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はじめに 最初の出会い 第二次邂逅 第三次邂逅 契機 かりそめの収束 再攻 逆切れ、そして反撃 狂気 意思表明 おしまいに おまけ |
かりそめの収束
警告に対する反応は劇的なものでした。
もういいです、あなたのほうこそ、嘘をつかないでくださいブログではクエストの依頼などできることは受けるとか書いておきながら受けてくれない。ほかの方は私以上に
このメールが届いた直後、この人の軍団加入キャラクター3人が自身から軍団を脱退していきました。手伝ってもらってるというのに私は自分で何でもやれ イベントも手伝ってくれたことはない、 こちらから抜けさせてもらいまっす、 正直なところ、ここまでの結果を引き出すとは思っていなかったので、私はしばらくぽかんとしていました。 そしてメールの内容に不快感を覚えました。 私はこの人が軍団に加入してから、よく手伝いを行ったと思います。 依頼された器具類を作って渡したり、クエストの手伝いを行ったりしました。 このメールの書き方では、まるで私がこの人に一顧だに与えなかったようではないですか。 確かにある時点からは手伝いの依頼を断りましたけれど、それは私の方に限界が来たからです。 私は確かにできる限りのお手伝いはしますよ、とブログで書いていますが、「できる限り」です。 相手が望むがままに、ではありません。 勝手に思い込まれて解釈されて、しかも実際に行ったことには何の言及もなく、嘘つき呼ばわりのメールを送りつけてくれたわけです。 よほど言い返してやろうかとは思いましたが、これで縁が切れたのならば、それで善しとすべきでしょう。 当時の私はそう考え、そして自分の中でこの人との関係を整理して清算するために、まとめた文章をブログに掲載しました。
Sさんととうとう縁が切れた。
昨年来の悲願であったので、ようやく肩の荷が下りた感がある。 Sさんとは、あるゲームで知り合った。自分が当時属していたゲーム内コミュニティ、そのゲームでは軍団と呼ばれる組織の成員同士という関係だった。 私はそのゲームは片手間のプレイで、あまり力は入れていなかった。というのも、そのゲームは元は台湾で開発されて運営されているもので、それを日本のサービス会社が権利を買ってローカライズした後に運営サービスを始めたものであり、私はその元になっている台湾の方で既に2年近くプレイしていたのである。コミュニケーションのとりやすさは日本サービスでの方が断然上ではあるが、ゲームプレイの内容が進みすぎていて、自分としては改めて一からやり直す気になれなかったのである。また日本サービスでの課金アイテムの価格設定が私には敷居が高かった(苦笑)。 そんなわけで、レベル制のゲームであるにも関わらず、私はキャラクターを育成することもあまりしないで、たまにチャットでお喋りをするくらいの適当な付き合い方をしていた。 その軍団で、軍団長が絡む揉め事があった。一部成員による軍団長への造反騒動が起こったのである。普段は放置プレイであったが、問題が起こっているとなれば話は別である。私は台湾のプレイを続けながら他の友人と共に日本の方のトラブル処理に追われた。私の動きにどれだけの功があったかわからないが、トラブル自体は喧嘩両成敗的な決着がついて、軍団長は交代し、造反した成員は軍団を出て行った。一件落着した、と私は安堵したものである。 私にとっての事件は、その後に起こった。 軍団では成員を常に募集していたが、その事件が落着した後に応募してきたプレイヤーの扱いを巡り、私が一方的にキレたのである。 そのプレイヤーというのは、どうやら本心からこの軍団に入って他の成員たちとプレイを楽しみたいという気持ちから加入を希望しているのではなくて、組織内にもぐり込んで何か醜聞のネタや情報を探り出すために加入したいのだろう、というのが他の成員たちの判断であった。 だから、そのプレイヤーの加入希望は断る、というのである。 トラブルの種になりそうなものは、それが予想されるのならば、最初から抱え込みたくないという気持ちはもっともなものである。しかし私は、最初からそうと決め付けて排除するという姿勢が気に入らなかった。 私が気に入らないからといって、その決定を覆すわけにはいかない。それが成員全体の意向なら尚更である。 そのことと、台湾でのプレイとの両立に疲れを感じてきていたことから、私はそれを契機に軍団を抜け、ゲームプレイもほぼ停止状態に入った。私は極めて衝動的な人間で、物事を実行してしまってから後で悔やむというタイプである。つまり、軍団を抜けたのはほとんど反射行動に近いものだった。 台湾と日本と両方でつながりのある友人から、その加入希望者に対する処置を相談している軍団チャットのログを見せてもらったのは、軍団を抜けた後であったと思う。そのログには、Sさんの発言も含まれていた。 その発言内容をみて、私は生理的な不快感に近いものを覚えた。加入希望者についての情報を提供してくれているようなのだが、奇妙に具体的すぎて、気持ちが悪いのである。 勿論私も人のことは言えない。台湾でのプレイであれば、極力情報を収集し、IRCの話題として持ち込む私である。他の仲間にしてみれば「何でそんなこと知ってるの?」だろうし、「よくそんなとこまで見てるな、普通は気にしないだろ」と思っているだろう。 だから、そのことで私が嫌悪感を覚えるのは筋に合わないのではあるが…、言い訳をさせてもらうと、恐らくその加入希望者に対する悪い評判をこれでもかこれでもかとあげつらっているところが気に障ったのだろうと思う。悪い評判というのと単純な悪口というものは違うものだとはわかっているが、他人の悪口を嬉々として喋り立てている…そのように感じられてしまったのだろう。綺麗事を言うようだが、私は基本的に他人の悪口を言うのは好きではない。嫌なところをあげつらうよりは、いいところを見ていったほうが建設的じゃないだろうか。 そのログを見て、私はゲームから離れることにして正解だったかもしれないな、と考えた。私は衝動的かつ感情的な人間で、一旦不快感を覚えた相手とうまくやっていく自信はまったくない。その軍団に在籍し続け、ゲームも時々プレイするとなれば、Sさんと関わることもあるだろう。それは避けたいと思ったのである。 それから月日は適当に流れて2011年8月。日本サービスでの出来事はもう記憶に薄くなりかけ、台湾でのプレイを満喫していた私のところに、Sさんが降って沸いた。 正確には、私がこつこつ執筆を続けているブログにメッセージを寄越したのである。 内容は、このゲームの台湾サービスの方をやってみたいので、課金方法を教えて欲しい、ゲームメールをくれというものだった。 その数ヶ月前にパソコンをクリーンインストールして、その際にそのゲームの日本版クライアントはインストールしていなかったので、私はそのゲームを続けていた友人に、この人からこういう問い合わせを受けたけれど、私はゲームクライアントを入れていないから、手数をかけるが代わりに問い合わせを受けてやってくれないか、と頼んだ。接したくない人のためにわざわざゲームクライアントをダウンロードしてインストールする手間をかける必要は、私には認められなかった。友人はそれほど日々の時間に余裕があるわけではなかったが快く引き受けてくれた。かつて軍団チャットのログを見せてくれた人で、私がSさんと接したくないということをよく知っていたからだ。 友人はSさんにメールを送ってくれたが、Sさんからはまったくコンタクトがない、と知らせてきた。様子を見ているが、メールにしろ内緒にしろ(ゲーム内では特定の相手と1対1で会話する機能がある)一切ないということである。内緒は相手がログインしていないと使えないので、普通ならばメールを送ってログインする時間を尋ねるところから始めるものだが、そのような問い合わせもないという。 それほど必要でもないのかな、と私たちが考え始めた頃、再びブログにメッセージがきた。 友人が最近インしないので課金の仕方を聞くことが出来ない、というものである。 それを聞いて友人が、最初にメールしてから3日しかたっていないのに、最近インしていないというのはどういう意味か、と呆れた。連絡を取ろうともしていないのに、どうして最近インしていないなどと言えるのか、と。 おまけに、メッセージにはゲームアカウントの取り方やクライアントのダウンロード方法もわからないとも書かれていた。 課金方法を尋ねる以前の問題である。 どう考えても他人にものを尋ねる態度ではないし、そもそもゲームプレイに辿りつけるかどうかが怪しい。 外国サービスのゲームをプレイするということは、その国の文字の中でプレイするということである。最低限自力でゲームにログインできる状態でなければ、支援や助言を要求する資格はない。 私と友人は話し合って、Sさんにはこちらから連絡を取る必要はない、という結論を出した。少なくとも最初の問い合わせに対してこちらから応じたのに、それについて、まるで友人がSさんを無視しているかのような言動をとったことはいただけない話だった。しかも、クライアントのダウンロードさえわからないという。これでゲームをプレイしたいとはよく言ったものである。すべてこちらにやり方を教えてもらえるとでも思っていたのだろうか? 百歩譲って公式サイトの文字が読めなかったとしても、ホームページの検索を行えば、やり方を丁寧に紹介している日本語のサイトが見つかるのである。そんな努力さえせずに、何もわからないと言い放つ神経は私には理解できなかった。 以来こちらからは一切連絡を取らなかったが、10月に一度ブログにメッセージを寄越した。サービス会社の会員登録に関する質問であったが、私は直接回答することはしないで、ブログの記事として、基本的な手続きについては教えることはしない、とはっきり書いた。 それきりメッセージも途絶えたので、諦めることにしたのだろうかと考えていた矢先、Sさんが日本サービスでの方で、軍団をやめたという話を聞いた。 私は日本サービスの方はもうまったく関与していなかったが、友人たちの話によれば、無神経な言動でしばしば成員を不快にさせていたようである。ログを見せてもらったこともあるが、ちょっと常識的には考えられないようなひどい発言を平気で行っていた。私が見せてもらった時には、ゲームイベントの一つである攻城戦に関してのことが取りざたされていた。当時その軍団は城という施設を保有する軍団で、毎週他の軍団のプレイヤーが攻めてくるのを迎え撃つ必要があった。それはなかなか負担の大きいイベントであったが、成員たちはそれぞれの力の及ぶ限りで頑張っていた。 しかしSさんは、それについて他のみんなの努力が足りない、と不満をぶちまけていたのだ。自分はこれだけのことをしているのに、他の人は全然努力や協力の姿勢を見せない、と怒っているのである。 ゲームなのである。現実の生活を犠牲にして行うべきものではない。だから皆はそれぞれに出来る範囲でプレイをし、その結果が何かを得るものであったり失うものであったりしても、それを受け入れる。それがゲームプレイである。 Sさんは自分の行動と同等のものを周囲に要求しているのだ。それが出来なければ、自分の言に従え、と言いたいようであった。一番自分が貢献しているのだから、自分に一番権利があると考えていたのではないだろうか。 とても私は驚いた。私がやめた直後に見せてもらったログなど比ではない。こんな言動をとる人だとはさすがに思いもしなかった。「こんなことを普通に喋っているんですよ」と友人は教えてくれた。友人はプレイこそ活発ではないが、ゲームにインしてチャットログを確保し、軍団の様子などを把握する努力をしていてくれたので、よくそれを知っているのだ。 確かにSさんの貢献度は群を抜いていた。防衛に資材を集めたり、レベルの高いプレイヤーを何人も育成して防衛イベントに参加し、有料アイテムをイベントで多用していた。そのことは事実であり、誰も否定はしないだろう。 しかし他人がそれと同等のことが出来ないからといって非難する権利はSさんにはない。それを以って他人の行動を制する権利もない。 この人はゲームをプレイするということについて、何か大きな勘違いをしているようだ、と私は思った。 こんな言動があっても、確かに事実ではあったので、誰も言い返すことはできないようだった。しかしそれは、そのことを受け入れたからではないのだ。私がその場にいればぶちキレて舌戦を繰り広げていただろうが、成員たちの方が大人の立場で我慢しただけである。 その後の経緯が今ひとつ不明ではあるが、Sさんの行動や言動に耐え切れなくなったらしい軍団長が、Sさんから軍団勧誘権を取り上げた。はっきりと何が原因でそうしたのかはわからないが、他の人が立ち会える場で先にそのことを通告しなかったのはまずい処置だったと思う。勧誘権を取り上げたことについては、何かきっかけはあったはずだからである。 このことでSさんが怒った。そして全キャラクターを軍団から脱退させてしまったのである。 その後Sさんは自分で軍団を設立したりして日本サービスでのプレイを続けていたらしいのだが、私にはよくわからない。 そして、年の瀬も押し迫った12月31日、台湾でのんびりプレイしていた私の元にゲーム内メールが届いた。 言葉がわからないので、軍団に入れてくださいという内容のメールで、差出人は初めて見る名前だった。 誰か日本人がプレイを始めたのかな、と暢気に思った私は、待ち合わせてそのキャラクターを軍団に受け入れた。私はここでは軍団長を務めていて、加入受け入れなど対外的な出来事を処理していた。 そして加入してからそのキャラクターは、「私が誰だかわかりますか? Sです」と嬉しそうに言うではないか。 頭をハンマーで殴られたようなショックとはこのことを言うのだろう(笑)。あれほど避けようとしていた人物を、自分の手で軍団に受け入れてしまったのである。 迂闊にもほどがあったが、少なくとも、私や友人を煩わせるのではなく、ここに…ゲーム内にログインしているのであれば、拒絶することはできない。私は自分の不明を呪いながらも、最低限の手伝いはすることにした。 Sさんは、すぐにサブキャラクターを加入させていいかと言うので、いいですよ、と加入権限を与えたのだが、すぐに2人を加入させてきた。更に加入させたいというので、あと1人までにしてくれというと、2人はダメかという。その時は、同盟している軍団から一人預かったり、加入を希望する台湾人がいたりして、軍団成員の枠が限界に達しようとしていたので、ダメだ、と断った。軍団に入らなくてもゲームプレイは可能である。そもそもあと2人だけ、とは言うが、一体本当は何人入れたいのかもわからず、不安だった。Sさんは不満そうだったがそれ以上要求してくることはなかった。 その後、少しずつスキルクエストの手伝いを頼んでくるのに応じてはいたが、プレイ開始3週間にも達しないうちに、Lv70クエスト「霊獣白虎」を取らせてくれ、と言ってきたのである。 このクエストは進階騎乗術と高階騎乗術という2つのスキルを取得するのにクリアしなければならないものであるが、私の…あくまでも私個人の考えでは、これはゲームプレイとしては1つ階段を登ったところにあるものである。 私はゲームプレイ上での手伝いはする、と言ってきたが、それはあくまでも常識的なプレイの範囲内での話だ。金を惜しみなく投入し、複数のキャラクターを同時に育成するようなパワープレイヤーは私がサポートする対象としては考えていない。そんなプレイヤーには私の手伝いなど本来必要ない。 私が手伝うのは、1キャラか2キャラを限られた時間や資力の中でコツコツとプレイをする人である。そういうプレイヤーにはどうしても他人の手助けが必要だ。手助けがなければ先に進むことは著しく困難である。手助けを必要とする人の力になり、それが役に立てるのであれば、私にとってもこの上ない喜びとなる。 私の考えでは、「霊獣白虎」というクエストをこの段階…プレイ開始3週間で要求するということは、私のサポートの範囲外に出たということを意味した。それだけゲームを進める力のあるプレイヤーは、私から見ればパワープレイヤーである。パワープレイを楽にしてやるような人の好さは、私は持ち合わせていない。 その依頼を、私は断った。これ以上は自分の出来る範囲内でやって下さい、と私はメールで返した。その後転職クエスト(6つのクエストでキャラクターが更に強くなることが出来る)だけは恥を忍んでお願いします、と言って寄越したので、恥と思うなら頼まない方がいいですよとよほど返したかったが、了解した。 それからしばらくは特に何事も起こらなかったのだが、ある日軍団用のチャットで、おかしなことを発言していた。 あるアイテムの売買に関する所感のようなのだが、そのアイテムは現金でたった幾らにしかならないものなのに、ゲーム内通貨でそんな額を支払って購入することなど考えられない、と言うような意味の発言だった。2月25日のことである。 物の価値観は様々である。ある人にとっては対価を支払ってでも欲しいと思うものが、別の人には必要がないから邪魔になるだけ、手に入ってもすぐに捨ててしまう、ということがある。 そんな当たり前のことも無視して、一方的に自分の価値観から発言しているのだ。日本のゲームでプレイしていた時とまったく変わっていないのである。 私はこれが軍団用のチャットで発言されたことなので、見てみぬ振りをすることにした。発言内容としては、他人への誹謗中傷と取られかねないものだが、日本語(ローマ字)での発言であるし、他の軍団員たちは呆れたようではあったが無視を決め込んでいたので、取り沙汰する必要はないと考えたのだ。発言の意図はまったく掴めなかった。何故そんな発言をしようと思ったのか? 発言せざるを得ないほど我慢のならないことだったのだろうか? その発言の記憶が薄れかけた3/17のこと、またSさんは軍団チャットで発言していた。 軍団のあるキャラクターのレベルアップが速すぎる、きっと上位の狩場に連れて行ってもらっているのだろう、というのが発言の主な内容だった。 ゲームにはキャラクターのレベルを上げるために、狩場と総称される様々なマップがある。自分のレベルやキャラクターの性能に合わせて、自分のキャラクターにとって適していると考えるところでレベル上げの戦闘を行うのだが、これはキャラクターのレベルより高ければ高いほど、多くの経験値を取得できる。だが高いレベルの狩場は倒すべき敵が強く、普通ならばキャラクターレベルとかけ離れたところではレベル上げ戦闘はできないものだ。 だが、レベルの高いキャラクターとパーティを組んで条件をうまく合わせれば、レベルの低いキャラクターでも高いレベルの狩場で戦闘経験値を得ることが可能である。 Sさんは、私がその手伝いを軍団の誰かにしてあげていると考えたらしいのである。勿論私はそんなことはしていなかった。 相手を誰とは明言していない。だが私は今度は放置してはいけないと感じた。他人への妬みは持つなということは無理な話である。しかしそれを表に出さないだけの思慮は必要である。そもそもが見当はずれな妬みである…。 私は、前のアイテムの価値観についての的外れな発言と合わせて、不用意な発言は慎むように、次にあったら除名する、と通告した。 すると、Sさんは激怒して、私のほうこそ嘘つきで他人ばかり贔屓している、自分のほうから軍団を抜ける、と返信してきて、一気にキャラクターを脱退させていった。 えっ?と思うような一幕であった。 私はひどい人間で、一瞬この信じられないような幸運はなんだ?と思った。 もうSさんと関わりを持たなくて済むのだ。 どっと解放感が押し寄せた。 この件に関しては、私はフェアではないし、Sさんの非難もそのとおりである。いきなり最後通牒のような内容を突きつけてはいけなかったし、Sさんでなくても突然こんなことを言われて気を悪くしない人はいないだろう。その前に姿勢を改めるよう促すのが筋というものである。 私は聖人君子ではない。このことでSさんが反発してくることは十分に予想できた。もういやだ、こんなところ出ていってやる、と本人に言わせたいと思わなかった、などとは決して言わない。それを無意識にでも期待しなかったとは絶対に言わない。 嘘をついたというのも、文字面を見ればその通りである。ゲームプレイで必要な時には手伝いますよ、と明言しているし、実際にたびたび手伝いもしている。頼まれれば、基本的にイヤとは言わない。自分に困難だと思えば、代替手段さえ考える。それなのに、Sさんには、もうこれ以上は手伝わないから、と突き放した。約束が違う、とSさんが思っても無理はない。 約束なんてしてませんがね。 実際には、私が手伝いをするのは、日頃から仲間・友人として付き合っている人たちだけなのである。私は傭兵はしていない。傭兵というのは、対価を受け取ってクエストを代打ちする人たちのことである。これはこのゲームでは多く見られる。多少腕に自信があるプレイヤーであれば、一度なりと「収費解任(有料でクエストを引き受ける)」と叫んでいるのではないだろうかと思えるくらいだ。これはこれで便利な存在である。必要なだけの金(ゲーム内通貨)を支払って、効率良く高難易度クエストを終わらせることが出来る。仲間がいても自分と似たようなレベルか自分よりも低くて頼むことなどできない、という人はやはりいるだろうし、ソロでこつこつ遊んでいる人が壁にぶつかっているむことだってある。金銭で解決をつけることができるのは、悪いことだけではない。 ただ、私は自分の方針として、そして能力的にいって、傭兵はしないことにしている。何か頼まれて手伝っても、アイテムや金銭といった対価は受け取らない。 私にとっては、日頃楽しく会話したり、時には助け合ったりすることがその対価なのである。 ゲーム内アイテムでキリのつけられるような安い相手じゃないんです、とお高く止まっているわけだ(笑)。 従って、日頃付き合いがあるわけでもない、仲間や友人と看做していない人の手伝いをする義理は、私にはない、というのが私の言い分である。 公平ではないし、博愛的でもない。しかしこれが私なのだから仕方がない。 そう、私は誰の手伝いでもするわけではない。私は私の気に入った人の手伝いしかしない、えこひいき人間なのである。 だから、その点での非難も甘受する。私は嘘つきでえこひいきである。一旦気に障ったと思えば、残酷なまでにそっけない態度になる。それが正しい姿勢だとは私も思わない。それで周囲を傷つけていることも何となく感じている。 一言弁明させてもらうと、私が怒る時というのは、友人に対して正当な扱いがなされなかった時がほとんどである。私がではなく、友人が傷つけられたと思った時…実際には友人は傷ついていなかったとしても…、その時に私も傷つき、怒りを感じるのである。 改めて自分でも処しようのない性分だとは思う…。 そんなことはともかく、結果としてSさんは軍団を自ら抜けて、私とのつながりを断ち切っていった。 一年と少しの期間に及ぶ顛末ではあったが、この間にはいろいろ考えさせられることがあった。その意味では、とても勉強になったし、自分や自分の立ち位置というものを把握する一助になった。単に不快な迷惑な思いをしただけだとは思っていない。私にとっては、この一件は必要な出来事だったのだろうと思う。 Sさんには、別の接し方もあったとは思う。他人からはともかく、私自身はSさんについてどう考えているか、その発言をどう感じているか、きちんと伝えて理解を求める行き方もあっただろう。 しかし、それができるのは、友人と看做したい、仲間として受け入れたいと思える相手になるのだ。その人と付き合いやすくしたいと思う心は、その人を友人として受け入れたいから生まれるものである。そして、そんな風に感じられる相手はそうそういるものではない。 誰に対してもそのように接することはできないということなのだ。 少しずつその容量を広げていきたいとは思うが、本来持つ人間の大きさの問題もあり、なかなか難しいところである。 Sさんとは不幸な付き合い方になり、不幸な終わり方となったが、Sさんを理解して受け入れている人には、どうか慰めて励ましてやってください、とお願いしたい。Sさんはとても傷ついていることだろうから。 初出:FC2ブログ内うみにっき2012/3/17付「Sさんのこと」
これで私は片がついたのだと思っていました。ブログの内容はお粗末なものですが、当時の私の不安定な心情を映したものでしょう。 ともかくも、そのときの私は、これで問題は片付いた、と安心したのです。 向こうが相変わらず同じ台湾サービスでプレイを継続していることは気になりましたけれど、それをどうこうすることなどできはしません。 少なくとも自分とはもう関わることがないのだと、だからそれでいいことにしようと、落ち着くことにしました。 それは間違っていたのでした。 |