、大多数の国民生活を苦しくさせてしまうだけなのです。

現に、米国では大規模な金融緩和を行った結果、さらなる金利低下が銀行の貸し渋りを強め、苦境に陥る中小企業を増加させましたし、ガソリン価格の高騰に代表される物価高は生活コストを上昇させ、国民の生活をいっそう苦しくしました。日本にいるとあまり実感できないかもしれませんが、国土の広い米国では、いちばん近くにあるスーパーまで50キロ、100キロ離れていることも珍しくありません。それゆえ、ガソリン価格の高騰は国民の生活を直撃してしまうのです。

当然、雇用の中核を担っている中小企業が苦しんでいるので、国民の所得も思うように増えるわけがありません。2011年の米国民の平均所得は前年比で1%ほどの微増で、物価上昇率の3.14%を大きく下回るものとなっています。「物価の上昇→所得の増加→消費の拡大」という順序立てが成り立たないのは、ここまで読んでいただければ分かると思います。日本でインフレが起こるとすれば、それは、国民の所得が伸びない中での悪いインフレしかないだろうと思うのです。金融緩和に過度に依存しようとしている日本政府には、この当たり前の考えが抜け落ちてしまっています。

ユニクロの服やソフトバンクの携帯、HISの旅行、大手スーパー・コンビニエンスストアのプライベートブランドなど、これらの商品やサービスが繁盛している限り、デフレから脱却し、健全なインフレが起きるわけがありません。それでも、消費者が好んでより安い商品やサービスを求めているのですから、今のうちはそれで良いのではないでしょうか。国民の所得が上がらない中でインフレになるくらいなら、まだデフレのほうがマシだと言えるでしょう。

デフレから抜け出せずに健全なインフレが起きないのは、日銀の努力不足を示しているのではありません。国民の所得が右肩上がりに増え続けて、国民が将来に明るい展望を描けるようになるには、金融緩和に過度に頼るのではなく、所得の底上げを含めた成長戦略が必要なのは明らかなのです。つまり、日銀ではなく、政府の責任であると言えるのです。

確かに、金融緩和によって円安が進み、株価が一時的に上昇するかもしれませんが、欧米経済の本格的な回復なしには、実体経済にお金は回りません。追加の緩和は欧米経済の回復まで円高の進行を抑える時間稼ぎの役割しか果たすことができません。企業の資金需要がない伸びない中で、いくら金融緩和をしても銀行は国債を買うぐらいしかお金の振り向け先がありません。過度に金融緩和を進めたとしても、銀行はこれ以上日銀からの資金供給を望んでいないのです。

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